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告白

「まず我々ヒリングサッツ教国はサリーマギ共和国と不可侵条約を結ぼうと思っています」

「そのサリーマギ共和国ってのがあいつの言ってた南なんだな」

「はい」

「そして、そのサリーマギ共和国にとりあえずそういう意思表示をすると」

「そうです」


 無事にその不可侵条約を結んでもらえるかはわからないが、少なくとも戦争の意思はないと伝えることはできる。


 傭兵の様子からもうどうにもできない風だったが、行動を起こさないことには始まらない。少しでもできることはしておくべきだろう。


「サリーマギ共和国はおそらく不可侵条約を拒むことはないでしょう。少なくとも私はそう考えています」

「なんか内輪揉めしてるらしいからな」

「ええ、他国に構っている余裕はないでしょう」


 傭兵が食えるくらいには荒れていたと言ってたことから、サリーマギ共和国ってところは相当に揉めているのだろう。だからこそ、相手は不可侵条約を拒めない。今は内側の問題に集中したいはずだ。矛先を教国に向ける手もあるだろうけど、それは内輪揉めの原因による。詳しくは知らない。


 というか、やっぱり雑談にしては重要すぎないか? はたして本当に俺たちも聞いていい話なのか。まぁ、聞くしかないけどさ。


「そして、その際に今回の暗殺のことを告げます」

「どうしてまた」


 それは不可侵条約に関係あるのか?


 あの傭兵が勝手に行った暗殺のばすなのだから相手とあまり関係ないように思うんだが。


「我々が不可侵条約を結ぼうとしているにもかかわらず、サリーマギ共和国の人間に暗殺をしかけられた。そして、その者を捕縛した。しかし、我々はそのことを水に流す。なので、そちらもそれ相応の誠意をみせてほしい。例えば、不可侵条約に反対する意見があったとしても説得するくらいの誠意を、という意思を込めて」

「そうか」


 なんか話が大きくなりすぎてよくわからなくなってきた。なんとなく言っている意味はわかるけど。


 傭兵の責任をサリーマギ共和国の人間という大きな括りで解釈して、その責任をサリーマギ共和国におっ被せるつもりのようだ。屁理屈のようだが言う者が教皇様ならそうは言えまい。


「そうすることで我々はヒュドラで受けた傷を癒やす時間が手に入り、共和国は内側の問題に集中できるという考えです」

「なるほど」


 まぁ、頭の良い奴らが上手くするんだろう。それにあの傭兵が生きているということが共和国に知れ渡れば、傭兵の計画も上手くいくとは限らない。とにかく戦争を回避するために打てる手は全て打ったらしい。


「これでサリーマギ共和国に対するお話は以上です」

「わかった」


 気になっていたことが聞けたので多少はすっきりした。最終的な結末は流石にわからないがそこまでは仕方ない。今すぐどうにかなることでもないからな。


「ここからは個人的なお話があります。聞いていただけますか?」

「ああ」


 機密情報かどうかはわからないが結構大切な話をしてくれたんだ。個人的な話を聞くくらいならお安い御用だ。


「私は一つ考えていることがあります」

「考えていること?」

「はい」


 なんだろうか。


「英雄のあり方についてです」

「英雄のあり方?」


 それはまた難しそうな。


 俺なんかが聞くよりレックスに聞いてもらった方が良さそうな気もする。しかし、教皇様が聞いてほしいと言うなら聞くしかあるまい。


「英雄とは、ヒリングサッツ教国にとって欠かすことのできない存在であり心の支えです。英雄が存在することで教国民は安心して生活できていると言っていいほどに。また英雄とは過去の過ちを繰り返さないための存在でもあります。自分たちの問題は自分たちで解決するという誓いと力の象徴です」

「そんな感じはするな」

「しかし、今回のヒュドラの一件で私は思ったのです。私たちはなにも変わっていないのではないのかと」

「変わっていない?」


 わからないな。これだけ初代英雄のことを考えているのに変わってないってことはないだろう。


「初代様一人に責任を押し付けたように、今私たちはがしていることは同じではないかと。誓いとはいえ、自国の民とはいえ、英雄という重荷をまた一人の人間に背負わせているのではないかと思ったのです」

「……それで?」

「初代様を言い訳に私たちはとても悍ましいことをしているのではと……」


 教皇様はそう言うと顔を顰めて黙ってしまった。


 言いたいことはわかる。実際レックスは潰れかけてたしな。今はどうか知らないが昨日までは相当にまいっていた。それを思うと確かにそう考えてしまうかもしれない。


「怖くなったのか?」

「怖くなった……かもしれません。今までの誓いはそんな悍ましいことのためにあったのかと」

「それで迷っていると」

「はい」

「英雄のあり方が正しいかどうか」

「はい。これではまるで呪いではないかと」


 その言葉を最後に教皇様は固く目を瞑ってしまった。また手も固く握られていた。まるで許しを乞うかのように。


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