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店へ

「ところで、さっきからどこへ向かっているんだ?」


 話の流れを意識して今まで聞けなかったが、流石にもう聞いていいよな。


 別に聞いちゃいけないわけじゃないが、タイミングくらいは俺だって考える。人間やめさせられても社会人までやめさせられてないからな。


「道具屋。なにか使えそうな道具がないか見に行くの」

「使えそう道具って?」

「さあ」


 いや、さあってな……。


 なにか目的があって見に行くんじゃないのかよ。


 全く構わないけど、なんというか拍子抜けするな。


「どうせなにもないでしょうけど、一応ね」

「掘り出し物があるかもしれませんからね」

「つまり、ただの買い物か」

「そうね」


 まぁ、見に行くだけならタダだしな。


 ベクトルの言うように掘り出し物があるかもしれない。それこそヒュドラに効く何かが。お嬢の言う通りでそんな都合のいい物はないんだろうけど、何もしないよりはいいよな。


 暇つぶしにもなりそうだし。


「ヒュドラを倒した後に使える物が見つかるかもしれないしね。例えば、ポルター用の入れ物とか」

「それは確かにな!」


 フィオの言う通りだ。これからも旅は続くわけだしな。


 俺たちの旅はヒュドラを討伐して終わりってわけじゃない。ここはただの通過点だし本来の目的地はスターテアという国だ。そこで従魔の本登録というのをすることが最終的な目的になる。


 なので、ここで俺用の入れ物を見つけることも結構大事なことだったりする。なにせ俺用の入れ物があると馬車という夢の移動手段が手に入るわけだからな。


 こうなるとヒュドラのことがなくても見に行かなければならない。


 じゃないとまた凄まじい長さの徒歩移動が待っている。


「良い物があればいいね」

「そうだな。とにかく頑丈な入れ物があればいいが」


 今までも探してはいたが、どれも木製か陶器で強度が心許なかった。もっとファンタジックな素材て出来た入れ物はないんだろうか。ミスリルとかオリハルコン的な素材は定番だと思うんだが。


 なかなか理想的な入れ物が見つからない。


「ポルターが鉄鍋で我慢していれば、とっくに解決している問題よ」

「鉄鍋は煮込まれてるみたいで嫌なんだよ」

「誰もポルターから料理なんて連想しないわ」

「主観的な話だ」

「あっそ」


 流石に鉄鍋は違うと思う。


 もちろん強度は触れなければ問題ないし、重さもフィオが持てば大した問題じゃない。


 しかしだ。


 やはり見た目というのも大切な要素だ。それも俺にとってはずっと使っていく物なのだ。軽い気持ちで自転車を買うのとはわけが違う。あえて言うのであれば車を選ぶ時くらいの気合いは入っている。いや、家と言っても過言ではないかもしれないな。


 それくらい俺は入れ物にこだわりを持ちたいんだよ。


 それなのに鉄鍋って……。


「軽さも大事な条件だしね」

「そうですね。僕でも待てる軽さだと助かりますね」


 わかってるよ。二人はよくわかってらっしゃる。


 そこも妥協できないんだよ。やはりそこも求めたくなるんだよなぁ。


 例えフィオが持てたとしても他の誰も持ち運びできなければ、それは結局大きな荷物となりはてる。もちろん、お嬢もベクトルも冒険者という職に就いているんだから、鉄鍋でも持つこと自体は可能だろう。しかし、運ぶとなると相当な負担になるに違いない。そうなるとやはり重さも無視できない。


 丈夫さと重さは無視することのできない大切な要素だろう。


「頑丈で軽い入れ物なんてそうそうないわよ」

「……まぁ、そうなんだろうけどさ」

「それこそ掘り出し物だね」

「ええ」


 ないんだろうけど、諦めたくはないんです。理想を求めたくなっちゃうんです。たとえそれが実在しない物だとしても。


 わかってはいるんだけどさぁ。どうしても追い求めちゃうんだよなぁ。


「まだヒュドラに有効な掘り出し物を見つける方が簡単ね」

「そうかもな……」


 すっかり忘れていたが、確かにそっちの方が簡単かもしれない。


 同じない物でもヒュドラに効きそうという条件の方が選択肢は広いからな。俺用の入れ物はこの世に存在しない可能性すらあるしな。


 ここは切り替えて当初の目的に戻るべきか。


「でも、どの店がいいのかなぁ」

「さっぱりわからん」


 ガラクタっぽい物を売っている店がさっきよりも増えてきた。おそらくこれらが道具屋なんだろう。


 しかし、どの店も同じに見える。それに商品も何がなんなのかさっぱりわからない。


 ヒュドラに効果的な道具なんて尚更わからない。


 ついでに丁度良さそうな入れ物も皆目検討がつかない。


「あの店はいかがですか?」

「そうね」


 しかし、お嬢はベクトルが選んだ店へ迷うことなく進んで行った。


 なにか気になる商品でも見つけたんだろうか?


「決め手は?」

「ない」

「初めから期待してないもんね」


 まぁ、フィオの言う通りか。


 目印的なものがないなら、さっさと店に入って片っ端から見て回った方が早いよな。


 ということで、俺たちはその店に入ることにした。


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