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仕方ない

 見張り町を進んでいくと、ちらほら人間が見えるようになってきた。


 俺たちを見て怯えるやつや逃げ出すやつはほとんどいないが、その代わりに睨みつけてくるやつや武器を手に取るやつは多い。


 流石に武器をこちらに向けてくるやつはいないが、やっぱり気分がいいもんじゃない。


 とはいえ、文句を言いに行くこともできない。


 お嬢に大人しくしてるようにって言われたからな。


 そう思ってはいるんだが、こうまでジロジロ見られると鬱陶しい。しかも、厳ついやつばかりだから余計に鬱陶しい。


 男だけじゃなく女も厳ついから居心地の悪さが半端じゃない。


「すぐに抜けるから我慢して」

「ああ」


 お嬢に言われるまでもなく我慢はするつもりだ。


 しかし、雰囲気がピリピリしていて一触即発って感じだ。


 フィオは慣れてるのかとくに気にしていない様子だし、ベクトルにいたってはずっとニコニコしている。


 お嬢のそばにいられることが嬉しくて仕方ないんだろうな。変なやつだがわかりやすいやつでもある。


 そう考えると、この雰囲気にやられてるのは俺だけか。


 これも課題だ。


 これからは冒険者っていう厳ついやつらの世界で生きていくわけだからな。いちいち気圧されてたら切りがない。


 というか、よく考えると俺は不死身だから、その辺の冒険者に殺されるどころか負けることすらないんだ。気圧されることはない。


 そう思うと気が楽になった。


 もしかすると俺たちを睨みつけてくるやつも実はビビッてたりしてな。


「そりゃなんだ?」

「拾った魔物です」


 呑気に考えごとをしていると、厳つい赤毛のおっさんがお嬢に話し掛けてきた。


 これは第一村人ならぬ第一冒険者ってやつだな。


 防具とか武器とかは装備していないけど、筋骨隆々でどう見ても一般人ではなさそうだしな。


「拾っただと?」

「ええ、なので今から登録しに行くところです」


 登録ってことは従魔になるためのなにかがあるんだろうな。


 初めて聞いたけど。


 俺たちはその時どうしてたらいいんだ?


「今日中に登録したいので失礼します」

「じゃあな、おっさん」

「っ!?」


 俺が喋ったことに赤毛のおっさんは余程驚いたのか、目を見開いて固まっている。


 別におっさんを観察する趣味はないので、俺は先を進むお嬢について行く。


 フィオもおっさんに軽く手を振り、ベクトルも会釈をしてついて来ている。


 俺が喋ったから周りが多少ざわざわしているが、問題ないだろ。


 お嬢に怒られてないし見張り町の出口も見えてきた。


 ここに用はないから、さっさとサンドってところで登録してほしい。


 ◆◆◆


 見張り町を抜けてお喋りを許された俺たちは見張り町の感想を言い合いながら、お嬢の後ろについて道を進んだ。


 やれ飯が不味そうだのやれ長居はしたくないだの言い合っていたら、丁度いい具合のタイミングでベクトルが見張り町の説明をしてくれる。


 そうやって話に夢中になっていると、もう日は暮れかけていた。


 しかし、幸いなことにサンドはもうすぐそこに見えていた。


「あれがサンドって都市か?」

「ええ」


 そこそこの高さの城壁に囲まれた都市は西日に照らされて幻想的に見えた。


 それはまるでファンタジー映画のワンシーンのようだと思ったが、実は西日じゃなくて東日だったのかもしれないと思うとちょっと冷めた。


 もっというと北かもしれないし南かもしれないからな。


 興味がブレる。


「結構ギリギリだったね」

「そうですね」


 ギリギリだったらしい。


 たぶん日は暮れると都市の中に入れてもらえないんだろうな。


 サンドってところは見張り町とは違って警備とかもいるんだろう。それこそ衛兵が見回りとかしてそうだ。


 そうなると当然変なやつらが夜のうちに入ってこないように、門を閉めるんだろうな。知らんけど。


「いよいよか」

「喋っていてもいいけど、巫山戯すぎないでよ」


 またそれか。


 流石にここまでフレンドリーな魔物はそうそういないと思うんだけどな。


「別にいつも普通だろ?」

「門の兵になにか言われても話を合わせろってことじゃないですか?」


 ああ、そういうことですか。


 ベクトルの補足が入るとわかりやすいな。


「まぁ、大丈夫だろ」

「うん」


 フィオも別に適当に話を流すことくらいはできるはずだ。


 そんなことを言っているうちに門の目の前まで来ていた。


「止まれ」

「はい」

「……なんだそれは」

「捕まえた魔物です」


 ここでは拾ったって言わないんだな。


 まぁ、正式な場面で犬猫みたいな感覚で言われるのもあれだしな。


 それに捕まえたの方が力関係がはっきりしていて安心感がある。


「……未登録か?」

「はい。これからです」

「安全なのか?」

「超安全だから大丈夫」

「っ!?」

「あと私も魔物かな」

「……なんだと?」


 黙っててもよかったが、後で文句を言われないように意思疎通ができることは伝えておきたい。


 見張り町の赤毛のおっさんのリアクションからして、相当驚くことらしいからな。


 するともう一人の門兵さんが近寄って来て相談し始めた。


「どうするんすか?」

「……規定通りに」

「いいんすか?」

「俺たちが考えることじゃない」


 なんかあっさり済んだな。


 話し掛けてきた若い門兵さんは納得していないようだが、目の前の渋めの門兵さんは判断に迷いはないらしい。しっかり対応してくれるようだ。


 しかし、規定ってなんだろうな。


「俺たちはどうすればいいんだ?」

「登録が済むまで牢にいてもらう」

「マジか」

「まぁ、仕方ないかな」


 それが規定ってやつなら仕方ないか。


 なにせ魔物だからな。


 素通りさせるわけにはいかない。当たり前の反応だから納得できる。


 けど、牢かぁ。


「……来い」

「早めにお願いねー」

「ええ」


 お嬢とベクトルは素通りなのか。


 そんな二人を見ながら、なんとも言えない気分のまま俺たちは牢に連れていかれた。


 早く出られるといいなぁ。


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