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いつもの食事

「今日はここまでね」

「わかりました」


 お嬢ことディジーはそう言って足を止めた。


 それを聞いたベクトルも慣れた手つきで寝床の準備と食事の用意を済ませていく。


 サンドを出発してから毎日これの繰り返し。


 もちろん、馬車があればもっと移動のペースは上がる。


 しかし、俺の見た目が邪魔をする。


 俺の見た目は黒い霧または塵の集合体。かろうじて、白い不思議なローブを着ているおかげで人の形に見えなくもない。けど、やはりお世辞にも人とは言えない。


 だから、馬車を売ってもらえない。


 一度売ってもらえそうなことがあったが、俺が近づくと馬が怖がって暴れ出したので結局買えなかった。


 やはり特別な訓練を受けた馬じゃないと駄目らしい。


 なので、現在も出発時と同じようにフィオが荷物を担いで進んでいる。


 荷物の量は相変わらず狂ったままだが、俺の相方のフィオも同じ人外だから問題ない。


 まぁ、人外とはいえ見た目はほとんど人間だ。おかしな所をあげるなら、全身ペンキを被ったように真っ白なことくらいだ。


 あとは力が強かったりするが今は別にどうでもいい。


 それで移動のペースは上がらないからな。


 俺のせいと言えばそうなんだけど、みんな気にするなと言ってくれる。


 実際、俺も気にしてない。


 好きでこんな姿になったわけじゃない。だから、罪悪感とかはない。


 しかし、流石に飽きてきた。


 毎日トコトコ歩いては寝るの繰り返し。


 景色も同じ、飯も同じ。


 人外組の俺たちは食事の必要はないが、同じ飯を見続けるのには流石に飽きた。


 今日の飯もお粥みたいな携帯食料だ。


「相変わらず不味そうだな」

「わざわざ言わなくていいのに」

「別に味なんて気にしてないわ」


 そう言ったお嬢はドロドロの食べ物を口に運ぶ。


 お嬢とベクトルは毎日こればかり食べている。


 好きなのか?


「こんな見た目ですが体には良いんですよ」

「本当か?」

「はい。しばらくこれだけを食べていた時期もありましたから」


 マジで好物なのか?


 こんな見た目とか味は気にしてないってことだから、良い印象は持ってなさそうだな。


 ということは……。


「ケチったのか?」

「違うわよ。その時は行き倒れに食料を分けてあげたの」

「そうなのか」

「優しいね」


 旅をしていれば、そういうこともあるのか。


 それに、その時は分け与えられるだけマシな食料を持ってたってことか。


 行き倒れにドロドロ食わすのもなんかな。


「弱っている方にこれはあまりお勧めできなかったので、その時は比較的食べやすい物を提供しました。それでも、僕たちは飢えなかったのでそれだけこれには滋養があるということです」

「なら、凄いな」

「昔はなかったなぁ」


 時代が違うからな。


 フィオはリアル浦島太郎状態だから、このドロドロを知らないらしい。


 聞いた感じでは完全栄養食っぽいから最近の発明なのかもな。


「しかし、ポルターさんの言う通りで味はよくありません」

「やっぱりな」

「そこで、これを使います」


 ドロドロをかき混ぜていたベクトルは小瓶を取り出した。


 ベクトルの荷物から取り出したからたぶん私物だろう。


 しかも、珍しく自慢気だ。


「なにそれ」

「これは我が家秘伝の香辛料です」

「我が家?」

「ベクトルの実家は宿屋だったの」


 なるほどな。


 そういうものがあるなら、飽きはしのげそうだ。


「宿屋で使ってた調味料ってことか」

「はい」


 しかし、初めて見たな。


 今までの食事で使っているところを見たことがない。


 貴重な物なのかもしれないな。


「作り方も簡単で素材も手軽に用意できるので、なにかと便利なんです」

「それは良いな」


 それは本当に良いと思う。


 手の込んだことをしなくても美味くなるなら最高だろう。


 それに高価な物でもないときた。


 はっきり言って理想的だと思う。


「毎回は使えないけどね」

「そうですね」


 そこだ。


 そこが気になっていた。


 このドロドロが安い香辛料一つで美味くなるなら、毎回使えば良い。


 わざわざ不味い物を食い続ける必要はない。


「なんでだ?」

「飽きるの」


 ……確かにな。


 そう言われると確かにそうだ。


 いくら美味くなるといっても、毎回美味くなっていたら有り難みがなくなる。


 大好物もたまに食うから良いんだ。


「香辛料が切れると悲惨ですからね」

「そっか」


 旅は長いもんな。


 香辛料が切れて味を変えられなくなったら大変だ。


 そこからは不味いドロドロを食い続けることになる。


 地味に辛そう。


「本格的な料理ができるといいんですけど」

「こんな所じゃ無理ね」

「まあな」


 ここは町でも都市でもない。


 多少整備はされているらしいが、素人の俺から見たら道と言えるのかさえわからない。


 切り開かれた森に雑草が生えていない剝き出しの土の道があるだけ。


 料理なんてできるわけがない。


「それにお嬢がいるからな」

「そうだね」

「僕は素晴らしい所だと思いますけどね」

「おやすみ」


 出たよ。


 お嬢の素晴らしい所が。


 食ったらすぐに寝る。牛か。


 もうベクトルが用意した寝床に入っている。


 こんなにせっかちなら料理なんてできない。


 文句言いそうだ。


「ベクトルももの好きだよな」

「愛してますから」


 相変わらず重症だよ。


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