限界
「……そのことをよく理解しているなら構わない」
組合長は絞り出すような声でそう言った。
たぶん組合長のペースで話すことができないから、疲れるんだろうな。
お察しするよ。
「次は製造法を風潮する、または新たなゴーレムを製造する危険性があるという問題でしょうか?」
「ああ、そうだ」
「わかるけど、そんなの言い出したらきりないぞ?」
組合長の立場上その話は無視できないのかもしれないが、流石にそれはどうしようもない。
頭の中にあることを消すことはできないからな。
なら、そんなことを心配するだけ無駄だ。
「しかし、製造法を狙って君たちの主人が襲われる可能性もある」
「それこそ俺たちで対処するし、ベクトルもいる」
「はい」
「本人も対処できるし」
「ええ」
これまでお嬢とベクトルは二人で旅してたんだから、大体のことは経験してるはずだ。じゃあ、ちょっとくらい狙われたって心配ない。
今は俺やフィオがいるんだから、更にノープロブレム。
それになによりバレなきゃ問題ない。
作り方を知ってるのは、今のところお嬢だけだ。
また、そのことを知っているのはこの場にいる人間だけ。
じゃあ、黙っていれば万事解決だ。
「だとしても……」
「口外しませんし作りません」
「これでいいだろ?」
「そんなわけないだろうっ」
くどいなぁ。
これ以上話しても答えなんて出ないだろ。
「では殺して口封じでもしますか?」
「やるか?」
「ちょっと待て! なにをそんなに急いでいる?」
「そろそろ従魔たちの限界だと思ったので」
「飽きたね」
「長い」
かなり大切な話もあったし悲しい話もあったけど、流石に話が長すぎる。
いい加減にしてくれると非常にありがたい。
「なので、組合長のお考えを簡潔に教えて下さい」
「それは人にものを尋ねる態度じゃないだろ……」
「はーやーくー」
勿体ぶらずにさっさと教えろ。
いつまでここで長話させる気だ。
「……製造法、その他諸々の資料を処分してきなさい」
「では、早速」
「待て! 組合からも人員を出す」
「なんで?」
もうこっちは行く気満々なんだけど。
ベクトルはいつの間にかドアノブに手をかけてるし、フィオはもう扉の前でスタンバってる。かく言う俺もどこに資料があったか思い出すのに頭が一杯だ。
唯一の救いはお嬢がまだソファに座ったままってことだ。
ここで全員組合長を無視してたら悲惨だからな。
「一応の監視だ。それに職員の準備もある。出発は明日の朝。いいな?」
「はい。これで彼等の従魔登録と私の処遇についての話は以上でよろしいですか?」
「……ああ」
「では、失礼します」
「失礼します」
「やっと終わったな」
「だね」
「お二人ともお疲れ様です」
そうやって俺たちが部屋から出て行くと、組合長は椅子の背もたれに深く身を預けた。
「……」
そして、後にお茶を出しに行った職員曰く、組合長の顔は見たことないくらい疲れていたそうだ。
◆◆◆
その後、俺たちは組合の職員から従魔登録を示すための名札を貰った。
それは名札をつけている魔物が従魔であることを示すための物で、登録されると必ず渡されるらしい。
しかし、俺とフィオは名札をつけることはなかった。
俺はそもそも名札をつける体がないのでどうしょうもなかったし、フィオは名札が気に食わないとの理由でつけることを拒否した。
なので、今二つの名札はフィオのポケットの中にある。
お嬢曰く、なにかあったら時だけ出せばいいそうだ。
そうして、従魔になった俺たちには初の仕事が待っていた。
それは明日の朝まで組合の厩舎で待機すること。
昨日俺たちは牢で一晩待ったにもかかわらず、また待たされることになった。
幸いなことに組合の厩舎は牢と違って、開放感があって居心地はそこまで悪くなかった。例えるなら、広めの馬小屋がイメージにぴったりだ。
そして、お嬢とベクトルは一旦宿に戻ると言うので、そこで暫しのお別れをした。
それから、俺たちはひたすらに待った。
お嬢とベクトルが迎えに来るまで。
俺たちはしっかり日が暮れるのを見て、しばらくしてから綺麗な朝日を見届けた。
なんかこの扱いに慣れつつある自分に疑問を覚えたが、お嬢たちは朝早くに迎えに来てくれたのですぐに忘れることにした。
慣れてしまえばどうということはないし、今はお嬢について行くことが仕事だ。
「組合の厩舎は牢よりはマシだったな」
「私は普通の宿の部屋がいいんだけどね」
「従魔に宿は無理よ」
「なら仕方ないな」
俺はそこまで気にならなかったが、フィオは厩舎に不満があるみたいだ。
まぁ、牢よりマシとはいえ馬小屋だからな。
言いたいことはわかる。
「せめて綺麗にしてほしい」
「次からは職員にそう伝えるわ」
「一般の宿屋はそもそも従魔を受け入れてくれないでしょうから、これからは組合の宿を利用することになりますね」
「そうね」
それはなんだか申し訳ないな。
俺たちのせいで不自由させるなら流石に気が引ける。
「大丈夫なのか?」
「ええ」
「組合の宿は一般の宿屋よりは少し宿泊費が高いですが、その分清潔ですしあまり利用者もいないので宿探しの必要がありません」
「だから大丈夫だと?」
「ええ」
なら、まあいいか。
こればかりは俺たちの努力でもどうにもできないから少し心配した。
しかし、利用者が少ないなら俺たちのせいで宿なしになることもないだろう。
「組合の宿は人気ないんだね」
「一般の方が利用しないので料理などの娯楽が最低限なんです」
「そういうもんか」
「はい」
サービスはそこまで良くないが確実に利用できるってことか。
一般人が使わないなら、品質の向上も必要ない。それに組合は宿屋じゃないしな。もしかしたら、休憩室を無理矢理使っているだけかもしれない。だとしたら、そんなもんか。
そんなことを話していたら、組合の前に馬車が止まっているのを見つけた。
どうやら、あの馬車で廃都市へ向かうらしい。
そう思って近づくと馬車のそばに知っている顔があった。
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