和気藹々
なんと馬車そばで待っていたのは、赤毛のおっさんたちだった。
「お前らか……」
「お二人が組合の?」
「ええ、そうよ。私はマリア。よろしくね」
「昨日のおっさんと隣りにいた人か」
「おっさんじゃねぇ!」
組合の監視役は赤毛のおっさんとマリアさんの二人らしい。
「二人なの?」
「そうよ。私とダインが貴方たちの監視役よ」
今更だけど赤毛のおっさんはダインっていうのか。
まぁ、おっさんって呼びつづけるけどな。
「ちょっと前のお嬢たちと一緒だな」
「そうですね」
二人組が冒険者の中では主流なのか?
ただの偶然かもしれないけど。
「じゃあ、少しの間よろしくな。おっさん」
「だからおっさんじゃねぇつってんだろ!!!」
振ると鉄板のツッコミをしてくれるから気持ちいいなぁ。
テンポが心地よくて癖になりそうだ。
「この馬車はどうしたんですか?」
「聞いてないの? 組合長が少しでも早く済むように用意したらしいんだんけど」
「聞いてないですね。ですが、わかりました」
お嬢が聞き忘れたりするはずがないので、これは伝達ミスかもな。
もしくはあえて言わなかったか。
組合長が俺たちと会いたくなさすぎて。
大いにあり得るな。
「廃都市まで一気に行くが文句ねぇな?」
「はい」
そう言って、ダインのおっさんは出発の準備を始めた。
それに答えたお嬢も馬車に乗り込む。
ベクトルとフィオもお嬢の後に続いて馬車に乗り込んだので、俺も見様見真似で馬車に乗り込んだ。
するとフィオがこちらをじっと見つめてくる。
よくわからないが、なにも言わない。
俺はなにかしたのか?
「ごめんね。口が悪くて」
「大丈夫です。うるさいよりは、本当に」
「なんだよ、これでも空気は読んでるつもりだけどな」
「そうだよ」
お嬢が意味ありげなことを言うので、しっかり訂正しておく。
今は別に冗談を言ってはいけない雰囲気ではない。だから、冗談を言ってるだけで、ちゃんと空気は読んでる。
フィオもこちらから目を離してお嬢に抗議した。
俺たちはその場の明るさを意識してるだけであって、別に喧しくすることが目的じゃない。
勘違いしてもらっては困る。
「……貴方も大変ね」
「僕は良いことだと思いますけどね」
ほら見たことか。
ベクトルはちゃんとわかってる。
マリアさんは苦笑いだがそれは仕方ない。マリアさんはまだ俺たちの良さを理解できてないだろうからな。
これからわかってもらえばいい。
理解者が変態紳士のベクトルという点は若干不安だが気にしてはいけない。
「準備はいいか?」
「おっさんが運転手か」
「……」
「ぶつぶつ言わない」
「はいはい」
これ以上は駄目らしいな。
このあたりの見極めが大切なところだ。
ダインのおっさんも御者席に座ってから答えてくれないし。
もうちょっとこの遊びは続けて行きたいので一旦ストップだ。
「ところでさ」
「なに?」
「ポルターって浮いてるけど馬車に乗れるの?」
「行くぞ」
「おいおいおい!」
あのおっさんここぞとばかりに急発進しやがった!
お嬢は無関心だし、ベクトルは仕方なさそうな顔してるだけで止めようとしやがらねえ!
フィオにいたっては楽しそうに手を振ってるし!
手を振る前に馬車を止めろ!
俺が馬車を負っていると、唯一慌てていたマリアさんがおっさんを止めてくれた。
馬車とそこまで距離があったわけじゃないからすぐに追いつけたが、とんでもないことしやがる。
「やりやがったな、おっさん」
「てめぇが勝手に置いて行かれただけだろ」
「はぁ?」
「あぁん?」
勝手に置いて行かれたってなんだよ?
車の後部座席だけ置いて出発するドッキリみたいなことしやがって。
俺以外に伝わらないし、こっちの世界で未だ発明されてない笑いを提供してんじゃねえよ。
「いい加減にしなさい」
「あんたもよ」
「……塵野郎が」
「誰が甘辛いソースだ……」
ダインのおっさんは理解できなくてアホ面晒してるので今回は良しとする。
生涯でチリソースを知ることはないだろう。
「……そいつをどっかに縛り付けるか包むかどうにかしろ」
「はい。じゃあ、フィオがポルターをローブで包んで持っておいて」
「はーい」
フィオはお嬢に言われた通りにローブで俺を包みだした。
ローブの裾を縛り袖を結んで……それ以降は包まれている俺には見えなくなった。
完全に包まれたのでなにも見えないが、幸い馬車が進む音は聞こえてきたので会話はできそうだ。
「梱包初体験だ」
「なんて?」
「梱包初体験だ!!」
「良かったね!!」
いや、そっちは包まれてないんだから大きい声を出さなくていいだろ。
真っ暗でなにも見えないが、お嬢の迷惑そうな顔が目に浮かぶ。
「これからは馬車も厳しいですかね?」
「それか入れ物が必要ね……」
お嬢とベクトルの相談が聞こえる。
内容は移動方法についてらしいが、これからの移動が徒歩一本に絞られるのは申し訳ないな。
今のところ同じ不死身のフィオは俺に触れても大丈夫だ。だから、俺を包む役割を任された。
しかし、入れ物となると少し厳しい。触れただけで削れるからな。
これからはローブで包まれた上で小さくまとまる練習もした方がよさそうだ。
「脳天気なガキ共が……」
「ちょっとー、失礼だよー。あんまり言うと顎の形変えちゃうよー」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……笑えないわよ」
ブラックジョークのブラックがキツすぎだ。
今の俺の視界より黒いぞ。
「えーー、昔はこれで笑ってもらえたんだんけどなぁ」
三百年前の話をするな。
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