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失敗だらけ

 俺たちはお嬢がせっかちな性格であることを忘れていた。


 今さっきまで連携の練習が行われていた理由は、単純に空き時間に丁度良かったからだ。


 そうに違いない。


 ただの移動時間に手頃な魔物が現れたから、ついでに練習を済ませた。そして、これから向かう廃館には黒幕の創造主がいるかもしれないから、念の為に連携の練度も上げておいたと。


 一石三鳥だな。まさにせっかちが好みそうなタイムスケジュールだよ。


 だとしても。だとしてもだ。


「どうして言わないんだよ?!」

「大したことじゃないもの」

「そんなわけないだろ!?」

「そうだよ!」


 大したことだよ?


 俺とフィオをこんな姿にしたマッドな魔術師に会いに行くだよな?


 しかも、『未還の魔術』とかいうヤバい魔術を使った犯罪者に会いに行くんだろ?


 とどめにそいつは何百年も生きてるときた。


 十分大したことだたと思いますけど?!


「大丈夫よ」

「なにがだ?」


 俺とフィオがあたふたしていると、ダインのおっさんが代わりに聞いてくれた。


 元はといえば、お嬢とおっさんたちの会話だったもんな。


 今は俺とフィオの方が話の主役っぽいけど、本来はおっさんたちが主役だ。会話の主導権は主役に戻すべきだよな。


 その間に、俺たちお笑い担当は落ち着きたいと思います。


「考えてみてください。この従魔たちが作られたのは百年単位で昔のことです」

「そうなのか?」

「聞いてませんか……」

「ええ」


 説明してないのか、組合長。


 部下が困ってるぞ。


「なら、そうなんです。にもかかわらず、今もこうして廃都市は残ってます」

「まぁ、そうだな」

「おかしいと思いませんか?」

「なにが?」

「創造主の動きがないことがです」

「そうなの?」

「そうなの」


 今度はお嬢の部下が困ってるぞ。


 もうちょっと説明してくれますかね?


 おたくの部下は全く理解できてないですよ。腕組んで小首を傾げてますよ。


 因みに俺もわかってない。


 お嬢の部下の二人はあまり賢くないんですよ。


「つまり?」

「創造主とやらは貴方たちを作った後、なにかの計画に失敗したの」

「ほう」


 よくわからないが、聞いてますよアピールはしておく。


 フィオもしきりに頷いているが絶対に理解していないはずだ。


 お嬢の従魔はそういう二人なんです。


 許してください。聞く気はあるんです。


「せっかくこんなゴーレムを作ったのに被害はこの廃都市だけ。しかも、作ったゴーレムは使用することもなく廃館の中で放置。作ったのならそれ相応の目的があったはずです。しかし、この何百年間なにも変化らしい変化はない。不自然すぎます。なのに、貴方たちは今になって動き出した。だとすると、もしかしてまだ創造主は死んでないかもしれないと思ったの。貴方たちが生き延びていたようにね。もちろん、あくまで想像だしまだ可能性の話だけど」

「名推理だな」


 結論まで聞いてもよくわからん。


 お嬢のことだから絶対にどこか省略してると思う。


 いかにお嬢の推理が名推理だとしても、周りが理解できていないなら意味がないんだぞ。


「そんなことないわ。なにか大きな計画があるってところまでは、ほとんど書いてあったもの」

「そうなの?」

「そうなの」


 そうなのかー。


 名推理だと思ったら、実はもう答えをがっつり見てたのか。


 そりゃ、はきはき答えるわけだ。


 だって、答えを知ってるんだから。創造主だろうがなんだろうが、手の内を知ってるなら本当に大したことない。


 ジョーカーの位置がわかってるババ抜きくらい簡単だ。


「でも、どこに書いてあったの?」

「貴方たちの製造目的のところに『このゴーレムで世界を破壊する』って書いてあったわ。思いっ切り失敗してるけど」

「そりゃ、失敗してるな」

「まだ世界あるもんね」


 この廃都市は破壊されてると言っても差し支えないが、外は破壊なんてされてない。


 緑もあったし人間も普通に生活していた。世界は無事ですよ。


 安い悪役みたいなこと言ってるから失敗するんだ。


 もっと謙虚でいろよな。


「ベクトルは聞いてたのか?」

「いえ、行けばわかると思ってたので」

「流石だな」


 もう心構えから違うよ。


 さっきから驚きもしないで、ニコニコしてるなぁと思ったらこれだ。


 お嬢に対する信頼もさることながら、発言が凄い。


 行けばわかるって、発想がプロレスラーじゃん。どこかで闘魂でも注入されたのか?


「ですから、失敗している上に百年単位でなにも行動を起こせないような創造主なんて、大したことないと思いますよ?」

「それでも……」

「もういい。勝手にしやがれ、馬鹿馬鹿しい」

「はい。そうします」


 ダインのおっさんが折れた。


 あきらかに資料の処分の仕事から逸脱してるのにな。


 しかも、凄い後出しじゃんけんみたいなことされたのに。


 それでも折れたってことは、本当に馬鹿馬鹿しいと思ったんだろうな。


 今度は俺たちが同情するよ。


 まぁ、こんな道端でこれ以上の議論をしたって無駄だしな。


 お嬢もさっさと先に進んで行く。


「それにしても、どんなポンコツなんだ……」

「どんなにポンコツでも構わないわ。処分するだけよ」


 創造主を処分するのか?


 いや、そりゃ放置はよくないだろうけどさ。


 大丈夫なのかよ。


 というか、お嬢の言い方も気になるな。


「創造主を資料ととらえてるのかよ」

「ええ、とても愉快な資料だと思うから楽しみだわ」


 マジか……。


 無理矢理でも仕事の範疇に収める気だよ。


 あきらかに仕事の範疇に収まってないのに。


 たぶん組合長にも言ってないんだろうな。だから、創造主を資料扱いにしてるんだ。後であれは資料だと言い張るつもりなんだろう。凄い屁理屈だな。


 それに楽しんだ後は創造主を処分する気だし。お嬢もだいぶ酷い。用が済んだら殺すって言ってるんだから。


 お嬢も創造主に負けず劣らずマッドだな。


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