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疑い

「もう十分ね」

「そうですね」


 それから俺たちは出くわす魔物を全て始末した。


 ほとんど前衛の二人で事足りるので、後衛の俺とお嬢はほぼなにもしてない。しかし、それだと練習にならないので、お嬢は前の二人の邪魔になりそうな雑魚ゾンビを片っ端から爆破していた。


 そして、俺はたまにお嬢の方へ飛んでくる肉片を払ったりしていた。


 要はなにもしていない。


 もちろん、肉片を攻撃と仮定して払ったりしていたが、流石に緊張感が持てなかった。どこまでいっても結局は肉片だからな。それでもやらないよりはマシだと思って続けはしたが。


 そんなことを続けていると、ようやくお嬢が終わりを告げた。


「全部で五体か」

「あっという間だったね」


 雑魚ゾンビの数は覚えていないが、確かに肉塊は五体ほど倒したと思う。


 廃館への最短ルートである大通りを進んでいたので、肉塊ともそれなりに遭遇した。


 マリアさんが言うには、この遭遇率は少しおかしいらしい。普段は魔物との遭遇をできるだけ避けるので、ここまで肉塊と当たることはないとか。


 この遭遇率が異常事態というよりは、最短ルートの大通りをなにも気にせずズカズカ進んでいるからそうなっているらしい。


 つまり、俺たちが異常な行動をとっていると説明された。


 まぁ、言いたいことはわかる。


 振り返ると一定の間隔で大通りが血だらけになってるからな。


 異常と言われても仕方ない。


「やりたい放題するじゃねぇか」

「いけませんか?」

「いや、別に構わねぇよ」


 なんだよいきなり。今まで黙ってたくせに。


 ちゃんと廃館に向かってるんだから文句ないだろ。


 それに監視役の二人は戦闘に参加してないから疲れてもないはずだ。


 ダインのおっさんはなにが言いたいんだ?


「もっと急いだ方がいいか?」

「違うの。別に問題なく廃館に近づいているから構わないわ。けど、急いで連携の練習をする必要ってあったかしら?」

「そりゃ、しないよりはいいだろ」


 振り返って二人の顔を見るとなにやら様子がおかしい。ダインのおっさんはなにかを警戒しているし、マリアさんにいたってはどういう訳かあきらかに緊張している。


 その異変に気づいたお嬢たちも二人の方へ振り返る。


 俺たちと二人の間には少しだけ距離があり、意図せずお互いが睨み合う形になった。


「組合長の命令は資料の処分だったよな?」

「はい」

「なら、連携の練習とやらは必要ねぇよな?」

「そうですね」

「でも、練習は早い方がいいだろ?」

「別に後でもいいはずだ。それに最優先は資料の処分だ」


 だから、最短ルートで廃館へ向かってるだろ。


 練習がダメなのか?


 だとしたら、なんで一通り終わった今言い出すんだ?


 もっと早く言えばいいだろ。


「それにわざわざ廃都市でしなくても、もっと安全なところですればいいじゃない」

「お前、なにか隠してるよな?」


 ダインのおっさんはお嬢を睨みつけてそう言った。


 意味がわからない。


 隠すもなにも俺たちが秘密にしなければならないものはない。


 強いて言えば『未還の魔術』に関する資料くらいだ。


 しかし、それを処分するために廃館へ向かってるんだから、別におかしなところはない。


 やっぱり意味がわからない。


「お前はここでその化け物を拾ったそうだな」

「はい」

「なら、お前はその化け物がいなくても、元々ここで通用する力はあるはずだ」

「連携の練習なんてしなくても、廃館には辿り着けるはずよね?」

「そうですね」


 そう言われると確かにその通りだな。


 お嬢は元々一人だった。


 ということは、肉塊が現れようがゾンビが束になって襲いかかって来ようが問題ないってことだ。


 しかも、唯一の味方であるベクトルとは見張り町で別行動していた。


 今ならなんとなくわかるが、お嬢は廃都市のことをかなり詳しく調べたはずだ。そして、その上で問題ないと判断して来たんだろう。


 確かな余裕をもって。


「じゃあ、どうしてそんな無駄なことをした。廃館の中に化け物の力が必要になるなにかがいるんじゃねぇのか?」

「貴方の手に負えないなにかが」


 しかし、二人の指摘した通りのなにかがいた場合は話が変わってくる。


 お嬢とベクトルだけではなく、俺とフィオの力を借りないと対処できないなにか。


 それが事実だとしたら、二人の疑念は真っ当なものだ。


「お前はなにに備えてるんだ?」


 ダインのおっさんはこれ以上の問答は不要だと言わんばかりに確信を持って尋ねた。


 対するお嬢は気負った様子もなく、いつも通りの声色で答える。


「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ」

「だってさ」


 お嬢がそう言うならそうなんだろう。


 お嬢は無茶や無謀を好むタイプじゃないもんな。


 短い付き合いだが、それくらいはわかる。


 本当に大丈夫なんだろう。


「なら、さっさと説明しろ」

「そうですね。強いて言えば、従魔たちの創造主がまだ廃館にいそうなのでそれに備えて、ですかね」

「そんなの聞いてないぞ!?」

「私も聞いてない!」


 聞いてない聞いてない聞いてない!


 はぁ?!


 結構な爆弾発言だぞ!


 実は犯人まだ生きてましたってことだよな?!


 絶対にヤバいだろ!!


「こいつらにも言ってねぇのか……」


 そうだよ、俺もフィオも聞いてねぇよ。


 それを悟ったダインのおっさんとマリアさんは俺とフィオに同情の視線を向ける。 


 そして、張り詰めた空気が憐れみを帯びた空気へと一変した。


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