教皇
俺たちはケラーデさんのしばらく後ろについて大聖堂の奥へ進んで行った。
そうして何度か階段を上り大聖堂の中をかなり進んだ辺りで、突然空気が変わった。
今までの通路とほとんど何も変わっていないと思うが、明らかに何かが違う。
そして、そんな違和感を肯定するかのようにケラーデさんは一つの扉の前で立ち止まる。
「こちらに教皇様が居られる」
そう言って、ケラーデさんは俺たちに扉の前で待つように促してから、丁寧に扉を叩いて部屋の中にいる教皇様へ声をかける。
「ポルター・ガイスト様、フィオ・ガイスト様、ディジー様、ベクトル様をお連れしました」
「どうぞ」
すると扉の向こうから優しげな声が聞こえた。考えるまでもなく教皇様の声だろう。ああ、緊張する。
俺たちはケラーデさんに扉を開けてもらい部屋に入る。
「失礼します」
そうして俺たちが部屋に入ると、視界が白一色に染まった。というのも、その部屋は主に白を基調としていたからだ。しかし、その部屋に威圧感や恐怖を感じされるものはなにもない。包み込まれるような温かな白が部屋を埋め尽くしていた。
俺は教皇様が居る部屋と聞いて豪華な部屋を想像していたが、どちらかというというと質素な部屋だ。また窓からの日差しが室内を照らしてとても穏やかな気分にさせてくれる。
そして、その部屋の奥にはゆったりした祭服を身に纏った年老いた男が椅子に腰かけていた。年老いた男は俺たちが部屋に入ったことを確認すると、優しげな表情で声をかけてきた。
「ゆっくりしてくれて構わないよ」
「はい」
そう言った年老いた男もとい教皇様に言われたとおりに俺以外は席につくことにした。
椅子はテーブルを挟んで三つ用意されており、教皇様と対面する配置になっている。そこへお嬢、ベクトル、フィオの順に座り俺はフィオの隣に位置取ることにした。最後にケラーデさんも教皇様の斜め後ろに立ち姿勢を正した。
「私はペダン二世という者です。今回は急に呼んでしまって申し訳ありません」
「いえ」
まず教皇様は俺たちに謝罪した。しかし、俺たちはとくに何か言えるわけでもない。なので、お嬢が代表して否定をする。
「お気遣いありがとうございます。それで君がディジーさんで隣の貴方はベクトルさんで間違いないかな?」
「はい。私は二級冒険者のディジーです」
「同じく二級冒険者のベクトルです」
「では……」
教皇様がこちらを見て言葉をつまらせた。
そこで俺とフィオはすかさず自己紹介をする。
「俺がポルター・ガイストで」
「私がフィオ・ガイストだよ」
「貴方たちが、そうなのですね」
たぶん、そうなのですよ。最重要案件が来ちゃいました。
すると教皇様は俺とフィオをじっと見つめて黙りこくってしまった。その顔はまさになんとも言えない顔だった。悲しそうでもあるし怒っているようでもある。
「すみません。前もって言うべきことは考えていたのですが」
「そういうことってあるよね」
おいおい、フィオさんや。フレンドリーがすぎるだろ。相手は教皇様だぞ。もっと丁寧な対応をしないといけないだろうが。
と思っていたが、教皇様は怒る様子もない。それどころか教皇様の表情が柔らかくなっている。
失礼になるんじゃないか思ったが、これくらいの方がいいのかな?
「別に俺たちは気にしてない。ゆっくりで大丈夫だ」
「ありがとうございます」
どうやらこれくらいフランクな方がいいらしい。教皇様の表情が確実に良くなっているからな。よく考えてみると教皇様も緊張していたのかもしれない。そう思うと、こっちの緊張も少し解れた気がする。
お互い楽に行こう。
「しかし、まず私は国民を代表してお二人に謝罪しなければなりません。本当に申し訳ありませんでした」
そう言って教皇様は深く頭を下げた。
「いや、まぁ、なんと言うか謝罪は受け取る」
別にこの国の人間になにかされたわけじゃないないから、謝られても正直困る。でも、謝罪を受け取らないわけにもいかない。向こうの気がすまないだろうからな。
「ポルターに謝るのはわかるけど、私にも?」
「もちろんです」
関係者だからまとめて謝罪したのかと思ってたけど違うらしい。
フィオにも謝罪する理由があるのか。
「どういうこと?」
「初代英雄のカオル・スミス様やそのお仲間の方々に誓って、私たち教国民は同じ過ちは繰り返さないと思い生きてきました。なので、このような自体になってしまったことをご本人であるフィオ・ガイスト様に謝罪しない道理はありません」
「そうなんだ」
なるほど、納得。
けど、カオル・スミス?
「謝罪を受け入れてくださりありがとうございます」
「まぁ、うん」
初英雄は日本人ではなく外国の人だったのか? てっきり同じ日本人だと思っていたがそうとも限らないみたいだ。カオルって名前だから同じ日本人だと思ったが、違うらしい。スミスって言ってたしな。
いや、ハーフもしくは日系の人ならあり得るのか?
わからんな。
「どうかしましたか?」
「きっと大したこと考えてないから大丈夫だよ」
俺の様子がおかしいことに気づいた教皇様が心配してくれたが、フィオが無慈悲なフォローをする。すると教皇様の緊張も完全に解れたのか、ようやく笑顔が見えた。
まぁ、結果良ければなんとやらだ。




