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整備

 怒涛の一日を終えた俺たちは一晩組合で休んで町へ出ていた。


「ここまでデカいとそれなりに揃ってるもんなんだな」

「そうだね」


 組合から離れてガチャガチャした方へ進んで行くと様々な店が並んでいた。古着を売っている店や食器らしきものを売っている店が多く見える。中にはゴミなのか商品なのか判断がつかないものを売っている店もあるが、あれはあれで客が居るようだ。やはりこっちの世界の詳しいことはまだ俺にはよくわからないな。


 そんな思いをよそにお嬢は町中を真っ直ぐ突き進む。


 一応買い物に行くとは聞いているが、詳しいことは聞いていない。


 なので、どこへ行くのかちょっと気になる。


「お嬢、どこへ行くんだ?」

「ひとまず装備の点検ね」


 装備の点検か。


 よくわからんな。


「なにか壊れたのか?」

「しばらくしてないから念の為ね」


 そう言われると確かに戦闘は俺たちがしてたな。だから、今まで寄った町でも点検をしてる様子はなかった。


 本来ならもっと頻繁にするものなのかもしれない。なにせ自分の命を任せるものだもんな。管理を疎かにして痛い目を見るのは自分だ。というか、痛い目で済めば良い方か。


 なら、先に装備の点検に向かうのは冒険者にとって当たり前のことなのかもしれないな。まぁ、初めてのことだから全然違うかもしれないが、そんな気がする。


「主に僕の装備の点検ですがね」

「そうなのか」


 てっきりお嬢もまるっと点検するのかと思ったがそうでもないらしい。


「ディジーはいいの?」

「ええ。昨日の夜に自分で済ませたわ」


 なるほど、自分で済ませるというパターンもあるのか。


 とくに理由はないけど点検と聞いてその道のプロに任せるものだと思っていた。でも確かに自分で出来るなら、さっさと自分で済ませた方がいいよな。業者に頼るとややこしくなるのはよくあることだ。


 たしかお嬢の装備は鈍器みたいな杖といつも着ている暗い色のローブ。あとはローブの内に簡単な革鎧と少し頑丈な衣服。最後に今も石畳をカツカツ鳴らしているゴツいブーツ。靴底に何入れてるんだ。


「自分でやるのと任せるのはどっちが主流なんだ?」

「やり方を教えてもらわない限り普通は任せるものね。楽だもの」

「それもそうか」


 ということは、杖とローブの点検の仕方はスパルタ師匠に教わったんだろう。


 杖は聞くまでもなくスパルタ師匠に点検の方法を教えられてそうだしな。メインウエポンの点検方法は一番に教えてもらっているだろうし。鈍器に見えることはここでは言及しない。


 ローブはあれで良い物らしいし魔術を付与しまくっているそうだ。なので、自分で点検した方が早いとのこと。その代わり見た目はかなりボロいけど。まぁ、歴戦の強者感はよく出てるがね。


「じゃあ、ベクトルが今日の主役か」

「主役とは光栄ですね」

「楽しまないとね」

「ええ」


 そう言ってベクトルはにっこりと微笑む。


 なんだその微笑みは。単位間違ってるだろうけど何カラットの微笑みなんだよ。全身レフ板みたいなフィオと純白のローブを着た俺のおかけでベクトルはより輝く。


 お嬢、お前の男は発光しているぞ。


「なんでもいいけどはぐれないでよ」


 しかし、お嬢は輝く微笑みを無視して石畳を踏み鳴らし先を行く。


 一言なにかくれよ。



 ◆◆◆



「総入れ替えだったな」

「良い物があって良かったわ」


 武器屋と防具屋が合体したような店に入った俺たちは早速ベクトルの装備を点検してもらった。しかし、店主は『別に直してもいいが、買い換えた方が安上がりだ』と言うのだ。最初は俺たちも疑ったが親切に説明されて、結局ベクトルは剣と部分鎧を総入れ替えすることになった。


「とはいえ、見た目は変わってないけどね」

「急に変えると慣れるまでが大変ですから」


 ベクトルの見た目は一切変わっていない。どうやらベクトルが使っている剣と部分鎧は多くの人間が好む形らしく、かなりの在庫があった。そして、その中でも質の良さそうな物を店主に選んでもらったというわけだ。


「まだ使えそうなのもあったと思うけど」

「そうなのか?」

「うん」


 まぁ、店主も商売人だから自分の店で買い換えてほしかったのかもな。それに嘘をついているようには見えなかった。使えそうだとしても買い換えた方が安上がりなのは事実なんだろう。


 というか、そういうのはお嬢とベクトルに任せておけばいい。素人じゃないんだから。デカい町で良い物を揃えたかったのかもしれないしな。


「せっかくの機会を逃す必要はないわ」

「そうですね」


 せっかくの機会?


 都会の良い店に出会えた的なことか?


「その言い方だといつもと違うみたいだな」

「確かに」


 いつもを知らないから確かなことはわからないが、なにか都合のいいことがあったみたいだ。


「そうね。多少奮発してるわね」

「総入れ替えですからね」

「なんでまた」

「昨日の話をもう忘れたの?」


 ああ、なるほど。


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