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報酬

「とはいえ、お話の前に済ませるべきことを先に済ませてしまいましょうか」


 そう言って教皇様は姿勢をただし真っ直ぐにこちらを見つめる。


「では、レックス」

「はい」


 教皇様はレックスたちに向かってゆっくりと話し出す。


「ヒュドラ討伐ご苦労様です。貴方なら成し遂げられると信じていました。そして、その期待に貴方は見事応えてくれました。心から感謝します」

「教皇様のご期待に応えることができてなによりです。これからも信頼を裏切らないよう精進します」

「はい。よろしくお願いします」


 なんと言うか形式的なやり取りっぽいな。済ませるべきことって言っていたから、なにか必要なやり取りなのかもしれないが。


 しかし、総力戦まで考えていたのに最初から信じていましたって言うのも噓っぽいよな。教皇様もレックスもそれぞれ次善の策を用意しようとしていたくらいだ。正直お互いに信じ切っていなかったと思う。


 けど、それは両方わかっていたことか。二人とも馬鹿正直に信じて失敗しましたでは済まない立場でもある。野暮なことは言わないでおこう。


「ルーフェもケラーデもエンリも本当によくやってくれました」

「当然のことをしたまでです」

「私も騎士として当然のことだけです」

「お兄様のためです」


 各々が教皇様の言葉に頭を下げていく中エンリちゃんだけはスンっとした態度だった。反抗期かな。エンリちゃんはやっぱりぶれんな。教皇様の前なんだけどな。ここまでくると本当に凄いな。


 しかし、教皇様も慣れた様子で話を続ける。


「また、ベクトルさんもご協力本当にありがとうございます」

「依頼ですから」

「だとしてもです」


 流石のベクトルもこれ以上は謙遜しなかった。謙遜もすぎると失礼になると知っているんだろう。その割にいつも言動がぶっ飛んでる気もしないでもないが、そこはベクトルだからと思うことにする。


「これで国民は安心して日を浴びることができることでしょう」

「それは良かった」


 ヒュドラがいなくなったからサンセンタも少しずつ回復していくんだろうな。それこそ本来の美しい都市に戻ることだろう。今すぐそれを拝めないのは残念だが仕方のないこと。ここは回復に向かっていることを喜ぶべきだな。


「次にディジーさん、ポルターさん、フィオさん」

「はい」

「依頼を受けてくださってありがとうございました。短い期間ではありましたが本当に助かりました」

「こちらこそ、ご依頼いただきありがとうございました」


 依頼は満足いく形で達成できたようだ。もしかするとヒュドラの討伐が長引けば護衛の期間も伸びていたかもしれないがそうもならなかった。


「念の為に聞くが、もういいんだよな?」

「はい。ヒュドラが討伐された今なら強行派もあまり身動きがとれないでしょうからね」

「そうか」


 まぁ、ヒュドラを討伐できるレックスがいるなら、わざわざ国力を増強させる意味も感じられないだろうしな。なにかあったら我らが英雄様がなんとかしてくれると考える人間の方が多いだろう。そんな時に国力の増強をうたってもついてくる者は少ないに違いない。


 あとレックスたちが無反応ってことは俺たちが教皇様の護衛をしていたってことはもう知ってるだろう。一応隠してはいたがあまり意味はなかったらしい。それでもヒュドラを討伐できたんだから、レックスの実力は確かなものだったんだな。これならさっさと伝えておけばよかった。そうすればエンリちゃんと揉めなくてもよかったのに。


「後ほど報酬はお渡しします」

「わかりました」


 おお、やったね。お馬パカパカゲットだぜ。これで徒歩移動ともおさらばだ。快適な旅が俺たちを待っている。そう考えるとその先の旅が楽しみになってきた。早く馬とご対面して出発したいものだ。


「……前振りはこんなもんか?」

「だね」


 俺たちが言うのも変な話だが、雑談って言ってたしな。ヒュドラの話も済んだ。それに護衛の仕事の話も済んだ。なら、もうそろそろ本題に入ってもいいはずだ。


「必要なことは先に済ませておきたいたちでして」

「わかるわかる」


 後回しにすると忘れそうになることあるよな。それに形式だったことは後に回すと変な空気になることもある。先に済ませて正解だろう。どんな人間でもたまについうっかり忘れてましたなんてこともあるからな。


「本題はあの傭兵の言っていた戦争についてです」

「気にはなってた」


 他に話すことなんてないしな。ちょっとばかし雑談にしては話題が重い気もするが、無視することのできない大切な話だ。心して聞くべきだろうな。


「我々がどう対処するか聞いていただきたいのです」

「聞かせてくれ」


 そうして、教皇様は先程までの穏やかな空気を一変させた。それは国を導く者としての覚悟なのか決意なのか俺にはわからないが、とても強い意思からくるものなのだとすぐに理解することができた。


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