キタレキタレ1
自然豊かな夜中の道を歩くか、家の中だけれど満天の星空が見えるところで一夜を過ごすか。
恐ろしいものに出会うリスクとしてはどちらも似たような気がして悩んでいると、男の子が申し出てくれた。
「分家の部屋を借りましょう。許してくれるはずです」
「お気遣いありがとうございます……」
そうして私は白装束から服へと着替え、一晩の宿を確保することができた。
勅使河原さんと繋がっていたスマホは、また圏外表示になってしまった。うんともすんとも反応しない。もしかしたら金の龍がはしゃいだことと関係があるかもしれないので電波復旧を念じてみたけれど、なんかスマホが急に熱くなってきたので慌ててやめてと祈ることになった。
電話で小古路村にいることは伝えたけれど、勅使河原さんには聞こえていなかったようだ。もし聞こえてたら迎えにきてくれるだろうし、来なくても明るくなれば歩ける。会う村人全員が眠っている状態なのはかなり不気味だけれど、身の危険を感じない点ではありがたかった。
「すみません、おにぎりしか作れませんが食べますか?」
「あ、よかったら私が作ります」
おずおず言い出してきた男の子は、はじめという名前だった。凛としてしっかりした雰囲気だけれど、生活スキルは子供のままらしい。私は許可をもらうと台所を拝借し、簡単に肉野菜炒めと味噌汁を作った。見知らぬ場所で初めて会った子供と一緒に手料理を向かい合って食べるのはちょっと不思議な体験だった。はじめくんが当然のように私の隣にもう一膳用意したのもかなり不思議だった。龍の分らしい。
「あの、はじめくんには龍が見えてるんですか?」
「はい。徳が高くお力が強いのに、気さくな方で安心しました」
「気さくなんだ……」
本来なら全滅させられてもおかしくないのに、命も取らず悪いものだけ持っていったことではじめくんは龍に対してかなり好意的に思っているようだ。
「村人を見つけるたびに心配そうに寄って様子を見てくださっています。龍神の加護など一度もなかった村なのでありがたいです」
「そ、そうですか」
それは勅使河原さんがよくやられている、龍の「ガン見」なのでは、というのは黙っておいた。
「御荷古路村とは長年交流がありませんが、場所はわかります。明日になったら案内するので、今夜はどうぞお休みください」
「ありがとうございますはじめくん」
お風呂はさすがに遠慮して、小部屋に布団を引いてもらう。はじめくんもこの「分家の家」とやらに泊まってくれるようなので、何かあっても安心だ。
今日は長時間ドライブからの謎儀式そして屋根飛ばしと色々あったし、もう明日に備えて寝よう。
そう思って、私はあてがわれた部屋に入って寝る準備をしていたはずだけれど。
気がつくと私は、山の中を歩いていた。




