面会について
「しかし、なんでいきなり教皇様と会うことになったんだよ?」
俺たちは昨日サンセンタに到着したばかりだ。
いくら冒険者組合が俺たちのことを知っていたとしても、話が通るのが早すぎる。国の方だって情報の精査くらいするだろう。普通ならもっと時間がかかるはずだ。
「それはやはり君の未還の魔術が原因だろう」
「まぁ、それはそうなんだろうけどさぁ」
そうはっきり言われるとさぁ。
知ってはいたけど未還の魔術の重み凄いな。この非常事態にトップを動かすほどのことなのかよ。もしかして、この国にとっては最重要案件なのかもしれない。というか、そうとしか思えない。
けど、今俺が聞きたいのは、いきなり教皇様に会うことになった理由だ。流石に未還の魔術と教皇様は直接繫がらない。
もう少し紆余曲折の辺りが聞きたい。
「君たちも知っているとは思うが、この国にとって未還の魔術は禁忌と言っていい。まさに消すことのできない人類の過ちだ。あまり当事者の前で言うことではないが……」
「それだけ後悔してくれてるんだろう?」
「ああ、そのつもりだよ」
そこはもう理解している。今更この国に八つ当たりするつもりもない。
悪いのは廃館にいたあの糞魔術師だ。
「そして、その過ちがまた起きてしまった。厳重に資料を管理をしていたつもりだったが、結果を見てみれば甘かったと言わざるおえない。君、ポルター・ガイストという被害者をまた出してしまったのだから。このことを教皇様含め、この国の上層部はとても重く受け止めてた」
もみ消そうとはしなかったんだな。
いや、してたのかもしれない。しかし、結果としてそうはしなかった。きっとそれだけ真剣に考えてくてたんだろう。
「昨晩、上層部は君について揉めに揉めたそうだ。どう対応するのが最も適切か。金品での謝罪や国賓として向かい入れる案も出たそうだ。しかし、冒険者組合から君はそういったものに興味がないと報告を受けている」
「まぁ、そうだな」
お金なんて貰っても使い道がない。国賓も正直よくわからない。どっちも手に余るだろうし、後になって何か対価を求められそうで怖い。
それはそうと、冒険者組合もちゃんと報告してたんだな。もうちょっと雑なもんだと思っていた。それにサンドの組合長が俺たちのことを報告書に事細かく書いていたのかと思うと感慨深い。あんなに嫌そうにしてたのに。
「そこで、教皇様はまずは会って話さないことには判断ができないと仰った」
「そうなのか」
凄くまともな会議だな。
前代未聞の事態になったんだから、もうちょっとわけのわからないことになりそうなのに。会議したはいいけど、結局なにも決まらなかったなんてことはよくあるからな。
「それで今回の謁見が決まったんですね」
「いや、これは謁見ではないんだ」
「どういうこと?」
うん? 偉い人に会うなら謁見じゃないのか?
「謁見とは真逆のものだ。君たちは被害者で私たち教国民は加害者なのだから」
「なるほど」
我がことながら重いなぁ。
気にするなとか言える雰囲気でもないから、結局どうしょうもないんだが。
「それに教皇様は君の周りの人にも会うべきだと仰った」
「それまたどうして?」
「それはもちろん君が主と認めた冒険者とその仲間。更に三百年前の英雄と深い関わりを持つ君の相棒。そんな重要人物を無視することなどできるはずがない」
二人を認めた? それに相棒? 否定はしないがそんな大層なものだったか?
フィオも相棒にはピンときてないみたいだ。俺たちなんとなくでここまで来てる節があるからなぁ。
お嬢に出会ったのも偶然だし、ベクトルは元々の仲間だからなぁ。もちろん、二人のためならなんでもしてやるつもりだ。けど、俺が認めるってのはなんか違う気がする。
「なるほど、そういうことですか。……ポルターに一任して私たちは席を外そうと思ってたけど、無理そうね」
「よくもそんな酷いことしようとしたな!」
「真っ当な反応だと思うけど」
「そんなわけないだろ!」
なんて酷いことを考えていたんだ!?
いくらご主人様だとしてもそれはない。誰だ俺が二人を認めたとか言ったやつは。この扱いを見てみろ。圧倒的に俺が下だぞ。
しかし、俺は断じてお嬢の考えを受け入れないぞ。いくら俺が当事者だとしても、国のトップの前に一人放り出す行為は真っ当な対応だとは思えないからな。これは非人道的な行為だと思う。人じゃないけど。
「別にいいじゃない。結局は私たちも会わないといけないんだから」
「そうなんだけどさ」
「可能なら遠慮したいですしね」
「でも、断れないもんね」
「まあな」
そうなんだよな。もうここまで来ちゃったしな。
いきなり教皇様に会えって言われても困る。せめて、身だしなみを整える時間くらいはくれよ。
ああ、奥へ進めば進むほど緊張してくる。
「君たちは教皇様をなんだと思っているんだ……」
「いや、教皇様だからこそだろ」
いや、本当に。
俺たち全員庶民なんで。




