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せっかち

「そろそろお別れかな?」

「ええ」


 創造主はお嬢が戻って来たことを確認して残念そうにそう言った。


 対するお嬢はいつも通りの声で答える。


「楽しい時間はあっという間だね」

「これ以上、お前と話すことなんてねぇよ」

「それは残念だ」


 こっちは真逆の気持ちだよ。


 早く死んでほしくてたまらない。


「それはそうと、ちゃんと殺せるの?」


 それは確かに心配だ。


 仮にもこいつは創造主だからな。


 俺とフィオみたいに不死身なら、この馬鹿を殺せない。


 そうなると非常に困る。


「大丈夫。まだ床の魔術陣が光ってるから、魔術陣のどこかを削ればコロッと死ぬはずよ」

「一応聞くけど、どういう理屈なの?」

「簡単に言うと、この術はまだ起動しっぱなしなの。だから、途中で邪魔すると誤作動を起こしてすぐに壊れるってこと」


 セーブ中にコンセント引っこ抜いたらデータが吹っ飛ぶ的なことかね。


 とてもわかりやすい。


 そして、そんなくだらない死に方はこいつにお似合いだ。


「なんとなくわかった」

「因みに少し調べてわかったけど、この魔術が終了するのは何百年も先だったわ」

「こいつは本当に失敗だらけだな」

「耳が痛いね」


 絶対どこかで計算間違えたな。


 終了時間を何百年も先に設定するわけない。


 間抜けめ。


「この都市一つを生贄にしておいてよく言うわ」

「全く足りなかったけどね」


 生贄にしたのか。


 俺とフィオだけじゃあきたらず、この廃都市に元々住んでた人間を丸ごと巻き込んだのか。


 なのに、失敗した。


 こいつは命を無駄にしたんだな。


 別に成功させて効率的に使えばいいってわけじゃない。


 そうじゃない。そういうことじゃない。


 こいつは俺たちをただ捨てたんだ。くだらないことのために奪ったくせに、使うこともなく。


 どこまで傲慢なんだ。


「さっさと殺した方が世のためだな」

「そうだね」


 本当にこれで終わりだ。


 光ってる床の模様を削れば、こいつは死ぬ。


 これで仕事も終わりだ。


「最後に一つ聞きたいことがあるんだ」


 往生際の悪いやつだ。


 もうお喋りの時間は終わりだぞ。


「君はどうして僕のゴーレムを連れているんだい?」

「今は私の従魔だからよ。もうあんたのじゃない」


 勝手に喋り出したと思ったら、そんなことか。


 そんなこと聞いてなにになるんだ。


 それにしれっと『僕の』とか言ってんじゃねぇよ。


 俺たちは初めからお前の物じゃない。


「従魔? それが? ふふっ、君も大胆なことをするね。僕が言うのもなんだけど、世界でも破壊する気かい?」

「一緒にしないで」


 創造主は急に興奮したのか愉しげにそう尋ねた。


 まるで相手を馬鹿にするような態度で。


 お嬢もこの創造主と同じだと思われるのは余程嫌なのか、はっきりと否定した。


 しかし、創造主は止まらない。


「でも、実際それだけの力を持つゴーレムだ。君には過ぎた力だと思うよ? なにより、君がそれを従える理由がない。捨て置けばいいのに。違うかい?」


 創造主はまるで子供に話すように優しげな声で問いかける。


 相手が誰かをよく考えずに。


「……だからこそね」

「うん?」

「あんたみたいにごちゃごちゃ五月蝿いやつを黙らせるために従えてるのよ。過ぎた力? あんたはどこを基準に話しているのかしら。それに随分上から話すのね。自分が賢いとでも思っているの? 馬鹿みたい。いや、実際馬鹿なのね。なら、あんたみたいな馬鹿に合わせて話さないとね。あんたみたいな馬鹿は上から力で押し潰すのが一番簡単。手間をかける必要もない。小細工もそう。邪魔するならパンッと潰して終わり。だから、この二人の力にはとっても感謝しているわ。私の人生にもう邪魔は入らないんだから。あんたみたいなやつは潰して終わり。理解できたかしら? 馬鹿にもわかるように説明したつもりだけど」

「……よくわかったよ」


 我慢の限界だったんだろう。


 ネチネチネチネチ無駄な話を聞かされるのが。


 せっかく早く殺せる方法を見つけたのに、力だのなんだの。


 お嬢にはイライラする時間でしかなかったはずだ。


 せっかちだからな。


「馬鹿にしては、よくできました」

「そん――」

「さっさと死ね」


 しつこい。


 また勝手に喋り出しそうだったから、気にせず床の模様を削ってやった。


 いつまでも付き合ってやる理由はない。


 それにお嬢は我慢の限界なんだ。


 察しろ。


「今のは最高だったわ」

「そりゃ良かった」


 俺が魔術陣を削ったことにより、あたりは真っ暗になった。明かりはダインのおっさんのランタンだけ。


 横たわるドラゴンも今はただの置物というか死体だ。試しに軽く撫でてみたがしっかり削ることができた。


 真っ暗な地下は全てが終わったことを告げるかのように静まり返っていた。


「おい、終わったか?」

「はい」

「なら戻るぞ」

「はい」


 ダインのおっさんたちはそう言うと階段を上がって行く。


 それに続いてお嬢とベクトルも階段を上がって行った。


 俺とフィオも置いて行かれないように続く。


 振り返ったりはしない。映画だと意味ありげに振り返ったりするが、これは別にそういうのじゃない。とくになにもないし。


「お二人とも、お疲れ様です」

「ああ」

「うん」

「本当に、お疲れ様」


 ただ階段を上がって行く最中の声かけは悪くなかった。


 ベクトルの変わりない笑顔は相変わらず不気味なほど爽やかだったし、お嬢も長話に付き合わされて気が立ってること以外はいつもと一緒だった。


 これくらいが丁度いい。


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