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忖度

「だから力を貸してほしいってか」

「ああ」


 まぁ、頼みの綱のレックスがそんな調子じゃあそう考えるか。


 今思えばエンリちゃんの荒れっぷりも納得できる。実の兄がそんな状態なら気が気じゃないだろう。心身ともに追い詰められて、いつ死んでもおかしくないんだからな。


「因みにレックスは総力戦の話を知っているのか?」

「いえ、レックスにはまだ話していません」


 その方が良いだろう。


 総力戦を聞いて焦って無茶なことをしてしまったら目も当てられない。


「だが、薄々気づいてはいるだろう」

「それもそうか」


 昨日の見切り発車の依頼も今考えれば説明がつく。レックスも後がないことを察してはいたんだろう。だから、出会ったばかりの俺たちに助けを求めた。サンセンタに後がないように、自分にも後がないと気づいていたから。


「レックスも己の不甲斐なさを感じているだろうが、やはり人命が優先されるべきだとも考えているはずだ」

「なので、私はこの状況を打開するために貴方たちに依頼をしたいと思っています」

「わかりました」


 状況が状況だからな。それに俺たちもヒュドラを討伐しようとは考えていた。今日はそのためにお買い物をしていたんだ。今更断る理由はない。


「お引き受けくださりありがとうございます。では、早速依頼の説明をさせていただきます。依頼の内容は私の護衛になります」

「……どういうことですか?」


 これには流石のお嬢も驚いている。


 なにせ教皇様はヒュドラの討伐依頼より自分の身の安全を優先したのだから。もちろん、教皇様の身の安全も大切ではあるが、教皇様の性格的に国民の安全を優先すると思っていた。それなのに依頼内容は討伐ではなく護衛。


 また意味がわからない。もう少しわかりやすく話を進めてほしい。というか、何かしら理由があるにしても話の流れをぶった斬りすぎだ。ここはヒュドラの討伐依頼じゃないのか?


「レックスは貴方たちにヒュドラ討伐の協力を願ったそうですね」

「ええ」

「しかし、私はヒュドラ討伐はあくまでレックスにしてもらうつもりです」

「けど」

「それに貴方たちにヒュドラ討伐を協力してもらっては、私たちはなにも進歩していないことになります。初代英雄様を頼ったように」

「そんなこと言っている場合なのか?」

「もちろんです」


 その心意気は大したものだと思うが、こんな状況で優先することなのか?


 もう取り返しがつかない状況の一歩手前まできている。俺たちに頼って被害が少なくなるのならそうすれば良い。誰かが命を落としてからでは遅い。


 しかし、教皇様の表情は変わらない。その表情からは揺らぐことのない意志の固さがうかがえる。


「そもそもヒュドラは我々に対処できる問題です。にもかかわらず、貴方たちの手を借りるなど許されるはずがありません。我々は同じ過ちを繰り返してはいけないのです」


 わかってはいたがやはり気持ちは固そうだ。仮に説得を試みても教皇様の意見は変わることはないだろう。


 だとしても、本当にそれでいいのか? 意地でどうにかなるとは思えない。


「ケラーデさんもそれでいいのか?」

「ああ、そうあるべきだと考えている」

「あるべき、ですか?」


 こっちはかなり辛そうな顔をしてるが、答えはほぼ教皇様と同じっぽいな。


「そうだ。例えヒュドラとの戦いで我々の誰かが命を落としても、それは仕方のないことだ。どこかの世界から救いを求めて人を攫ってくるなど言語道断。自分たちのことは自分たちで対処すべきだ」


 やはりケラーデさんの考えも決まっているんだな。しかも相当な覚悟をしているらしい。騎士としての誇りなのかなんなのか知らないが、大切なものを守るために死ぬなら結構って感じだ。とはいえ、教皇様よりは少し迷いが見える。まるで自分にそう言い聞かせているようだ。


 それにしても、二人とも極端な考え方してるな。もうちょっと柔軟な考え方はできないのか。それともこの極端な考え方は加害者意識から来てるのか? だとしたら地味に責任を感じるんだがなぁ。


「なので、貴方たちにはレックスの心配を少しでも減らすために私の護衛をしていただきたいのです」

「そっか」

「お嬢、どうするんだ?」


 依頼内容が予想と大きく変わったので確認する必要がある。予想通りのヒュドラ討伐なら俺が返事をしてもよかった。しかし、護衛となると勝手に引き受けることはできない。やはりここでも決めるのはお嬢だ。


「わかりました。その依頼を改めて引き受けさせていただきます」

「ありがとうございます」


 ヒュドラを討伐する気満々だったが、教皇様に直接頼まれちゃあ断れないよな。


「じゃあ、よろしくな」

「よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」


 ということで、教皇様の護衛することになった。


 まあなんというか、話の流れは昨日のレックスとの話し合いとほぼ同じだが気にしてはいけない。相手は教皇様だからな。レックスの時は見切り発車だなんだと文句を言ったが、今回は言わない。なんたって相手は教皇様だからな。何度でも言ってやる。


 つまりあれだ。TPOを弁えた大人の対応だ。そして、それを一言で言うと。


 忖度だ。


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