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外へ

 俺が気分を切り替えているうちに、廃都市の出口らしきものが見えてきた。


 それは石造りの大きな門で、道幅も車が余裕を持ってすれ違えるほどの広さがある。もちろん、こっちに車はないから馬車的なものが通るんだろうけど。


 いかにも城門といった雰囲気に少し圧倒された。


 しかし、よく見てみると違和感を覚えた。


 というのも、城門がかなりボロい。


 ここも漏れなく廃都市といった感じだ。


「あの下を通るのは危ないんじゃないか?」

「どこも似たようなボロさらしいから、諦めて通るしかないの」

「マジか」


 そんなことを言っているうちに俺たちは城門の目の前まで来ていた。


 近くて見ると城門はよりボロく見える。


 石レンガは欠けている部分が多く、ここでなにか起きたことが伺える。大方ここでゾンビとやりやった人間がいたんだろう。当然のことだが掃除をした様子もなく、黒い汚れや罅だらけの石レンガが目につく。


 お嬢が気にせず先に進むので渋々ついて行くが、内側はまた違った雰囲気だ。


 汚れや罅は少ないが圧迫感が凄い。ある程度の広さはあるが城門の内側は影になるので、暗さが圧迫感に拍車をかける。


 それに城門の内側を見上げると、いわゆる落とし扉が見える。流石に落ちて来るとは思わないが、独特な迫力を感じた。


「本場の城門はなかなか迫力があるな」

「緊張感を与えるのも城門の仕事のうちだからね」

「なるほどな」


 飛行機の手荷物検査的な緊張感があるな。


 慣れれば大したことないんだろうけど、それまでは居心地の悪さを感じそうだ。やましいことをしようとしてる奴はそわそわしそうになるな。


 とはいえ、城門もそこまで長いわけじゃないのであっという間に抜けた。


 城門を抜けるとそこは荒れ地だった。


 木は申し訳程度に生えているが数も少ない。また、地面に雑草の類も生えていない。館の庭もこんな感じだった。


 しかし、少ない木がこの景色に気休め程度に色を加えている。深い緑の葉は針葉樹のようだ。もちろん、俺の知っている針葉樹とは全くの別物だろうけど見た目は近い。


 廃都市の中と比べると遥かに自然豊かな景色だ。


「緑を見ると流石に感動するな」

「今までは赤と灰と茶が多かったもんね」


 赤は言わんでいい。


 ゾンビの血肉の色を思い出させるなよ。


 あんまり思い出して、いい気分になるもんじゃないんだから。


「行くわよ」


 一言そう言ってお嬢は先に進んでいく。


 お嬢が今歩いている道には草木が生えておらず、乾いた土を踏み固められただけのシンプルなものだ。これだけわかりやすければ、迷うこともなさそうだ。


 道中で魔物に遭遇することもあるかと思って警戒していたが、お嬢曰くこのあたりに魔物はいないらしい。まぁ、荒れ地だから魔物の食い物もないだろうしな。


 そう言われると俺とフィオはすることがない。


 なので、いつも通り雑談をしつつお嬢の後ろをついて行った。


 ◆◆◆


 しばらく歩いているとあたりが暗くなり始めたので、お嬢は夜営の準備をし始めた。


「ここで寝るのか?」

「ええ」

「豪快だな」


 テントのようなものを建てるのかなと思ったが、道中で拾った枝を焚き火のようにしてから火をつけて地面に座り込んだ。


「これだけなのか?」

「一人なら私はこうね。今日からは貴方たちがいるから見張りも必要ないし。寝ないでしょう?」

「そうだね」


 確かに寝ないし見張りも構わないが、簡易にもほどがある気がする。


 それともこれが普通なのか?


「普通なのか?」

「うーん、人それぞれかな」


 そうなのか。


 そんなことを話していると、お嬢はローブの内側からなにか取り出して食べ始めた。


「それは夕飯か?」

「ええ、貴方たちの遠縁ね」

「保存食って言えよ……」


 同じ保存の魔術がかかってるからって親戚じゃない。というか、親戚ならムシャムシャ食うな。


 その保存食はいわゆる干し肉のようなもので、お嬢はたまに火で炙ったりして食べていく。あまり美味しそうには見えない。


 保存の魔術も俺たちとは違って外側にかけているらしく、嚙んだらすぐに消えるそうだ。


「ところで、貴方たちはなにかしたいことはある?」

「思いつかないな」

「私も」


 食事中の軽い雑談をしてくれるらしい。


 俺とフィオはなにも食べないので、こういう気遣いは正直助かる。


 しかし、したいことはもう既にしている。


 なんだかんだ廃都市の外には出たし、従魔にもなれた。おまけにこれから人間の生活圏である都市に向かっている。


 順調に進みすぎて怖いくらいだ。


 これ以上の望みは都市に入ってからか、お嬢について行くうちに見つけるしかない。供給が需要を超えている。


「そう。私はいろんな世界を見るために旅をしてるの」

「自分探しの旅的な?」

「そいうのじゃない」


 なんとなく思いついたことを言ってみたら、割とキツめに否定された。


 たぶん、こっちの世界にもいるんだろうな。自分探しの旅をしちゃう人。


 別にそれが悪いとは思わないが、お嬢はあんまり好きじゃないみたいだな。


「つまりは?」

「……そのままの意味で、沢山のものを見たいってこと。知りたがりなの」


 知りたがりか。


 確かになんの準備もなしに館に入って、俺たちのことを調べたりしてたしな。


 知りたがりなら納得だ。


「その中に絶景的なものも含まれるのか?」

「まあ絶景もいいけど、人の営みの方が好きね」


 人の営みってことは、地方の生活様式とか独特な風習に興味があるのか。


 あれか。文化人類学ってやつか。


 全く内容は知らないが、聞いたことはある。


「よくわからん」

「変わってるね」


 学者気質ということは理解したけど、いまいちよくわからない。


 フィオにいたっては言い方が地味に酷い。


「否定はしないけど、私はマシな方よ」

「どういうこと?」

「仲間はもっと変わってる」


 お嬢はその言葉を最後に寝る準備にはいった。というか、寝た。


 鈍器のような杖は流石に手放していないが、もう火のそばで横になっている。


 おそらく食事が終わったから寝たんだと思う。


 にしても、せっかちだな……。


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