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「そこの二体には自己紹介がまだだったね。私はドライ・ノースルートだ」

「わざわざどうも」

「私たちの名前はもういいよね?」

「ああ。先程も聞いたがそこの二級冒険者ディジーからおおよその報告を受けている」

「わかった」


 なるほど。


 俺たちの説明は昨日でほとんど終わってるってことか。


 なら、聞くことなんてほとんどないと思うが。


「もう一度確認しておくが、この二体を従魔したいんだな?」

「はい」

「ふむ。……当初の話の通り、概ね会話は成立している」

「はい」

「それだけの知能があると」

「そうです」


 そんなのもうわかってるだろ。


 いちいち確認することか?


「通常の従魔は力での屈服、つまり躾けがしてあるわけだが二体に躾けは?」

「していません」

「どうしてかな?」

「必要ない上に不可能だからです」

「というと?」

「既に話した通り彼等の中身は人であり、ましてや子供でもありません」

「らしいね」

「ならば、必要なのは躾けではなく契約です」

「我々がするように?」

「はい」


 とくにお嬢と契約っぽいことをした覚えはないが、お嬢の身を守る代わりに従魔という立場を提供してもらうことになっている。なら、口約束とはいえ契約は成立しているな。


 もちろん、上からの許可は今もらっている最中だけど。


「危険だ」

「……」

「勘違いしてほしくないので先に言わせてもらうが、君たちのことを心配して言っているわけじゃない」

「わかっています」

「本当にわかっているのかい? そこの二体は高い知能を持っている。ならば君たちを騙して都市に入り込み、罪のない一般人を虐殺することも可能だ。それに君はこの二体は高い戦闘能力を有していると言ったね。どう制御するつもりなんだ。躾もしていない。唯一縛るものは、本当に存在するのかわからない契約だけ。……どう考えても危険すぎる」

「その通りですね」


 全くもって、その通りだ。


 俺たちが本当にそうしようと思えば、おそらく簡単にできる。


 当然そんなことは絶対にしないが、組合長はそう思っていない。


 となるとお嬢はどう説得するつもりなんだ?


「ですから、そのための契約なんです」

「……」

「彼等は私に絶対服従であり、罪のない人間に危害を加えないと契約しました」

「……根拠はあるのかね?」

「今私たちが生きていることそこが根拠です」

「それはないと言っているようなものだ……」


 組合長の言う通り。


 根拠はない。


 しかし、お嬢の言うこともわかる。


 俺たちはこの都市に入ってから人間を虐殺する機会はいくらでもあった。


 門兵も一般人も他の冒険者も簡単に殺せた。


 でも、死んでない。傷一つ負っていない。なぜなら、俺たちはお嬢の言いつけを守っていたから。


 この結果が契約が存在しているという、なによりの根拠だ。


「では仮に契約が本当に存在していて、問題なく機能していたとしよう。しかし、ある日その契約を破って裏切ったらどうする?」

「簡単なことです。私たちが責任をもって対処します。……それにそれは通常の従魔にも人にも同じことが言えますよね?」

「それは一般論での話だ。そこの二体は他の従魔や通常の人と比較できない」

「比較できないなら、先の仮定は意味がありませんね。他の従魔もその問題を通過して登録しているわけですから。うちの従魔だけが問題視される理由にはならない」

「……」

「……」


 上手く話がまとまらないな。


 俺たちが危険である証拠も安全である証拠も両方ない。だから、どっちも証明できない。


 辛うじてお嬢に絶対服従であることは証明できるかもしれないが、安全であるという証明に持っていくには弱い。


「……君たちはなにが望みなんだ?」


 やっとこっちに質問したな。


 まぁ、お嬢とあれ以上議論しても意味ないだろうからな。賢明な判断だと思う。


 しかし、望みか。


 強いて言えば……。


「それは、あんたみたいな人間に疑われないことかな」

「下手に人と敵対して永遠に追い掛け回されるなんてのは嫌だからね」

「……」


 組合長がどういう答えを予想していたかは知らないが、結局はこれに尽きる。


 そのために従魔になるんだ。


「……人の庇護下にありたいと?」

「そうなるな」

「組合のような組織でも構わないのでは?」

「何処かに保管されるのも、戦争に使われるのはごめんだ」

「きっとそうなるしね。作られた理由は聞いた?」

「勿論」

「なら、わかるだろ?」

「……」


 人殺しのために作られたゴーレムなんだから、人殺しのために使われるに決まってる。


 組織ともなれば人殺しの規模も大きくなる。組織のため国のためとか言い出したら、それこそ敵対する組織や国で虐殺を強要されるかもしれない。


 それに対して、お嬢みたいな個人ならおのずと規模は小さくなるはずだ。多少の人殺しは避けられないかもしれないが、きっと振りかかる火の粉を払う程度で済むだろう。少なくとも、組織よりはマシだと思う。


「どのみち従魔にするしかないかと。野放しには出来ませんし」

「………………わかった。登録は認めよう」


 そう言って組合長は渋々登録を許可した。


 俺たちの安全性についてはまだ証明できていないが、お嬢の『野放し』という言葉は無視できなかったらしい。


 組合長としては妥協に妥協を重ねた判断なんだろうな。


「やっと、終わったか」

「まだだ」

「まだなのか……」


 もういいだろ……。


 登録が許可されたなら、もうここに用はない。


 さっさと帰らせてくれ。


「次は君たちの主人の処遇についてだ」


 処遇ってなんだ?


 事と次第によっては黙っていられない。


「どういうこと?」

「作られた理由を知っているということは、作り方つまり製造法も知っているはずだ」

「はい」

「そうなると、君は危険人物だ」


 なんとなく言いたいことはわかった気がする。


 お嬢は知るべきではないことを知ってしまったと。


 けど、それを言い出したらさぁ。


「また、話が長くなるぞー」

「ねー」

「……」


 組合長のうんざり顔も理解できるけど、俺たちだってうんざりだよ。


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