一先ず
「貴方たちについてはこんなところね」
「お疲れ」
恐ろしく長い説明だった。
一番最初に面倒くさいと言った理由がよくわかる。
お嬢が今机に投げ捨てた書類の量からして、俺たち二人分の書類はそこそこの量だったらしい。
たぶん目が一番疲れたんだろうな。目頭を揉んでる。こういうのはどの世界も共通なんだな。
「ねえ、まだ一つ気になることがあるんだけど」
「なに?」
「私はなんで真っ白なの?」
確かに、それはまだ聞いてない。
フィオの一番目立つポイントはこの白さだ。気になって当然だな。
「わからないわ」
「……どういうこと?」
「原因不明ってこと」
「そう書いてあるのか?」
「ええ」
それは詰んだな。
フィオも絶句だ。アニメとか漫画でキャラが驚きすぎて真っ白になる演出がある。今それが隣で起きてる。しかも、セルフで。
そりゃ、なにか意味があると思いたいのはわかるが原因不明なら仕方ない。
有名なロボットや家電はだいたい白いから、その仲間に入ったと思うしかない。
「まぁ、気にするな」
「いや、なにか意味があると……」
「……ないんだよ」
「フィオが完成して一晩たったら、勝手に真っ白になってたそうよ」
それは確かに原因不明だな。
勝手になってたんだから。
「別にいいけど、消化不良気味かな」
「俺もなんで浮いてるのか知らないし、お互い様だ」
「ポルターは軽い上に振動してるからよ」
「そうっすか……」
慰めにもならなかったな。
俺の疑問はすぐに解明された。
なんというか、緩急がな。
「白黒でお似合いだと思うわよ」
「そういうことにしとこっか?」
「だな」
とくに意味を求めて話してたわけじゃないが、予想以上に不毛だった。
最終的によくわからない慰められ方をされたし。俺たちはチェスや囲碁と同じ括りなのか。
「もういい?」
「ああ」
「うん、いいよ」
もう気になることはない。少なくとも、今は。
逆に棺のこととか聞きたいが、もうなにも聞くなオーラが出てる。
相当お疲れなのかもな。これ以上なにか聞くと怒られそうだ。
「じゃあ、帰るわよ」
「どこに?」
「サンドって言う都市へ」
都市だってさ。
なんかこうファンタジーの冒険って感じが凄いする響きだ。
武器屋とか道具屋とかあるんだろうか?
そう考えると今から楽しみだ。
「私は聞いたことないかな。その都市」
「小さい都市なのか?」
小さい都市なら知らなくても仕方ない。
もしくは、フィオが勉強不足なだけか。
まぁ、それは言いっこなしだけど。これから勉強すればいい。
「昔からある都市で、それなりの大きさよ」
「そうなのか」
ということは、この三百年間でできた都市ってことか。
だとするとフィオも知らないはずだ。
フィオが生きてた時にそこそこの大きさなら、名前くらいは聞いているはずだしな。もちろん、気にしない人もいるかもしれないが。
「今から行くところはフィオにとっても初見になるのか」
「そうなるわね」
「少し楽しみかな」
となれば、前は急げ。
俺たちは来た道を引き返すことにした。
ゾンビの成れの果ては思っていた以上に役に立つな。
パン屑なんかより遥かに目立つ。
世界一目立つ道標だと思うね。
余裕があれば埋葬か火葬くらいはしてやりたいが、今の俺たちには余裕がない。のんびり喋っていたが、一応は警戒していた。
それに、ただ道を引き返しているだけじゃなく、遭遇したゾンビの処理もしている。
流石にいつまでも、ここにはいられない。
「ところで、フィオはここに来たところまでは覚えているの?」
「ここというか、宿までは覚えてるかな」
するとお嬢が突然そんなことを聞いてきた。
まぁ、ゾンビ処理は俺がしているからフィオの手は空いている。
歩きながら話しても問題はない。
「じゃあ、この廃都市で殺されたんでしょうね」
「そうなるのかな。あと今は廃都市って言うんだね」
「ええ」
「昔はなんて都市名だったんだ?」
「確かノングリードだったかな」
ノングリード。
こっちの意味は知らないが、直訳すると無欲ってところか。
そんなところで殺されるとは、皮肉というかなんというか。
「でも、宿についたところまでしか覚えてないかな」
「俺も死んだあたりのことはあんまり覚えてないな」
俺は目が覚めてから結構経つから、忘れてるだけかもしれないが。
しかし、確かにどうやって死んだかは思い出せないな。
綺麗さっぱり忘れてる。
「そういうものなのかもね」
「まぁ、思い出したいかと聞かれると微妙だしな」
「確かにね」
壮絶な死に方なら、あんまり思い出したくない。
人間やめてまで血の気の引く思いはしたくないしな。
とまあ、そんな無駄話をしているとゾンビ山と赤い砂山が見えてきた。
「興味深い話を聞かせてくれたお礼に赤い骨の正体を教えるわ」
「お礼とかは別にいいけどな」
「興味が……」
「おいっ」
興味ないとか言うな。
フィオはまだオブラートを買ってないのか。
もう箱買いしておけ。
「それで、正体はなんなんだ?」
「……貴方たちの先輩にあたるゴーレムよ」
「お姉ちゃん?! もしくは、お兄ちゃん?!」
「良い顔するなぁ」
興味なかったはずなんだけどな。
リアクションが百点満点だよ。
ついでに、お嬢も置いてけぼりだ。興味がない素振りを見せておいて、これだからな。すん、としてる。
そのうち慣れるだろ。お互いに。
「じゃあな、骨の先輩」
「さようなら、ホネー・ガイスト」
「いや、勝手に名前つけるなよ」
もう愛着湧いたのか。なんか軽く手を振ってるし。
フィオに捨て犬や捨て猫は見せられないな。
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