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事情聴取

 俺たちはひとまず青年の後に続きサンセンタに向かった。


 青年たちはまだどこか戸惑っているようだが俺たちには関係ない。無事にお嬢からの指示通りに動けたからな。負傷者もいないし物的損失もない。完璧な仕事と言っていいだろう。


「二人ともお疲れ様」

「お疲れ様です」


 俺たちがサンセンタに近づくとお嬢とベクトルが北門で待っていてくれていた。そして、労いの言葉までかけてくれる。有り難いね。


 気分はプチ凱旋だよ。紙吹雪とかないですか?


「そっちも無事でなにより」

「上手くいって良かったね」

「そうね」


 俺たちもお嬢たちの無事を喜ぶ。こうして城門で合流できたことがなにより上手くいった証拠だ。俺たちは着いて早々ヒュドラに襲われるというハプニングを乗り越えたのだ。みんなよく頑張りました!


「とりあえず、汚いから」

「ちょっ!」

「ドンマイ」


 そんな思いをよそにお嬢はフィオにスイカくらいの大きさの水球をぶちまける。


 もちろん、意味はわかる。今フィオはヒュドラの血でとても汚れている。なので、その汚れを落とすために水球をぶつけた。わかるよ。


 でも、頭からいきなりそこそこ冷たい水をぶちまけるのは地味に酷い。唐突なアイスバケツチャレンジはただの罰ゲームだ。やめてやれ。


 とはいえ、汚れているのは事実なので大きく文句を言えない従魔組です。せめてもの救いは水も滴るいい女になっている点とベクトルがそっと差し出してくれた布だけ。荷物は置きっぱなしなので拭くものはそれしかない。


 そんないつも通りのやり取りをしていると青年が近づいて来る。青年の様子は先程とは違ってかなり落ち着いているみたいだ。俺たちの喜劇めいた日常のおかげかそれとも時間のおかげか。是非とも後者であってほしい。みっともないから。


「俺はレックスという。協力ありがとう。とても助かった」

「私はディジーと言います。それに、緊急のことでしたので当然です」


 お嬢の敬語だ。久しぶりに聞いたな。


「それでも助かったのは事実だ。ありがとう」

「なら、その言葉は彼らに」

「それもそうだな」


 そう言うと黒髪イケメンのレックスがこっち向いた。


 なんか大雑把に格好いいな。鮮やかな青に金の縁取りが施されている鎧も似合っている。


 向かい合うは亡霊のような黒い靄とビチョビチョの白い女。


 凄い絵面だ。二度見三度見は確実な絵面だ。


 しかし、ここでベクトルが動く。ベクトルはローブを覆い被せるようにして俺にかけてくれた。どうよ、うちのイケメンも負けてないだろう。


 これで白い亡霊と白いビチョビチョ女の完成だよ。


「君たちもありがとう。確か……」

「ポルター・ガイストだ」

「フィオ・ガイストだよ」

「ポルター・ガイストとフィオ・ガイストに感謝を」


 そう言うとレックスは手で丸い輪を作り頭を下げた。続いて後ろの三人も同じ仕草をしていた。これはあれか。サンルーブ教の仕草なんだろうな。お手々の皺と皺を合わせるみたいなことなのかな。


「どういたしまして」

「お役に立てて良かったよ」


 俺たちはお嬢の指示にしたがっただけだしな。


 けど、感謝は受け取る。変に謙遜したら相手に悪い。ここで日本人特有のヘコヘコ合戦しても仕方ないし。


「本当はもう少し話をしたいんだが、俺は報告があるから後のことはそこのケラーデに任せる」

「任せてくれ」


 どうやらレックスは忙しいらしい。


 まぁ、身なりも良いからそれ相応の立場なんだろうな。だから、お嬢も珍しく敬語で話していたんだな。たぶん。


「では失礼する」

「ありがとうございました」

「感謝します」


 そうしてレックスに続いてルーフェちゃんとエンリちゃんも去っていった。最後の礼だけ少し雑だったが、流石にもう慣れたよ。


 残ったケラーデさんという人はどうやら騎士さんのことらしい。ケラーデさんはこちらに一歩近づいて話を続ける。


「私は教国騎士団所属のケラーデという者だ。検問も兼ねて話を聞きたい。付いて来てもらえるか?」


 ケラーデさんが兜を外すと赤みかがった茶髪が見えた。そして、予想通り女性だった。雰囲気は仕事ができそうなキリッとした感じだ。その凛々しさを俺とフィオに少し分けて頂きたいくらいキリッとしていると言えばわかりやすいだろう。


「わかりました」


 とまあ、そんなこんなで俺たちは検問を受けるらしい。


 北門の途中に入り口らしきものがあるので、そこから中へ入り話を聞かれるんだろう。


 随分前にサンドで似たような目にあったが今回はわけが違う。丁寧に整備された城門はテーマパークに入って行くようなワクワク感がある。なんか毎回ワクワクしている気がしなくもないが気にしない。


 それに今回はいつもと違う要素がもうひとつある。


「これってあれか?」

「なに?」

「任意同行ってやつか?」

「よくわからないけど、たぶんそうじゃないかな」


 たぶんそうなのか。


 任意同行なんてテレビでしか聞いたことがない。だから、どうしてもワクワクしてしまう。正確にはドキドキかもしれないが、別にどっちでもいい。


「初体験だ」

「良かったね」

「さっさと来なさい」


 そんなことを入り口の前で話していると普通に怒られた。


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