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確認

ポイントを入れてくださった方ありがとうございます!

そして、読んでくださった方もありがとうございます!

 俺の新たな名前がポルター・ガイストに決定した。


 フィオとの温度差は多少あったが、名付けは概ね順調に決まった。


 ただし、俺は空気を読む感覚を忘れていた。まだブランクが埋まってない。


「お互いの自己紹介は終わったけど、次はどうしよっか?」

「……先に体の調子でも確認しとくか」

「体の調子?」

「お互いに気になるところが多すぎる。だから、先に処理してすっきりしといた方が話も早いはずだ」

「まぁ、気になるところは確かに多いね」


 俺は黒い霧か靄で、フィオは真っ白な体。


 まだ俺たちは自分の体について全く理解できていない。なら、最低限の共有はしておくべきだ。


 あれだ、報連相だ。


「それにしても、変な体だね」

「俺もそう思う」


 不定形の体で宙に浮く。


 さっきフィオに悪霊と言われたが、それもおそらく間違っている。


 そこで、俺は床に触れて削ってみる。すると床は大きな音を立てて削れた。


「……凄いね。それってどうやってるの?」

「触れると勝手に削れるんだ。やり方も止め方もわからない」

「そっか」


 一人ならともかく、フィオがいる今は危険だ。


 不用意に触れて傷つけてしまったら一大事だ。


 今のところ削る時に抵抗は感じるが、なにかに触れた感覚はない。


 つまり、触覚がない。なので、無意識に触れて傷つけてしまわないように、フィオと一定の距離は保つべきだな。


「そもそも、これを体と言っていいのか……」

「とりあえず、自分で動かせるなら体でいいんじゃないかな?」


 実際、さっきも床を削るために動かせたしな。


 別に動かせたのはさっきのだけじゃない。練習で全身をくねくね動かしまくった。


「一応、全身問題なく動かせる」

「すっごいくねくね動いてるね。でも、これで人じゃないことは決定だね」


 まぁ、動かす前から人じゃないことは明白だったけどな。


 というか、フィオがすごい顔してる。俺がくねくね動かすと気持ち悪そうな顔と興味津々で仕方ないといった顔が混ざり合った不思議な顔だ。


 俺は深海魚的な扱いなのか?


 しばらく、くねくねしながら話すか。リアクションが面白い。


「そうだな、くねくね動く人は珍しいどころの騒ぎじゃないだろうしな」

「で、でも、か、体の形をじ、自由に変えられるのは、ちょ、ちょっと楽しそうだね……ふふっ」


 やめるか。


 フィオが笑いを堪えながら話すから聞き取りにくい。


 というか、そんなに面白いかね。


 腕をイメージすると最低でも二本は腕っぽいものを出せるから、それをくねくね動かしながら話してただけなんだが。


「そんなに面白いか?」

「だって、真面目そうな話なのに、くねくね踊ってるみたいだもん。声と動きが合ってないにもほどがあるよ」

「そういうもんか」

「それだけ巫山戯られるなら、これからも大丈夫そうだね」


 確かにこれだけ余裕があれば大丈夫そうだな。


 辛気臭くなったら、フィオを笑わして空気を和ませるか。


「次はフィオの番だな」

「こっちは見ての通り真っ白」


 フィオは棺に腰掛けたまま腕を広げる。


 本人の言う通り全てが白い。


 邪魔にならない程度に整えられた短い髪も、人懐っこい性格を隠そうともしないその瞳も不自然な白さだ。


 また、その愛らしい相貌からは予想もできない引き締まった体は、人の機能美を限界まで突き詰めた素晴らしいものではあるが、やはり髪と同様に白い。さらに彼女が身に纏う衣服や金属部分を除く籠手や脛当のような装備も白く染められていた。


 その白さはある意味では、彼女の美しさを際立たせているのかもしれない。しかし、美しさと引き換えに彼女の人らしさを奪っていることは明白であった。


「そして、見ての通り生きてる人間ではいないな」

「顔色がよくないどころの騒ぎじゃないもんね」


 フィオは困り顔を浮かべて、腕を元の位置に戻した。


 やはり死んでいるという事実はフィオの明るさを持ってしてもどうにもならないようだ。


「因みに脈はあるのか?」


 俺がそう尋ねると、フィオは首に手を当てて確かめる。


「なさそうかな」

「きっちり人間じゃないな」

「だね」


 結果は予想通り。誤魔化したところで意味はない。


 俺たちの場合はさっさと受け入れて話のネタにした方が、遥かに良い気がする。


 そうしないと立ち直れなさそうだからな。


「フィオは見た目がほとんど人間だけど、なにか他にあるか?」

「うーん、全身になんとも言えない違和感があるかな?」


 そう言いながらフィオは棺から立ち上がり、肩を回したり足踏みをして体の調子を確かめる。


 俺から見ても変なところはなさそうだ。


 けど、なにかあるんだろうな。きっと。


「なんか改造でもされてるんだろうな」

「うら若き乙女の体を改造するなんて、最低」


 こんな冗談を言えるうちはお互い当分大丈夫だな。


「全くだな。たとえ、お天道様が許しても俺たちは許さん」

「初めて聞く言いまわしだけど、なんかお爺ちゃんくさいね」


 なんて失礼な!


 注意しておくべきか。


「俺はまだ二十九だ」

「私は二十五だから、ポルターって年上だったんだね」


 年齢は聞いてなかったな。


 あんまり意味がないから忘れていた。


「まぁ、俺たちは今さっき生まれたっぽいけどな」

「ばぶーだね」

「ああ、ばぶーだ」


 二十九と二十五が『ばぶー』はギリギリアウトだ。


 酒が入っていても滑ってるな。


「確認はもういいかな?」

「そうだな」


 これ以上は追々でいいだろ。


 飽きたし。


「この館をうろうろしてたら、なにか見つかるかもだし」

「全くもってその通りだな」

「いざ、探検へ!」


 そう言って、フィオは俺が出てきた扉とは別の扉に手をかけた。


「……」

「ドアノブがぺちゃんこだな」


 フィオが手をかけた扉のドアノブが見事なまでに握り潰されている。


 おそらく生前はこんなことなかったんだろう。表情で一目瞭然だ。


「本当に最低」


 早速なにか見つかった。


 フィオの力はエグい。


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