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 フィオの力がエグい。最初の発見はこれだ。


 そこで、俺はクローゼットのことを思い出した。


 フィオはクローゼットを開ける時に確か取っ手に触れていた。ならばクローゼットの取っ手はどうなっているんだ?


 確認してみると、クローゼットの取っ手も砕ける寸前だった。気づかなかっただけで、フィオは最初からこうだったようだ。凄まじい。


 それからフィオはずっと手を握ったり開いたりしている。今もずっとしている。


 本人にはなにか思うところがあるんだろうな。


 とりあえず、俺たちは元いた部屋からは出た。しかし、とくに何もない。ただただ長い廊下って感じだ。


「普通の館って感じだね」

「普通の館を知らないからなんとも言えん」


 普通の館ってなんだ。鹿鳴館くらいしか館は知りません。そもそも鹿鳴館も普通の館じゃないだろうしな。というか、実際に見たことないし。


「そうなの?」

「こちとら元一般人だからな」

「へー」


 こっちの人は館をよく見たのか? そんなことないと思うけどなぁ。


 少なくとも、フィオは何回も見てるんだろうな。


 まぁ、身に纏うものから一般人って感じはしないしな。ファンタジーなら、有名な武闘家って感じかも。傭兵って可能性もあるか。


 それに比べて、俺ときたら。


「起きたら変な体だし、動けないしで大変だったんだよ」

「ふーん」


 寝起きドッキリってレベルじゃない。放送できないレベルだ。


 衝撃的って言葉でもまだ弱い。


「しかも、あきらかに生前の世界じゃないし、人じゃないし」

「そっか」


 情報過多だ。こんなことをさらっと受け入れて納得できるわけない。


 それも人じゃないってなんだ? 意味がわからん。なら、せめてなにになったかは誰か教えてくれ。


 異世界云々に関しては理解できる気がしない。思考放棄するしかない。


「……別に前の人生に嫌気が差していたわけでもないのに、これは酷い」

「仰る通りだね」


 普通に働いて普通に遊んで暮らしてたんだ。未練たらたらだ。


 やりたいことも沢山あったが、ほとんどできてない。冗談じゃない。


 それになにより……。


「フィオはほとんど俺の話を聞いてないし」

「だって、つまんないし」


 俺は面白さを求められてたのか?


 あきらかな愚痴になってたのは申し訳ないけど。面白さを求められてるとは思わなかった……。


「いや、つまんないって……」

「私だって辛いけど、多分もう元には戻れないよ。それなら、思い返すだけ辛いよ?」

   

 その通りだとは思うけどさ。


 愚痴も言いたくなるだろ。


「そうだけど」

「じゃあ、まだ先のことを考える方が少なくとも辛さはマシだと思うよ」

「仰る通りで」


 ド正論だよ。流石はポジティブ担当。言い返す隙間もない。


 散々辛気臭いとかなんとか文句言ってたが、一番俺が辛気臭くなってたな。


 そう考えると面白さも必要か。


「なんか面白いこと言った方がいいか?」

「愚痴るくらいなら、そうしてほしいかな」


 面白いことね。


 ……すぐに思いつくわけがない。


 聞いた手前なにか面白いことを言いたいが、なにも思いつかない。じゃあ、さっきの続きでいくか。


「フィオの握力でどれくらいのものが潰せるんだろうな?」

「……それって面白い?」

「面白いだろ。一発芸でリンゴを握り潰さたら多少はウケるだろうし」


 笑いは取れないだろうが、そこそこの拍手はもらえるはずだ。


 面白いにもいろいろあるしな。


「……リンゴってなに?」

「そうきたか……」


 伝わってない。固有名詞は伝わらないのか?


 ウケるウケないどころじゃなくなってくるぞ。


「面白い話とかはもういいや。これからの話をしようよ」

「そうだな」


 飽きられたな。すごい残酷な話の切られかただ。


 見切り発車がよくなかった。話のオチも見えてなかったからな。次からはオチを決めてから話をするべきだな。


「とはいえ、これからのこともよくわかってないけどね」

「せめて、簡単なルールは決めておきたいな」

「そうだね」


 ルールって言葉は通じるのか。


 今更だが言葉が通じてるのも変な話だ。


 ここで話を広げても答えは出ないから言及しないでおくが。


 流れは大切だからな。


「まず、この館からは出たいな」

「うん」


 この館がどれくらいの広さかはわからないが、とにかく脱出はしたい。


 もちろん、そう簡単に脱出できるとは限らないが、いつまでもここにいるわけにもいかない。


 外の様子も見ておくべきだ。状況を整理するために。


 これは俺たちの今後の立場をはっきりさせるためにも必要な情報だからな。


「あとは人間に会った時にどうするか」

「どうって?」


 フィオはわかっていて聞き返しているのか?


 それとも、本当にわかっていないのか?


 わかっていないなら、今話し合いができてよかった。


 その時になって揉めていたら事態が複雑になるだろうしな。


「人間と会った時に俺たちが敵対的な態度をとるか、友好的な態度をとるか」

「それは……」


 大切なことだ。


 それによって今後のなにもかもが変わってくる。


「俺たちはあきらかに人間じゃないからな」


 自分と違うものは怖いもんだ。


 俺たちが人と会った時に怖がられるのは避けられない。


 別に俺もどうしたいか決まっているわけじゃないが、先延ばしにできるとは思ってない。


 いつか、その時はくる。確実に。


 なら、その時に俺たちの意見くらいは統一しておくべきだ。迷わないように。


 これは面白い話じゃない。真面目な話だ。


「フィオはどうしたいのか聞かせてくれ」

「……」


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