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一段落

 俺たちは城門の中に入り個室へ通された。


 そして、ケラーデさんに勧められて席についた。


「早速だが名前と職業を教えてほしい」

「二級冒険者のディジーです」

「同じく二級冒険者のベクトルです」

「……」


 うん? なんだ?


 ケラーデさんが黙って見つめてくる。


「え? 俺たちも?」

「もちろん」


 今まで従魔かどうか聞かれることはあった。けど、名前まで聞かれたのは今回が初めてだ。


 新鮮な気分だ。


「えっと、ディジーの従魔をやってるポルター・ガイストだ」

「同じく従魔のフィオ・ガイストです」


 ケラーデさんは書類に俺たちの名前を書いていく。


 そうして書き終えると姿勢を正してまたこちらを見つめる。


「ディジー、ベクトル、ポルター・ガイスト、フィオ・ガイストの四名には教国騎士団を代表して改めて礼を言う」

「さっきも言いましたが、当然のことをしたまでです」


 そう言ってケラーデさんは手で丸い輪を作り頭を下げた。


 それをうけてお嬢が改めて同じことを言う。


 ここまでお礼を繰り返すのはお国柄なのかね。それともケラーデさんの性格の問題なのか。


 まぁ、どっちでもいいか。嫌な気分になるわけじゃないしな。


「そして、冒険者とはいえ一般人の君たちを戦闘に巻き込んでしまったことを謝罪する」

「お気になさらず」

「そう言ってくれると助かる」


 あれは運が悪かった。流石に仕方ないとしか言いようがない。


「しかし、どうしてヒュドラが?」

「いつも城門の前に陣取ってるわけないよな?」


 そこが一番気になるところだ。首都の前にヒュドラが陣取っているのはおかしい。


 ヒュドラが熱心なファンみたく出待ちしてるわけないしな。出待ちにしては凶暴すぎるし。


「ああ、君の言う通りだ。ヒュドラの縄張りは本来ならここから東にあるバイス塩湖周辺だからな」

「なら、どうしてここに?」

「どうやらヒュドラはここに人……いや、食料があることを覚えてしまったらしい」


 ケラーデさんはとても苦々しそうな顔でそう言った。


 本当に悔しそうなその表情は事態の深刻さを物語っていた。


「覚えた?」

「そうだ。この時期はヒュドラが冬眠から目覚める時期なんだ。いつもはバイス塩湖に生息する生物で腹を満たすはずなんだが、今年は人を見つけてしまった。どうやら塩の採取に来ていた商人が不幸にもヒュドラに見つかり食われてしまったらしい」

「そんな時期によく行ったな」


 普通に考えて危ないだろ。


 わざわざお腹を空かせている猛獣に近づくとか考えられない。カモネギ願望でもあったのか。


「全くだ……。この時期のバイス塩湖に近づくことは禁止されている。その商人は抜け駆けしたかったのかもしれない」

「欲に眩んだんだな」


 命あってのものだねって言うのにな。それで死んでるようじゃせわないわ。


「更に商人は一人だけではなく連れがいたらしい。しかも、その連れがヒュドラに追われながらサンセンタまで逃げてきた。そこからは悲惨なものだ。城門の前にいた人は腹を空かせたヒュドラに食われてしまった。人も馬も全てな……。そして、ヒュドラはサンセンタの近くにいれば簡単に人が食えると覚えてしまったというわけだ」

「それは大変だね」

「ああ……」


 ヒュドラってあの見た目で熊みたいな考え方すんだな。


 野生動物に詳しくないが、こう近くで問題を起こされるとたまったもんじゃない。落ち着いて旅もできやしない。


「ヒュドラもバイス塩湖にとって必要な魔物だ。今まで適切な距離を維持して刺激しないようにしていた。しかし、こうなってしまっては……」

「殺すしかなさそうですね」

「ああ」


 生態系の概念を持っていたのは意外だったな。


 まぁ、今まで上手くやって来たんだから知っていてもおかしくはないか。それに知っていてもどうしてもないことが今起きてる。知識云々は関係ない。


「とはいえ、今回は本当に助かった。なにせヒュドラの撃退は今回が初だからな」

「そうなのか?」


 俺たちって実は凄いことをしてたのか?


 だとしたら鼻高々ですねぇ。


「先程のレックスがサンセンタに戻って来るまで被害は甚大なものだった。それにレックスが戻って来てからも、死傷者こそ出ていないものの負傷者は出ていたからな」

「そうと知っていれば、もう少しやり方を変えるべきでした」

「そうですね」


 鼻高々なんて考えてる場合じゃなかったか。


 そこまで手こずっているいるなら、もうちょっと削るべきだったかな。いっそのこと仕留めても良かったな。


 指示がどうとか考えてる場合じゃなかったかもしれない。


「なにを言う、今回は怪我人すら出なかったんだ。感謝してもしきれない」

「そうですか」


 俺たちが少し考え込んで黙っていると、ケラーデさんが心配いらないと言わんばかりに励ましてくれた。


 まぁ、当事者がそう言うなら俺たち部外者はこれ以上考えても仕方ない。あまり無遠慮に首を突っ込むわけにはいかないからな。


「とにかく話は以上だ。検問と言いつつ長い時間拘束してしまって悪かった。それに最後は殆ど愚痴を言っていただけだった。すまないね」

「いえ」


 愚痴くらいはな。真面目そうだからきっと溜め込んでいたんだろうし。


 たまには俺みたいにいい加減なことを言って発散した方が良いと思う。


「あとは自由にしてくれて構わない」

「わかりました」

「ご協力に感謝する。そして、ようこそサンセンタへ」


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