待遇
「あそこまで邪険にされるとは」
「仕方ないわ」
「そうですね」
俺たちは近くに村があると聞いて、立ち寄ってみることにした。
しかし、村には泊めてもらえなかった。
それどころか中に入れてくれもしなかった。
「やっぱり私たちの見た目が駄目なのかな……」
「まぁなぁ」
俺たち従魔組はとにかく目立つ。
それにシチュエーションも悪かった。
曇り空に亡霊のような俺と不自然に真っ白なフィオが突っ立ってるわけだからな。そりゃ、怖い。
もちろん、村人との話し合いはお嬢とベクトルがしていた。
だから、直接俺たちは村人と接してはいない。
一応俺たちも気を使ったわけだ。
とはいえ、結果はさっきの通り。
「全員の見た目が駄目ね」
「お嬢たちもか?」
「もちろんです」
ベクトルが苦笑いを浮かべて頷いた。
別に人間組の二人はそこまで駄目だと思わないけど。
「なにせ見ず知らずの者が武器まで待っているわけですから」
「そんな奴等を普通は村に入れないわ」
「そういうものなのか?」
「そういうものなの」
「そっか」
なんとなく予想はしていたが、やはりなかなか厳しそうな世界だな。
排他的というよりは自衛の意識が強いんだろう。
そう考えると当然の反応か。
武器を携帯している二人組みと後ろに控える化け物二匹。
恐ろしいな。
というか、どの世界でもそんな奴等は恐ろしいな。
玄関開けてそんな奴等が居たら俺も通報する。
尚更当たり前の反応だったな。
「でも、やっぱり困ることもあるだろ?」
「そうね。私たちは水に困ることはないし、貴方たちのおかげで安心して夜も眠れるけれど他の冒険者は困るでしょうね」
水はお嬢が魔術で生み出せるし、夜間の見張りは睡眠が必要ない俺たち従魔組がすればいい。
しかし、他の冒険者もしくは旅人なんかはそうもいかない。
水なんてそうそう見つかるものではない。都合よく川なんて見つからないだろうし湖も同じだ。
夜間の見張りを数人で交代していても疲労はたまるはず。
そうなると最低限の安全が確保されている村は理想的だ。
井戸もあるだろうし運が良ければ寝床も用意してくれるかもしれない。
村が利用できなければさぞかし大変だろう。
「そういう場合はわかりやすくお金を払うしかありませんね」
「なるほどなぁ」
確かにわかりやすいな。
金銭のやり取りがあった方が安心できる。
初対面なら尚更そうだろう。
いきなりやって来てタダで泊めろと言う奴よりは、お金を払うので泊めてくださいと言う奴の方がまだマシだ。
「僕たちも流石に食糧はどうにもできないので、村の人から買い取りましたしね」
「それでも私たちは他と比べると余裕のある方よ」
「そう言われるとそんな気がしてきたね」
「そうだな」
俺たちは四人で動いているが実質二人だしな。
かなり安上がりなはずだ。
水も食糧も睡眠も滅多に困らない。
村を利用できなくてもそこまで大変じゃない。
もちろん、快く迎え入れてくれる村があったならこれ以上ないくらい感謝する。が、それこそ滅多にないだろうな。
「それに村に泊まれたとしてもボロ屋よ」
「そうですね」
「そっか」
そりゃ、ホテルや旅館じゃないもんな。
村で誰も使わなくなったボロ屋しか泊めていい場所はないか。
村の恩人でもないしな。
おそらく村の依頼を受けた冒険者なら、多少良い待遇を受けるんだろうな。知らんけど。
「しかも、貴方たちはきっと良くて豚小屋よ」
「それは嫌だなぁ」
「そうだなぁ」
豚は意外と綺麗好きな動物と聞いたことがあるけど、一緒に一晩過ごしたいとは思えない。
それに豚小屋に入れてもらえることはかなり良い待遇だと思う。なにせ豚は村の人にとっては大切な家畜だからな。
しかしなぁ。
いくら大切な家畜の近くとはいえなぁ。
「結果的に良かったのかもなぁ」
「そうだねぇ」
「ままならないもんだな」
なんともとも言えない結末だ。
「今日はここにしましょうか」
「よろしく」
そう言ってベクトルは寝床の準備と食事の用意を始めた。
場所は村からかなり離れた平原だ。しかし、村が遠くにまだ見える。
それに日が暮れるまでまだしばらくあるはず。もう少し先に進んでもいいと思うんだが……。
「今日はもういいのか?」
「ええ」
「まだ進めるよね?」
「そうね」
フィオも同じことを考えたらしい。
しかし、お嬢の答えは変わらない。
「ここなら村になにかあっても、すぐに駆けつけることができますからね」
「得体のしれないものがどこか見えないところへ行くより、まだ目に見える範囲でじっとしてくれてる方が安心できるでしょうしね」
そういうもんかね。
まぁ、どこへ行ったのか心配し続けるよりは遠くでじっとしてる方が確かに安心できるかもな。
それにこの距離ならすぐに駆けつけることも可能だろう。
とはいえ。
「お優しいことで」
「まあね」
そうして、俺たちはいつもより少し早めに休息をとり何事もなく朝を迎えた。




