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推薦

「当初の話と随分違うんだが?」

「同じです」


 組合長の綺麗なお顔が歪んでいる。


 今、俺たちは組合長に昨日の廃館での出来事を報告しているところだ。


 そして、今しがた創造主のことを詳細に報告した。


 すると、どうでしょう。組合長の眉間に皺がくっきり。


 組合長、今夜は適度な疲労でぐっすり寝れるぞ。


「私は創造主のことを聞いていないぞ」

「そうですね、言ってませんから。なにより、生きている確証がなかったので」


 そうだよ、確証がなかったんだよ。


 それなら仕方ないよな。


「それでも報告はすべきだろ……」

「そっちが聞いてこなかったんだろ?」

「それに大したことなかったから、別にいいと思うけど」

「……聞いていれば対処の仕方が変わるだろうが」


 対処の仕方を変えても同じだと思うけどな。


 創造主なんて言ってるけど、実物はただの喋る置物だったし。


 増援とか呼んでも意味ないし。


 最終的には俺が少し床を削っただけで終わったし。


「ですが、命令通りに従魔たちの資料は処分して来ました。それに創造主と言っても、所詮は資料の一部です。なにも心配はありません」

「怪我人は出てないし」

「それにかなり早く片付いたもんね」

「なによりもう終わったことだ」

「そうそう」


 そう、終わったことだ。


 今更ぐちぐち言ったって仕方ない。


 創造主は死んだし資料も処分した。


 これで万事解決だ。


 組合長はもっと先のことを考えた方がいい。


 前向きに生きた方が人生楽しいと思うぞ。


「……わかった。もういい。その話は終わりだ。だから、黙れ」

「「はーい」」


 もう終わりか。


 この話題でもうちょっと楽しみたかったんだけどな。


 しかし、組合長に黙れと言われると従うしかない。


 一応ここのトップだからな。


「単刀直入に言わせてもらう。私、つまり冒険者組合サンド支部長ドライ・ノースルートは二級冒険者ディジーを一級に推薦する。先に言っておくが、拒否権はない」

「一級に推薦ってなんだ?」

「後で主人に聞きたまえ」


 はいはい、そんなに睨まなくても黙りますよ。


 ちょっと気になったから聞いてみただけだろ。カリカリするなよ。


 あと組合長って正式には支部長なんだな。


 たぶん誰かが長いからって理由で略したんだろう。


 それに少しだけ、忖度の香りがする。嗅覚ないけど。


「……わかりました」

「どうせ国からの推薦はスターテアへ行った時に貰うはずだ。行くんだろう?」

「そのつもりです」


 推薦ってのは国からも貰うものなのか。


 ここの組合からと国からの推薦があると、なにか良いことでも有るのか?


 その割には、お嬢はあんまり嬉しそうじゃないな。


 なんと言うか、嫌そうな顔をしている。


 組合長の顔とそっくりだ。


「気は進まないだろうが、これくらいの恩恵は許してほしいね。副次的な効果とはいえ、君のおかげで少しはここも活気づくだろう。それに、その従魔たちがいる限りいつかは推薦される」

「そうですね。面倒事が早く片付いたと思うことにします」

「賢明な判断だと思うよ」

「ありがとうございます」


 活気づくってことは周りからすると良いことなんだろうな。


 組合長にとっても悪いことではないんだろう。


 けど、お嬢にとっては少なくとも嬉しくはない。面倒事らしいからな。


 二級のお嬢が一級に推薦されるってことは、良いことに聞こえるんだが。


 ……やはり後で詳しく聞いた方がよさそうだな。


「話は以上だ。あとは勝手にどこへでも行くといい」

「もういいのか?」

「……そう言ったはずだが?」


 そんな冷たく当たらなくてもいいだろう。


 俺は組合長のことを気に入ってるんだけどな。


「残りの資料とかはどうするんだ?」

「組合や国で適切な処理をするに決まっているだろう」

「最初からそうすりゃよかったんじゃないのか?」

「だから、あまり人の目に……。いや、君たちには関係ない」

「ひどーい」


 どうやら組合長は俺たちのことを好きではないらしい。


 さっきから態度が露骨だ。


 いや、さっきからというか前から露骨だけど。


 まぁ、こっちもそれをわかっててやってるわけだが。


「もういいだろ。早く行きたまえ」

「では、失礼しました」

「失礼しました」

「じゃあな」

「またね」


 お嬢もこれ以上は付き合えないと思ったのか席を立った。


 そうなると、自動的にベクトルも後に続くので退室の流れになる。


 これで組合長とはお別れになるのは寂しいが、こればかりは仕方ない。しっかりとお別れの挨拶をしなければ。フィオも再会を願って別れの挨拶している。そこで、俺たちは退室の直前に振り返って組合長を見ると。


 組合長は満面の笑みで。


「ああ、二度と来るな」


 そう言った。


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