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遅刻

「遅かったか……」


 俺たちがレックスたちとの話し合いを終えて、部屋から出ると体格の良いおじさんが立っていた。


 発言からして話し合いに参加する予定の人間だったのかもしれない。


 まぁ、思いっきり遅刻してるけど。


「貴方は?」

「支部長のトルズだ」

「ああ、ここの組合長か」


 どうやらサンセンタの組合長みたいだ。


 そう言われると確かに身なりも多少は整っている。全体的に服を着崩しているが、服自体は良い物に見える。着崩しているのは組合長の好みなんだろうな。


 しかし、俺が組合長と呼んだ時に困った顔をした。本人的には正式な支部長と呼ばれる方がいいのかもしれない。見かけと違って真面目なのか。


 まぁ、組合長って呼び続けるけど。


「はじめまして、二級冒」

「知ってるよ。それにここに来たのは初めてじゃねえだろう?」

「ええ」


 お嬢が今日何度目かもわからない自己紹介をしようとすると組合長は必要ないと遮る。どうやら二人のことを知っているらしい。


「一度でもここに来たことがあるなら、顔と名前くらいは覚えてる。二級ともなれば尚更な」

「そうですか」


 意外に細かいんだなと思ったが、このおっさんは組合長だもんな。利用する冒険者の素性を知っておくのも仕事のうちなんだろう。


 それにベクトルの推測も間違ってはなかったようだ。二級は組合長が気にかけるくらい注目されているみたいだ。


「それであいつらとの話は終わったのか?」

「一応は」


 最悪の形だったけどな。


「そうか。なら、まずは厩舎の方がいいよな?」

「そうですね」

「こっちだ」


 そう言って組合長は歩き出した。


 しばらく組合長の後に続き廊下を進んでいると組合長は気まずそうに口をひらいた。


「悪かったな。まともな話なんてできてねえだろう?」

「まあ」


 組合長はお見通しだったらしい。


 だから出会い頭で『遅かったか』と言ったのだろう。もしかしたらあの話し合いも組合長が居たらもう少しまともなものになっていたのかもしれない。そう考えると間に合ってほしかったな。


 組合長は歩きながら話を続ける。


「あいつの悪い癖だ。考える前に体が先に動いちまう」

「さっきは妹さんが熱くなってましたが」

「今日はあっちか……」


 今日はってことは今までにも何度もあったってことだ。しかも内容によってはレックスが暴走しているらしい。考えるだけで疲れるな。


 熱血そうなレックスと思い込みが激しそうなエンリちゃん。


 流石は兄妹だな。遺伝子を感じる。


「いつもはもっと落ち着きがあるんだが……」

「焦っているみたいでしたね」


 状況から考えて仕方ないとはいえ、かなり焦っていたな。


 それを聞いた組合長は思い当たるところがあるらしく溜息をついた。


「そうだな。それに抱え込みすぎてる」

「抱え込みすぎてる?」


 力がどうとか言ってたから、なにかに悩んでいることには察しがつく。


 しかし、抱え込みすぎるとはどういうことなんだ?


「ああ。あの四人は自分がもっとしっかりしていれば被害は抑えられたはず、とか考えてんだよ」

「それはいくらなんでも抱え込みすぎだろ」


 それではレックスたちだけに責任があるみたいになってしまう。


 それに言ってはなんだが、レックスがどれだけ頑張ったって限界はある。それなのに自分一人が頑張ったら解決するなんて考えは自惚れだと思うけどな。周りの努力が無価値に聞こえてしまう。


「確かにな。だが、そう思っちまうのも仕方ない。あいつらは今代の英雄一行だからな」

「英雄?」


 聖女の次は英雄かよ。


 この国の仕組みはどうなってるんだ。特別な役職が多くないか?


 お嬢曰く、英雄とは国により選ばれる力ある者のことらしい。そして、特別な力を持つ者で国民の心の支えとなる存在。死ねば代替わりするとのこと。


 いろいろと気になるところはあるが、それ以上のことは知らないそうだ。


 ファンタジーにおける勇者的なやつなんだろうか。まぁ、そういう認識でいいか。面倒だし。


 そして、今代はレックスがその英雄だそうだ。


「だから、責任を感じてるんだ」

「なるほどねぇ」


 それならそう思うかもしれない。知らんけど。


 責任ある立場の人間の考えは俺たち従魔にはわからない。そうなるのが嫌で従魔になったところもあるしな。


「とはいえ、無茶を言っていい理由にはならねえけどな……」

「別に気にしてませんよ」

「助かる」


 そう言って組合長は申し訳無さそうな顔をした。


 組合長が悪いわけでもないのにそんな顔するってことは、レックスとも親しいんだろう。手のかかる教え子ほど可愛く見える的なやつなのかも。


 そうこうしているうちに厩舎に着くいた。


「今日はもう休むだけだから、明日の朝までここで待機」

「「はーい」」


 ゆっくり休んでくれ。


 今日はいろいろありすぎたからな。ここまでの穏やかな旅路に比べて今日は濃厚すぎた。


「お二人とも今日はお疲れ様でした」

「お疲れ」

「そっちもなー」

「たくさん寝なよー」


 俺とフィオが別れの言葉を言うと、お嬢とベクトルは組合長と共に今日休むはずの部屋に向かった。


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