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肉塊

「次は私たちを含めての練習ね」


 お嬢は廃館へ進みながらそう言った。


 俺とフィオの性能をお嬢はベクトルと共有できたので、次は四人での動き方を練習するらしい。


「どうするんだ?」

「まず、ベクトルとフィオが前に出る。そして、私が二人を後ろから援護。ポルターは私の盾ってところね」


 なるほど。


 いまいちよくわからん。


 正しい戦闘なんて知らないから、雰囲気でしかわからない。


 まぁ、前衛と後衛に別れることくらいは理解できた。


 でも、俺が盾ってどういうことだ?


 ダメージを負わない俺は前で暴れた方が良さそうだけど。


「盾ってなにすればいいんだ? それに俺は前に出なくていいのか?」

「ポルターはまだ連携とかわからないでしょう? それなのに前に出ても仕方ないわ。それにポルターの腕がベクトルに当たると洒落にならない。だから、後ろ」


 そう言われると納得するしかないな。


 前に出ているのがフィオだけなら、なにも気にせず腕を振り回せばいい。


 けど、ベクトルがいるならそれはできない。当たったら大怪我だ。


 そうなると、お嬢の露払いくらいしかすることがないか。


「せめてお嬢に近づく敵を削るか、飛んで来た攻撃を削って防げと」

「そんな感じね」

「なんとなくわかった」


 細かいイメージはできていないが、やるべきことは理解した。


 あとは実践して覚えていくしかないだろう。


「じゃあ、早速あの大きいので練習する?」

「そうね」


 そう言って、フィオが指差した先にはゾンビとは比べものにならない化け物がいた。


「あれは肉塊だな」

「なんだそれ?」

「簡単に説明すると、ゾンビが沢山集まって出来た大きなゾンビね」


 監視役の二人はたいして驚くこともなく説明してくれた。


 この廃都市ではそう珍しくない魔物なんだろう。


 しかし、俺にとってはひたすらに気持ち悪い。


 見た目は皮膚のない大きい肉人形。かろうじて人間の形をしているが、目や口や鼻も見当たらない。まさに肉の塊といった感じだ。


 動き方はかなり鈍いが、丸見えの筋肉やその巨体を考えると力は凄まじいんだろう。


 どうやったらゾンビがああなるんだ。


 いくらゾンビが合体したって、あんな大きくも気持ち悪くもならないと思うんだが。


「なんだか発想が雑な魔物だな」

「死んだ肉の集まりなんだからそんなものよ」

「そういうもんかね」


 別に目的があってあんな姿になったわけじゃないんだろうな。


 じゃあ、どういう仕組みでああなったんだと聞きたくなるが、聞いても仕方ない。


 今は四人で連携をとることに集中するべきだ。


 ド素人の俺が余計なことを考えている余裕はないだろうしな。


「では僕が肉塊の体勢を崩すので、フィオさんは止めをお願いします」

「わかった」


 ベクトルは腰の剣を抜き肉塊の方に駆けていく。その速さはフィオには劣るものの人間の動きとは思えない速さだ。


 俺の知る人間とこちらの人間が似て非なるものだと改めて思い知らされる。


 俺が呑気にそんなことを考えていると、ベクトルは肉塊の足を斬りつけていた。しかし、肉塊の体勢を崩すまでにはいたらず、ふらつかせるに留まった。


 すると今度はフィオが反対の足に蹴りを放ち肉塊の姿勢を完全に崩した。


 そして、低くなった肉塊の頭をベクトルの剣が貫きとどめを刺した。


 ……後衛の仕事がないんですけど。


「……前衛は派手だな」

「前に行きたいの?」

「いいや」


 そういうことじゃない。


 なにもしてないのが少し申し訳ないだけだ。


 まぁ、前の二人だけで済むならそれに越したことはないんだろうけどな。


「私たちの動きはどうだった?」

「俺は良かったと思うけどな」

「個人的には肉塊に対する認識が甘かったのが反省点ですかね」


 確かにベクトルは当初言っていた通りに動けてなかった。


 当初はベクトルが肉塊の体勢を崩す役回りだったが、結果的にはとどめを刺していた。


 その代わり、ベクトルの役回りをフィオがしていた。


 別に予定通りにいく必要はないだろうし、誰も怪我を負っていないなら問題ないと思う。


「ていうか、最初からフィオが頭を吹っ飛ばせば良かったんじゃないのか?」


 ベクトルには悪いが最初からフィオが肉塊の頭に蹴りでも入れていれば、すぐに終わってた。


 それこそ一発で終わっていたかもしれない。


「高さがあるから無理だよ。私まだ丁度いい力加減で跳べないから、失敗したら遥か彼方へ跳んでっちゃうもん」

「……確かにな」


 肉塊の頭めがけてジャンプしたはいいが、失敗してそのまま空の彼方へバイバイでは困る。


 フィオの全速力は足場がないと使えなさそうだ。


「最初にしては、まずまずね」


 俺たちが反省会をしているとお嬢がそう締めくくる。


「次もこんな感じで行きましょう」

「はい」


 そう言って、お嬢はまた先に進み始めた。


 どうやら進行方向に手頃な魔物が出てきたら、また連携の練習をするらしい。


「なあ、全部お前の化け物にやらせりゃいいんじゃねぇのか?」


 すると後ろからダインのおっさんが聞いてきた。


 連携の練習って言ってるだろ。


 そりゃ、俺もさっきはフィオがやれば済むと言ったがあくまで提案だ。


 それにフィオじゃなくてもお嬢がやれば一発だ。


 ゾンビだろうが肉塊だろうがボカンと一発やればそれで終わり。


「僕の腕が鈍るといけませんから」

「そうかよ」


 流石はベクトル。気づかいのできる男だ。


 俺なら『うるせぇ外野』と罵るところだった。


「ていうか、俺たちだけに戦わせるとかパワハラだぞ」

「ぱわはらだよ」

「……意味わかんねぇ」


 だろうな。


 理解できないように言ってるからな。


 同調したフィオも片言だ。


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