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第十三話 応えたいと思うこと#C

「……ん。おーい、そこん人ー!」

「私? 何かしら」

「これ、落としたばい。あんたんやろ?」

「っ!」

「うおっ」

「……ごめんなさい、うっかりしてたみたいね」

「お、おう……大事なもんなら気ばつけて持っとき?」

「ええ……ありがとう、それじゃ」

「……あぇ、寝巻きやったけんわからんかったけど、あん人先輩か」


「……見られた見られた見られた! なんてこと……!」

―――馬鹿なことを。

『しばらく追撃は見送りね……まさかこんなところで余計に消費するなんて』

―――同志の数も決して多くない……くだらん失敗で無駄を出すな。

『わかってるわよ……! でも、これで彼―――ロノウェはあの子に憑くんでしょう?』

―――感情の闇が出てこない純粋な人間では我らの力に耐えられん。儀式が終わる前に死ぬことも有り得る。

『っ、ただ死なれたら騒ぎになるだけ、無駄どころか自滅行為……』

―――あまり愚かな真似が続くようなら、こちらにも考えがある。

『わかってる、と言ったはずよ。これ以上のミスはしない』

―――さて、どうかな……



「なるほどな」

「大変、でしたね」

「まーねー」


 彰子が律軌の部屋を出てから三十分後。舞華は浴場で円花、美南の二人と鉢合わせた。既に気兼ねなく話す仲ということもあり、先刻のことを雑談として話す。


「美南ちゃんはどう、テスト。いけそう?」

「ふぇっ、はい。その、円花、先輩が、丁寧に、教えてくれる、ので」

「堀内はとかく飲み込みが早いからな。実に鍛えがいがある」


 美南としては珍しいほどに明確な自信と、円花の余裕ある笑みを見て、これなら問題は無さそうだなと息をつく。

 すると、浴場にまた幾人かの生徒が立ち入り、その中の二人が舞華を見つけて走り寄ってくる。


「舞華ちゃーー!!」

「姫ーー!」

「うぇ」

「もーーマジ疲れたほんと無理ー!」

「アイム死んぢゃう寸前ー!」


 これまた偶然、芽衣と杏梨も入浴に来たようだ。しかしそうなると必然的に―――


「芽衣」

「杏梨さん」

「あ」

「入浴の場で走ってはいけません」

「体を洗いなさい」


 後ろから続いてきた皐月と優乃にそれぞれ肩を掴まれ、芽衣たちはシャワーまで引きずられていった。

 台風のように過ぎ去った二人を見て美南は驚いたらしく鼻の下まで湯に浸かり、円花は元気なものだと笑っていた。



 夜。安心して眠りについていた舞華は、揺さぶられるような感覚に目を覚ます。はじめは寝つきが悪かったのかと思ったが、違う。確かに悪魔の気配を感じる。

 部屋を出て、優乃達に念を送る。しかし、二人も微弱にしか悪魔の気配を感じられなかったらしく疑問の表情で寮の廊下に集うこととなった。


「なんだろう……使い魔がちょっとだけ出てきたとか、そんな感じかな」

「行ってみないことには」

「わからないわね」


 気配は講堂の方から、不審感を抱きながらも三人は走る。ロザリオは眠っているのか、念話も繋がらず姿も見当たらない。

 漠然とした不安が足の動きを早め、冷や汗が頬を伝う。自分達が気づかないうちに見知らぬ誰かがとり憑かれたのだろうか。

 講堂の扉を開け放つ。三人の視線の先には―――シンバルを持った彰子がいた。あの強かな性格とはかけ離れた虚ろな表情で、人形を吊り上げて立たせたかのような不気味さを醸し出している。


「……なん、で」

「御門先輩の時と同じ……?」


 舞華たちの姿が見えたことを合図にするように、彰子がシンバルを打ち鳴らす。講堂中に大きな音が響く……


 と共に、彰子の全身の筋肉が膨れ上がった。身長が二十センチは伸びるほどの変化、舞華の身長を超えてしまうほどの大きさになる。


「え」

「は」

「……ええーーーーーーっ!?」

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