相談
ヒュドラの討伐の協力を願うレックスは続け様にお嬢へ訴えかける。
「それにこのままではこのサンセンタは保たないんだ」
「どういうこと?」
保たないって言ってもサンセンタは今のところ無事に見える。
ヒュドラに侵入された後もないから中にいるぶんには安全なんじゃないのか?
「君たちなら知っているかもしれないが、ここサンセンタは主に貿易で成り立っているんだ」
「なので、ヒュドラによって貿易路が絶たれている現在の状況は非常に不味いんです」
「特に食料は非常にまずい状況だ。今政府はヒュドラによって食糧の確保が困難になった全ての住民に食糧を配っている。しかし、それも長くは続かない。そう遠くないうちに食糧の備蓄も尽きる」
「そりゃ大変だ」
サンセンタが貿易で成り立ってるのは知らなかったが、なかなかにまずい状況なのは今わかった。
そりゃ、災害時のためにいくら蓄えていたって、全ての住民に配っていたらすぐに底をつく。なにせこの発展ぶりだからな。人口は凄まじいことになっているはずだ。
「もちろん、他の都市から応援は来るのですが……」
「返り討ちに合うと」
「はい……」
俺たちがそうだったようにサンセンタに近づくと高確率でヒュドラに襲われるのか。
まぁ、そのためにヒュドラはサンセンタの周りに陣取っているんだから当然といえば当然か。食事を取ろうとしているのにいきなり喧嘩を売られるようなものだ。そんな不届きな人間を逃がすことはない。
「どうにかして食料の補給をしようとかけてつけくださる方々はいらっしゃるのですが……」
「大人数だとヒュドラに見つかって食われるんですね」
「ああ」
まぁ、ヒュドラは冬眠あけで腹を空かせてるらしいしな。
自分で探さなくても餌が勝手に寄って来るなら、大喜びで平らげるだろう。しかも大人数な上にご丁寧に他の食糧までついているとなると格好の餌食と言えなくもない。
「じゃあ、食料の供給があっても少しずつか」
「ええ」
そりゃ、キツいな。
ヒュドラは意図してやってないはずだが、これではまるで兵糧攻めだ。しかも相手は人間じゃないから降伏したところで引いてくれるわけじゃない。爬虫類に話が通じるはずがないからな。
「なので、いちはやくヒュドラを討伐しなければなりません」
「だから、協力しろと?」
「そうだ」
そう言いたくもなるか。
完全に悪循環になってるからな。食糧を確保するために人間を呼べばヒュドラに食われる。そして、ヒュドラはより多くの人間を食うためにサンセンタの周りに留まる。しかし、食糧の確保はしなければならないのでまた人間を呼ばなければならない。そして、また食われる。
どうにかして元凶のヒュドラを断たなければいけない。
「本当は俺たちだけでどうにかするべき問題だってことはわかってる。けど、どうにもならなかった。力が足りないんだ……」
「そう」
「このままだとそう遠くないうちに飢えで倒れる人たちが出てきてしまう。それに被害にあった人たちが報われない。俺たちはサンセンタの人たちのためにあのヒュドラをなんとしても討伐しなきゃいけないんだ」
それはわかった。
どっちみちヒュドラを討伐しないことには俺たちもここを安全に出発できないからな。そう考えると無関係とも言えない。
「お願いだ。君たちの力を貸してほしい」
「どうかお願いします」
「頼む」
「お願いします」
そう言って、向いの四人は頭を下げた。
状況もわかったしあまり余裕がないこともわかった。放置していても状況が好転することもきっとないだろう。ならば、レックスたちに手を貸してさっさとヒュドラを討伐する方が手っ取り早い。
とはいえ、決めるのは我らがお嬢だ。
流石に断ることはないと思うが、どう話がまとまるかはわからない。
「まぁ、力を貸すのは構わないわ」
「ありが」
「でも、いくつか聞きたいことがあるの」
ほう、食い気味で聞くほどのことなのか。
まぁ、レックスも気が早いな。
お嬢は構わないとは言ったが、協力するとまでは言ってないからな。ヒュドラの討伐という大きな仕事なんだから、もっとゆっくり詰めた方がいい。急いては事を仕損じるって言うしな。
「聞きたいこと?」
「ええ、大切なことよ」
お嬢が大切というからには本当に大切なことなんだろうな。
俺にはよくわからないがそれは別に構わない。なにせ従魔だからな。フィオなんて話が始まってからずっとぼうっとしてる。あれは絶対に話を聞いてない。断言できるね。
対するレックスたちは姿勢を正してお嬢の質問に備える。内容によっては協力の話が流れるとでも思っているのかもしれない。
普通に考えてそんなことにはならないと思うが、お願いする方からすればハラハラするんだろう。
「わかった。俺が答えられることならなんでも答える」
「なら、聞くけど報酬はどうなっているの?」




