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大聖堂

「これは中々……」

「ほえぇ」


 ケラーデさんの案内で大聖堂に辿り着いた俺たちは圧倒されることになった。


 空よりも深い青さの屋根。雲を切り取って積み重ねたとしか思えない純白の外壁。太陽の輝きを一つにまとめたかのような黄金の紋章。それぞれが完璧な調和を生み出している。そんな大聖堂が俺の視界を埋め尽くしていた。


 これは凄い。荘厳という言葉が生易しく感じるレベルだ。


 この大聖堂を前にしたら誰もが口を半開きにして見上げること間違いなしだろう。まぁ、俺はしてないけど。


 因みに俺は大丈夫だったが、フィオは既に口が半開きだ。


「昔より大きくなってる」

「そうなのか」


 そういえば、フィオは昔見たことあったんだよな。確か俺と同じ未還の魔術の被害者つまりこの国にとっての初代英雄と知り合いだったはず。いや、仲間だったっけ?


 まぁ、そんなフィオがここまで感心しているってことは、大聖堂の変わり様は相当なものなんだろう。


「確か二百年前に建て替えがあったはずだ」

「へえ」


 二百年前ってことはフィオが殺されてから百年後ってことか。


 フィオが棺の中でお寝んねしている間に大聖堂も様変わりしたってわけだな。


 やはり三百年という時間は長いな。これだけ大きな建物が建て替えられた上にもう馴染んでいる。二百年という時間が蓄積したちょっとした汚れやひび割れが時の流れを物語っている。


「もういい?」

「ああ、もう十分だ」

「そうだね」


 もう十分大聖堂は堪能した。


 周りにも同じような観光客らしき人間が沢山いたので、そんなに目立たなかったからよかったものの結構な時間いたからな。


 これ以上はケラーデさんの迷惑になる。


「では、ついて来てくれ」


 そう言ってケラーデさんは大聖堂の中へ入って行く。


 中はかなり広く外壁と同じ純白一色なので清潔感に溢れてる。また中央には青いカーペットが敷いてあり奥へと続く道のようになっている。


 その道をケラーデさんは真っ直ぐ進んで行く。たまにケラーデさんを見て軽く会釈する人がいるが、本人もそれに軽く応えるだけにとどめている。


 なんというか静かにしないといけない雰囲気が凄い。


 なので、ついつい小声になってしまう。


「中もかなり綺麗だな」

「ここはまだ出入り自由の場所だ。後でゆっくり見ていってくれ」


 そう言ってケラーデさんは少しだけ微笑み奥へ進む。


 俺たちは警備の人間が立っていた扉を抜けて奥の通路に出た。ここは流石に出入りが自由ではなさそうだ。さっきと違って空気に温かみがない。無機質な空気が通路に充満している気がする。しかし、それを不快に感じることはない。しいて言うなら、自然と身が引き締まる空気だ。


 そんな通路に他の人間は見当たらない。もうそろそろいいいよな。


「それでいつになったら詳しく説明してくれるんだ?」

「そうだな……ここなら問題ないか」

「込み入った話なんですよね?」

「ああ、かなりな」


 まぁ、前情報から軽い話じゃないのはわかってた。なにせ、未還の魔術関連だからな。


 しかし、ここなら詳しい説明をしてくれるはずだ。ここには教会の関係者しか入って来れないみたいだし。込み入った話をしても問題ないだろう。


 贅沢を言うなら落ち着いて席につきたいところだが、ケラーデさんの様子からそれはできそうにないから諦める。


「今回、君たちに来てもらった目的はとある方に会ってもらうためだ」

「とある方?」

「もうちょっと詳しく教えてくれよ」


 流石に勿体ぶりすぎだ。


 こういうのはさっと言って話をテンポよく進めた方がスッキリする。あまり勿体ぶるとダレるからな。


「そうだな。君の言う通りだ。わかってはいるんだ。しかし、正直あまりの出来事で私も今だに戸惑っているらしい」

「……そこまで言われると怖くなってきたんだが」


 勿体ぶってるとかではなかった。


 ケラーデさんサイドもどう言ったらいいのかわかってなかったらしい。少し苦笑いを浮かべている。


 これは地味に怖いぞ。俺たちは一体誰に会うことになるだよ。


「いや、怖がる必要はない」

「じゃあ、誰なんだ?」

「教皇様だ」


 トップかよ。マジか。


 いきなりにもほどがあるだろ。偉い人すぎて普通に怖いんですけど?


「……」

「……」


 俺もびっくりしているがフィオも相当驚いている。


 もう顔が無だ。


 いつものニコニコ顔が今は無になっている。そして、一言も言葉を発しない。


 これは凄い。


「いきなり教皇様とはね」

「予想外ですね」


 お嬢もベクトルもかなり驚いているな。


 そりゃそうだよな。俺もこういうのにはもうちょっと順序があると思ってた。詳しくは知らないけど司教さんとか枢機卿さん的な存在を通すんじゃないのかよ。


 直トップって……。


「緊張するな」

「そりゃそうでしょう」


 そうして、俺たちは先程とは全く違った足取りで教会の通路を歩くことになった。


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