表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/209

開幕

「もう治っているんですね」

「ええ」


 ヒュドラは城門から少し離れた位置でこちらを静かに見ている。そして、数ある頭うちの三つが辺りを見渡して警戒している。ポルターさんやフィオさんがいないか確認しているのかもしれない。


 しかし、これは手こずるわけだ。昨日の傷が全て治っている。ポルターさんが落としたらしい首は境目がはっきりと確認できるくらい光沢を放っている。だが、それ以外は傷一つない。全て再生したんだろう。


 長引かせたくなかったが、これはそうもいかないようだ。


「では、作戦通りいきますね」

「本当に作戦通り進めるつもりなのか?」

「もちろん」


 レックスくんはそう言って僕を引き止める。どうやら作戦に不安が残っているらしい。


 わからないわけでもない。作戦と言っても簡単なものだ。そもそも作戦と言っていいのかもわからない。とはいえ、ないよりはきっとマシだ。それに今更変えられない。もう準備してしまった。


「行きます」


 僕は一人ヒュドラに向かって走り出した。


 それに合わせてレックスくんたちは僕と少し距離をあけてついて来る。


「まず一つ」


 僕は迫り来るヒュドラの首を躱し、そのまま切り落とした。剣は抵抗を感じさせない切れ味だ。素晴らしい。


「トカゲか……」


 ポルターさんがヒュドラをトカゲと言ったことも頷ける。ヒュドラはたった今自分の首が切り落とされたにもかかわらず、別の頭でまた噛み付いてきた。なので、僕はもう一度ヒュドラの首を叩き切ってやった。


「……」


 やはりディジーさんは凄い人だ。おそらく女神に違いない。


 僕が今使っているこの剣はディジーさんが手を加えてくれた。具体的にはポルターさんやフィオさんと同じ保存の魔術を付与してくれたのだ。なので、切れ味は抜群だ。昨日買ったばかりの鞘ももう使い物にならなくなっているくらいだ。しかし、この切れ味もそう長くは保たない。というか、長く保たないから許されている。ポルターさんやフィオさんのような不滅の剣などあってはいけないですしね。だから数度切りつけただけで保存の魔術の効果は切れるらしい。あまりゆっくりはしていられない。


「それは見た」


 ヒュドラは切り落とされた首を食おうと勢いよく首を伸ばしたが、そうはさせない。ヒュドラの再生の仕組みは既に確認している。そう容易く再生させてたまるものか。そこで僕はその首もろとも切り落とす。


 これで三つ。


「あと一つは落とさないとな」


 保存の魔術のおかげで戦況はこれ以上ないくらい順調だ。


 レックスくんたちの装備も良い物に違いないはずだが、こうはいかないだろうな。


「学んだか」


 ヒュドラもようやく学習したらしい。迂闊に首を差し出してくれなくなった。僕は落とした首の近くからあまり離れられないので状況は膠着してしまう。


「けどまあ」


 所詮はトカゲ。


「知能は低い」


 僕の後方から魔術が飛来しヒュドラの頭の一つに炸裂した。


 エンリさんの魔術が上手く決まった。そして、僕はその隙を逃すことなくヒュドラの首を切り落とす。


「これで四つ」


 予想以上に作戦も上手くいった。


「ただ一人で突っ込むだけなんだけどね」


 御大層に作戦なんて言っていたが、内容は僕が一人で突っ込むことでレックスくんたちの体力を温存するというものだ。単純極まりない。なんとなくフィオさんが好みそうな作戦だなとも思ってしまうくらいには。


 しかし、効果は抜群だ。


「五つ!」


 そんなことを考えているうちにレックスくんがヒュドラの首を落とした。まだ彼の体力は十分に残っているのでなんの心配もない。


「こっちだ!」


 そして、ケラーデさんもヒュドラの注意を引くように立ちまわっている。これでヒュドラの近くにいたレックスくんが動きやすくなる。


「撃ちます!」


 エンリさんも後方からまた魔術を撃つ。ヒュドラの注意が上手く散っている。


「……」


 ルーフェさんもエンリさんの更に後方で誰か負傷してもいいように集中している。


「それは許さない」


 僕も落とした首を再び食われないように立ちまわる。


 その間もレックスくんたちはヒュドラを斬りつけ確実に傷を追わせていく。もちろん、傷は少しずつ塞がっていくが気にすることはない。ヒュドラとて疲労はする。ああやってヒュドラの体力をゆっくり奪えばいい。


「かなり順調だ」


 出だしは好調。いや、完璧と言っていい。


「あとは体力勝負」


 あとはこれの繰り返しだ。レックスくんたちの連携は流石の一言に尽きる。レックスくんが大胆に攻め、ケラーデさんがその補佐を完璧にこなしている。そして、エンリさんが他のヒュドラの頭を魔術で牽制する。その隙にルーフェさんは遠隔でレックスくんの体力維持。この流れが滞りなく続く限りヒュドラは大した脅威ではない。


 ならばあとは油断せずに殺すだけだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ