追加
「はぁぁぁあ!」
青と金の鎧を纏った青年が雄叫びをあげてヒュドラへ突撃する。
するとヒュドラは四つの頭を青年の方へ向けた。そして、そのまま青年を食い殺そうと噛みつき攻撃をくり出した。しかし、青年はその攻撃を慣れた様子で躱す。更に突撃の勢いを利用してヒュドラの首の一つ斬り落とした。
凄いし格好いいけど、誰だ?
「君たちはポルターとフィオで間違いないか!」
「ああ」
「うん」
今度は青年の後ろを走っていた騎士らしい騎士さんが話し掛けてきた。兜を被っているから顔は見えないけど、声からして女性っぽい。
しかし、どういう流れなんだ。
「君たちの主人から話は聞いた! 協力してほしい!」
「なるほど、わかった」
「いいよ」
「感謝する!」
どうやらお嬢からの援軍らしい。
ヒュドラを弱らせてお嬢たちと合流しようと思っていたが、そういうわけにもいかなくなった。きっとお嬢はなにかに巻き込まれたんだな。じゃないと指示の急な変更なんてしない。
まぁ、細かいことは後で聞くとして今は騎士さんの言うことに従って協力した方が良さそうだな。
騎士さんは確認を終えると颯爽とヒュドラに駆け出した。そして、青年の真反対に位置取りヒュドラの意識を一点に集中しないようにしている。
「じゃあ、前は任せた」
「うん!」
俺は周りに人間がいると誤爆が怖くて自由に動けない。そこで、フィオが率先して突っ込む。フィオなら間違って味方を攻撃するなんてことはないからな。
そうこうしているうちに二人の援軍は息を合わせて、ヒュドラの首を一つ落とした。なんと言うか、派手さには欠けるが連携が取れている。おそらくヒュドラを相手にするのは初めてではないんだろう。これなら安心して任せられる。
フィオもそう思ったのか二人の邪魔にならないようにヒュドラへの攻撃を再開する。矛先は既に目が潰れている頭。
先程から目立たないように他の頭に隠れてじっとしている。たぶん目の再生をしているんだろう。潰したとはいえ抉りとったわけではないからな。フィオも再生していることに気づいたから狙うんだろう。フィオは目が見えていない頭へ跳びかかりヒュドラの顎に膝蹴りをかます。加えて両手を組みヒュドラの頭上へアームハンマーを叩き込んだ。もはやオーバーキルだと思うが、フィオが二人を下がらせたので俺が追い討ちをかける。三人の頭上を素早く通り過ぎ、少し形が変わったヒュドラの頭へ接近する。そして、そのままヒュドラの頭を鞭のように伸ばした腕で削り落とす。
これでヒュドラの頭は七つ。内一つは足の補助なので実質六つ。
「いい感じだな」
「そうだね」
「撃ちます!」
俺とフィオが現状に満足していると後ろから声と共に火の弾が飛んできた。
おそらく魔術であろう火の弾はヒュドラの頭の一つへ命中したが効果はいまひとつらしい。
「また誰か来たな」
「後衛かな?」
後ろには杖を構えた少女が二人。一人は青と白を基調とした聖職者っぽい衣装の少女。もう一人は紫のローブを着た如何にも魔術師といった少女だった。
「それっぽいのが来たな」
「そうだね」
見た感じだと聖職者っぽい少女が回復役で、魔術師っぽい少女が後ろから魔術で攻撃する役だな。
ゲームっぽい役回りで非常にわかりやすい。
「遅れました!」
「問題ない!」
紫の子が青年に謝罪の声をかけると青年はヒュドラの方へ目線を向けたまま返事をした。二人の少女も青年の仲間なんだろうな。声ですぐに誰かわかるので顔を見て確認する必要もないといった感じだ。
「状況は悪くない! このまま押し返す!」
青年は三人に向けて勇気づけるように声をかけた。それはおそらく様々な意味があるのだろう。状況の共有、今後の方針、士気の向上といった戦闘で欠かすことのできないものが。
たぶん。そうだと思う。さっきから全て想像だけど間違ってはいないはず。
「押し返すそうだね」
「みたいだな」
指示は直接もらってないが従っておこう。ここは空気を読むところだ。
変に質問をして空気を乱すと折角の声掛けが台無しになるからな。
お嬢たちと戦ってるなら茶化したりするが初対面だし。
流石に初対面でふざけたりしたら引かれそうだ。それはちょっとな。
これから首都でお世話になるんだから好印象のままでいたい。
「二人はそのまま自由に動いてくれ」
「わかった」
「うん」
ぐちぐち考える必要なかったな。普通に指示をくれた。
というか、緊急事態とはいえ人間にしては珍しくフレンドリーだな。
もっと怖がられたりするのが普通の反応だと思う。いくらお嬢から説明をうけていても不気味だろうに。最低でも警戒はしそうだがそれもない。
それどころか自由にしていいとまで言った。
もう普通に良い人間じゃん。こっちが先に好印象もっちゃいました。
「助かる」
「よろしくお願いします」
「足を引っ張らないでくださいね」
だいたい良い人間だとわかったがなんか混ざってたな。
お口の方がお悪い方がいましたよ。
しかしまあ。
「個性豊かだな」
「だね」




