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心霊便利屋  作者: 皐月秋也
第8章 約束された平和と閉ざされた扉
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第8章 約束された平和と閉ざされた扉③

 瀬戸さん話はとんでもない内容だった。


 まさか、高橋が。それだけじゃない。あんなヤツがまだ他にもいるかも知れないなんて。


 口の中がカラカラに乾いているのが自分でもわかる。


 「当初はあなた方の身の危険を案じて秘密にしていることもありましたが、そんなことを言ってられなくなりました。

 もし、まだこの戦いに身を投じる覚悟があるなら全てをお話しします。

 …断るなら今ですよ。」


 「急がなきゃいけないんですよね?」


 「はい。」


 「クレア、今度こそタダでは済まないかも知れないんだ。頼む、ここで待ってると言ってくれ…」


 「それって、一人ぼっちになるかもしれないけど、あなたがどうなったかもわからない所で、ただ無事を祈ってろ。

 そう私に言ってるってわかってる?」


 うっ…


 俺が言葉に詰まっていると、瀬戸さんが笑いだした。


 「ふふ…頼もしいじゃないの。」


 「頼もしいって、そんな他人事な。」


 「あなたが思っているほどクレアさんは弱くはありませんよ。」


 「そんなことはわかってます!」


 「私の障壁の力が必要になったらどうするの?敵がみんな銃を持ってたら?みんな死んじゃってもいいの?

 私は嫌よ。それに私を留守番させて晃に何かあれば私は一人でも乗り込むからね!」


 「そこまで言うなら。瀬戸さん、防弾ベストは用意できますか?俺達の全員分用意できるのがこの仕事を受ける条件です。」


 「それは問題ありません。ご安心なさい。では、決定で良いですね?」


 『はい。』


 俺とクレアの声がきれいに重なった。


 俺は瀬戸さんから全てを聞いた。

 …正直聞いて後悔したくらいだ。

 それくらいとんでもない話だった。


 林さんはまだしも、徹と篤はどうするんだろうか?

 何があってもあいつらの意思を尊重してやろう。

 とても強制できるような話じゃない。


 東京にはもう到着している先発の10人と、俺とクレア、瀬戸さんも一緒に来ることになった。

 作戦本部でもある事務所にはもう2人来ることになっている。

 総理補佐官と警視庁公安部参事官だそうだ。

 秘密裏で動いているってことは嘘ではなさそうだな。

 話が大きくなり過ぎてはいるが、俺達のするべきことさえわかってれば良い。


 さぁ、そろそろ時間だ。

 俺達は新幹線に乗って東京へ向かった。


 東京に到着すると空は既に薄暗くなっていた。

 

 「戻ってきたね。」


 「あぁ、そうだな。」


 「みんなにはすぐ話すの?」


 「もちろん。公務員連中は返事があるまで外で待ってもらうことになってるから、まずは2人と話さないとね。」


 「そっかあ、みんなで戦えると良いけど強制は出来ないよね…」


 「うん。」


 徹や篤が拒否をしても安全は確保されるんだろうか。

 俺達が失敗したら?

 その先の想像が出来ないくらい、途方もない話なのは間違いない。

 

 …とにかく、あいつ等に話さなきゃな。


 事務所の中に入ると、部屋の中央に見たこともない巨大なスクリーンが鎮座しており、ヘッドマイクを付けた人間がpcの前に座っている。

 …何かものものしい雰囲気になってるな。


 「晃!ようやく帰ってきたか!」


 急騰室からヒョイッと顔を出し、俺の姿を確認したとたん猛ダッシュで出迎えてくれた。


 「徹、これどうなってんの?」


 「どうもこうも、お前らが東京を出た途端スーツ姿の連中が入ってきてさ。

 ソイツ等と林さんがパソコンとかモニターの配置を勝手に決めて、自由に使ってやがるよ。

 こいつらなんなの?」


 徹はそう言いながらマグカップのコーヒーを啜っている。


 「その説明をしたいんだが篤は仕事か?」


 「あれ、さっきまでいたんだけど…あれ、どこ行ったんかな?」


 なら、ひとまず徹と話すか。

 まずこの仕事に乗るかどうかを確認すると、意外とすんなり受け入れてはくれた。

 あくまで「クレアちゃんまで戦うのに俺だけが逃げるなんて、そんなカッコ悪いこと出来るか!」とのことらしい。


 「晃、篤には言うなよ。あいつは俺達が参加するなら自分もってなるはずだ。」

 

 「わかってる。あいつは社員じゃないし、ラーメン屋の跡取りだもんな。」


 「おう。んで、俺はどうしたら良いんだ?どうせ外に偉いやつ待たせてんだろ?」


 「晃、相良さんには隠し事できないね。」


 クレアは苦笑いをしていた。


 俺は下で待っているお偉方と瀬戸さんを呼びに行った。


 事務所に全員揃うと、公安部参事官がモニターの前に立ち、話を始めた。


 「私は公安部参事官、坂本だ。今回は、一部民間人専門家が作戦に参加する。我々は彼等民間人が作戦の遂行をする間、援護することを最優先事項とする。現場には武装した戦闘員がいることが想定される。現場捜査官、民間人全員に防弾ベストを支給する。質問は?」


 俺は手を上げた。


 「良いですか?」

 

 坂本さんは迷惑そうな顔で俺を見た。


 「なんだ?」


 「現場に行く人数は何人ですか?」


 「君達3人を含め13人だ。」


 本当に10人しか送ってくれなかったのか…

 

 「安心しろ、君たちを守るのはこの国最強の特殊部隊だ。」


 最強だと?何を言ってるんだコイツは。


 「なら、この人たちはどうやってあの化け物と戦うんですか?」

 「それは君達の役目だろう。我々は邪魔したりはしないから安心してソイツ等を排除したまえ。」


 …簡単に言いやがって。


 「諸君、信じがたい話ではあるが、我が国は未曾有の危機に晒されている。この危機を脱するにはこの民間人の若者達がカギだ。身を挺して守るように!」


 『は!!』


 「では、本作戦の概要に移る!」


 坂本さんの話によると、研究所への侵入方法は正面の扉しかないと。

 衛星で周囲を補足したところ、門の前に2つある見張り台に戦闘員が一人ずつ、広場に5人、鉄扉の前に1人だそうだ。ソイツ等は特殊部隊が静かに制圧し、施設内に突入したら俺達の出番らしい。


 作戦決行までまだ時間があるな。俺はクレアの元へ向かった。

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