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第十.五話 芽衣と杏梨の観察ノート

 私立天祥学園。この学校の校則は他と比べれば厳しく、些細なことがすぐ内申に響くとも言われている。噂の範囲だが、一期生か二期生の中にはシャツをスカートから出して譲らなかったことが原因で留年した生徒もいたとすら囁かれる始末だ。

 当然、そんな中で生活していれば女子高生としての不満は溜まっていく一方である。外出の際くらいは気合をいれたコーデをしたいもの、校門の申請で目を付けられる危険性がある。

 今を生きる女子高生として、萩村芽衣と杏梨・アッシュベリーが行き着いたのは―――


「さて、観察ノートをまとめましょーか」

「いえっすまーむ!」


 クラスメイトの観察。メイクも制服の着こなしもない状態でも綺麗に、可愛く見える生徒に何か秘訣はあるのだろうかと探ることにしたのだ。

 参考までに、ノートにまとめられている天祥学園の制服の情報は以下の通り。


”制服(ふつーに着て美人が目標!) ブレザー(クリーム色 左胸に校章) 胸元リボン(赤色) 白シャツ スカート(グリーン×ブラックのチェック) ハイソックス(白・黒・紺だけ!) 上履き(白) ローファー(ブラウン)”


 日々の勉強は正直に言ってキツすぎて耐えられない二人だが、お洒落を追求する心は誰にも負けないつもりだ。

 そんな事情で二人がまとめたノートを軽く見返していこう、という趣旨で二人は休日に集まった。


「んじゃ」

「まずは」

「舞華ちゃん!」

「いえーい姫ー!」


”姫音舞華ちゃん 八月十七日生まれ 身長 一六一から一六三くらい? バリバリ文系 ダンス大好き! スリーサイズ平均的(ちょっとおっきめ?) 手足けっこう長め 全体的に引き締まってる 栗色のポニーテール(真ん中くらい・うなじ辺りまで・髪質ふわふわ) 目パッチリ カワイイ系”


 以上が、二人から見た舞華の外見的特徴だ。そして、これらの情報から更に二人の美的センスをくすぐる要素を抽出していく。


”髪質と肌質ヤバイ! ケアのタマモノ? 要取材! 髪ふわふわ、おろしてもカワイイ? あと小顔!”


 舞華の「カワイイ要素」はこの通り。特に髪と肌は二人共驚いた。そして、直接聞ける間柄であるため取材と称して本人に突撃し、ヘアケア・スキンケアについて聞いてはみたのだが……


”結論:いいトコのお嬢さんには勝てない!!”


 上質な商品を使った念入りなケアという至極まっとうな答えに、二人は険しい顔で唸るほかなかった。


「んまー、気を取り直して」

「どんうぉーりぃー」

「次は歌原さん」

「いえーみすゆーのー」


 次は優乃。選出の理由は舞華の隣にいて目に付いたため。


”歌原優乃さん 九月十五日生まれ 身長百五十七とかそのくらい 勉強万能! 歌めっちゃ上手い(選曲はよくわかんない) スリーサイズはおっきめ ややベージュ寄りのショート(髪質ストレート) 佇まい上品 丸顔カワイイ 怒るとコワイらしい”

”肌ぷるぷる! 超保湿! あと動きがゆっくり(制服に合う)! 輪廓整えてる?”


 と、ここまで書いたはいいが、二人からすると優乃に直接の取材はできない。仕方がないので舞華と皐月に頼って探りを入れることにした。


”保湿方法ゲット! 動きゆっくりは自然(ザンネン!) 小顔ローラーはやってる”


 結果として、少なくとも舞華の時よりも有益な情報が得られた。メイクができない環境とはいえ、肌の質を高く保ちたいのは誰もが同じ。これは収穫と、二人でノートを覗き込みながら笑う。

―――自分で聞けばいいのに、という優乃の第一声は舞華の判断により伝えられていない。


「で、今回のラストは~」

「宮下さん!」

「……誰だっけ」

「舞華ちゃんがよく喋ってる子」


”宮下律軌さん 七夕生まれ 身長は百六十くらい 理数系らしい めっちゃスレンダー(体の起伏ほとんどナシ!) 超綺麗な黒髪ストレート! 輪廓シュッとしてる美人!”

”髪! マジ綺麗すぎてヤバい!”


 とは書いたもの、無論のことながら律軌に取材などできない。再度舞華に頼んでみたが……


”ヒケツはある(聞き出し失敗!)”


 教えてはもらえなかったそうだ。


「んー惜しい!」

「とりまこれ実践してダメだったら次行くしかなくない」

「それねー、試すに越したことないっしょ」


 飽くことなく、芽衣と杏梨の研究は続く……





「教えてくれてもいいのに」

「……駄目よ。姉に直接教えてもらったことだから」

「というか、あの二人も直接聞けばいいのに……」

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