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その前に

「一晩待つとは聞いてないぞ」

「そうだよ」


 俺たちはお嬢たちが登録とやらを終えるまでずっと待っていた。


 しかし、いっこうにお嬢たちは俺たちを迎えに来ることはなかった。


 最終的にどこからか朝の挨拶が聞こえて来るまで、俺たちは一晩経っていることにすら気がつかなかった。


 流石に一晩は長い。


 まさか牢で一泊するとは思わかなかったぞ。


「すみません。待たせてしまって」

「話が拗れたの」

「話が拗れた?」


 どういうことだ?


 お嬢とベクトルの言い方から、ここまで時間がかかるとは思ってなかったみたいだ。


 ということは、登録とやらは本来すぐに終わるものなんだろう。


 しかし、今回はそうはならずに話が拗れたと。


「登録は本来書類一枚で済むものなんですが、途中で組合に指摘されてしまったんです」

「おかしいだろって」

「なにがおかしいんだ?」


 なにをどう書いたのか知らないが、普通は何事もなく済むんじゃないのか?


 だって、書類一枚だ。


 前世の役所の書類ならまだわかるけど。


「『廃都市で喋るゴーレムを二体捕獲』って書いたら止められたわ」

「まぁ、それは止められるか」


 普通はあんな廃墟でそんなものを捕獲しないからな。


 ごみ捨て場で喋るロボットを拾ったって言ってるようなもんだからな。しかも二体。


 そりゃ止めるな。


 止めた人はしっかり仕事をした。グッジョブだ。


「そこからは組合の上の人とながーい話し合い」

「例えば?」

「まずは事実確認から始まり、どういう経緯で捕獲して、どんな魔物なのかを聞かれました。次にお二人の能力というか性能の話に移りました」

「それで?」

「それでまた止められました」


 止めるか。


 まぁ、止めるよな。


 実質不死身で人の言葉を理解する魔物が二体だもんな。


 止めて正解だよ。


「そこはまだ良かったわ。でも、貴方の前世のことと廃館のことは見過ごせない問題だって」

「そうなのか?」

「はい。とても本人がいない状況で話せるような問題ではないと」


 そんな大事になってるとは思わなかった。


 それにここで話せるような内容でもないんだろう。


 さっきから二人は具体的な話をしない。


 どうやらあまり多くの人間の耳に入れたくないらしい。


「フィオにも昔なにが起きたのか聞きたいそうよ」

「なにも覚えてないよ?」

「それでも聞きたいそうよ」

「わかった」


 事情聴取だな。


 そこは納得できる。


 人間をゴーレムにするって言われてもあんまりピンとこないが、俺でも非人道的なことが行われたことくらいはわかる。なら、三百年前のこととはいえ調べるべきだ。


「だから、今から組合へ行くわよ」

「登録してないのに牢から出ていいのか?」

「大丈夫なの?」


 話の流れ的に登録はまだっぽい。


 だとしたら、ここから出ちゃ駄目だと思うんだけどな。


「一度実物を見せろと言われたからいいの」

「少なくとも、危険はないと僕たちが説得しましたから」


 緊急時の対応なのかもしれない。


 それくらい組合ってところも真剣に考えてくれてるんだろう。


「なら、まぁいいや」


 それでようやく俺たちは牢から出てサンドに入ることができた。


 ◆◆◆


 牢から出て初めて見るサンドの風景は石と木と土を使った建物が多かった。また、廃都市とは違ってどの建物も人間が住んでいて生活感がある。そして、人々の活気が感じられる。


 どの人間もそれぞれの生活があり、懸命に生きてるんだろうな。


 今歩いているあたりは店が多いから、人通りも多いみたいだ。見ていて飽きない。


 そのぶん俺たちのことをジロジロ見る目も多いわけだが、そんなことを今更気にするつもりはない。


 見張り町での視線に比べたら大したことじゃない。


「ジロジロ見られてるね」

「そりゃ、怖いだろ。主に俺は」


 一応ローブを着てはいるが、すぐに魔物だと気がつく。


 顔がある位置は黒い霧のようなもので埋め尽くされているし、なにより足が見当たらない。これだけで、こっちの人間には十分魔物だと気づけるはずだ。


「話してみると気さくな方だとわかるんですがね」

「ファーストタッチが刺激的だから仕方ないな」


 そう言ってくれるのはとても嬉しいが、こればかりは仕方ない。


 やっぱり見た目は大事だからな。


 当たり前の反応だ。


 逆に警戒もせずに近寄ってきたら、こっちがビビる。


 そいつはもうちょっと警戒心を持って生きた方がいいと思う。


「組合はもうすぐだから、愛想よくしてよ」

「はあ?」

「指示の意味がよくわからないよ」


 おそらく冒険者組合の建物に入ってからの指示なんだろうけど、全く意味がわからない。


「おそらく、中に入るとかなり警戒されると思うので、そのための指示かと。いつもの調子で冗談を言っていれば、話が通じる魔物であることと危険性はないですよという説明が省けます。効率を求めるディジーさんらしい指示ですね」

「今のでよくわかったな……」

「未来の夫ですから」


 なんだよ、その返し……。


 なんの答えにもなってないし、引くわ。


 お嬢とベクトルが納得してるなら別にいいけど、俺には理解できないな。


「とにかく、あのデカくて石のそれっぽい建物に入ったら、愛想よくしてればいいんだな?」

「ええ」

「任せといて」


 要は問題を起こすなってことだ。


 ゾンビ処理より遥かに楽だな。


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