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「なるほど、冒険者組合の方からの報告通りということですね」

「ああ、必要ないからな」

「現状が気に入ってるから」


 それから俺たちと教皇様はしばらく他愛ない話をした。また、なにか欲しい物ややってほしいはないかと教皇様に聞かれた。しかし、そういったことには何一つとして困ってないので断る他ない。


 もちろん、教皇様としては立場的に俺たちの要望に応えたかったのだろう。俺たちが必要ないと断った時はそれはもうどうしようかと困っていた。でも、最終的には納得してくれた。俺たちに迷惑をかけるよりはいいと考えたらしい。


 今の俺とフィオに特別なものは必要ない。十分満たされている。


「それはディジーさんとベクトルさんの人柄によるところが大きそうですね」

「否定できないな」

「そうだね」


 その通りだ。


 俺とフィオを拾ったのが二人じゃなかったら、違った今があったかもしれない。それこそなにかと言い包められて殺戮兵器のような使われ方をしていたかもな。それを想像すると本当に二人で良かったと思う。


「では、今度はお二人のお話を聞かせてくれませんか?」

「わかりました」

「はい」


 今度はお嬢とベクトルに話を聞くらしい。


 お嬢とベクトルも話をすることに異存ないらしく、教皇様に対してはっきりとこたえた。


「ディジーさんやベクトルさんから見て、お二人はどういった方たちですか?」

「そうですね。良くも悪くもうるさいですね」

「僕はそんなところを含めて、とても素晴らしい方たちだと思っています」


 双方ともにらしい答えだな。


 しかし、うるさいって言うなよ。もっと別の言い方してくれてもいいだろうが。ベクトルも褒めてはくれているが、うるさいという部分を否定していない。本当のことだとしても、もうちょっと優しさで包んで言ってくれ。


「そうですか。では、ポルターさんやフィオさんから見て、ディジーさんやベクトルさんはどういった方たちですか?」

「まずお嬢はせっかちだな」

「そうだね」


 さっきの仕返しだ。教皇様の前でせっかちというラベル付けをしてやる。それにこれは本当のことだしな。さっきの答えにもせっかち具合が滲み出てる。なにせ俺たちのことをうるさいの一言で済ませたわけだからな。


 もっと言うことあるだろ。


「それで、ベクトルは色々とぶっ飛んでるな」

「天性のものを感じるよね」

「ありがとうございます」


 こういうところが特にな。


 おそらく俺たちがなんのことを言っているのかわかった上でこれだからな。図太いにもほどがある。まぁ、だからこそ俺たちが側になにも気にしてないんだろうけど。


 それに一番はお嬢への情熱だ。正直狂ってるとたまに思ってしまうレベルの情熱がある。やはりここに一番の天性を感じる。


 とはいえ、そんなこと教皇様に言う必要はない。というか言えない。


「とても仲が良いのですね」

「まあな」

「私たちは特別なにもしてないけどね」

「そこは私たちも同じね」

「そうですね」


 本当に楽で良い。馬が合うってこういうことを言うんだろうな。


「それは大変素晴らしいことですね」

「ああ」


 教皇様はそう言って微笑んでから、少し間をあけてゆっくりと自分の考えを話してくれた。


「私は勝手ながら少し心配していました。周りの人々に気を使って窮屈な思いをしておられるのではないかと。しかし、それは大きなお世話だったみたいですね」

「大きなお世話とまでは言わないが、恵まれてるとは思ってる」

「そうだね。これ以上ないってくらい恵まれてると思うよ」


 窮屈な思いをしてないとは言わないが、現状に満足している。それに窮屈な思いなんて誰だってしてる。特別なことじゃない。もちろん、だから我慢しなければなんて思わないが、その窮屈さに心地よさも感じている。少なくとも俺は。


 考えるまでもない。本当に恵まれている。こんな不気味な俺たちを側に置いてくれているのだから。感謝してもしきれないだろう。


「そう聞いて安心しました。しかし、同時に困ってもしまいますね」

「困るのか?」

「ええ、とても困ります」


 どういうことだ?


「とても傲慢な考えではありますが、私たちにはもうポルターさんとフィオさんに手を差し伸べる余地が残っていないわけですからね。今の私たちにできることは皆さんを見守ることだけです。もしかしたら、見守る必要もないかもしれませんがね」


 そう言って、教皇様はとても困った顔をしていた。しかし、その顔はどこか嬉しそうでもあった。


「なら、もうしばらく困ったままでいてくれ」

「そうします」


 そう言って教皇様はにっこりと微笑んでくれた。


 教皇様が心の底から俺たちのことを思ってくれてるのがよくわかる。


 俺やフィオだけでなくお嬢やベクトルのことも思いやってくれているだろう。しかし、過度に干渉するのともせず、少し距離をあけて見守ろうとしてくれている。


 その在り方はまさに教皇という言葉に相応しいものだった。


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