判明
俺たちが案内をすると言うと、ディジーは俺たちが開けた鉄格子の穴から館の敷地に入った。
当然、俺たちはディジーの前をいって案内をする。
後ろでもよかったが流石にそれは気が引けた。
いくら従魔になったとはいえ、よく知らない魔物に背後を取られるのは気分がよくないだろうからな。
フィオもそれに不満はないみたいだし、最初はこの調子でいった方が良いのかも知れない。
そんなことを考えながら庭の跡地を進んでいると館の正面に到着した。
庭の跡地にディジーの興味を引くものはなかったらしい。まさに素通りだった。
まぁ、案内の本番はここからだ。
「俺たちはここから出てきたんだ」
「ここに見えない壁は?」
「なかったかな」
「そう」
それを確認したディジーはまた俺たちに案内をするように促す。
俺たちはその指示に従って扉を開けて入っていく。
ディジーも俺たちに続いて館に入って来たが、初対面時の目つきの鋭さが戻っている。
それも当然だなと俺は思う。
だって、入って早々に見たものが動かなくなったゾンビの山だからな。
警戒も仕方ない。
「……これは?」
「ここにいた赤い骨が作ったゾンビの山だ」
「私たちがやったわけじゃないからね?」
「そうみたいね」
ディジーは近くにあったゾンビの成れの果てを足で転がして切り傷を確認してからそう言った。お行儀悪いぞ。
そして、次に目についたのは赤い砂山だった。
「それで、こっちはなに?」
「それがさっき言ってた赤い骨だな」
「正確には赤い骨だったものだけどね」
それを聞いたディジーは赤い砂山に近づいて観察し始めた。
手に持っている鈍器……じゃなくて杖で赤い砂山を突いてみたり、拾って匂いを嗅いだり手触りを確かめてる。
アーモンド臭でもするのか? 事件の真相がわかりそうな仕草だな。
「なにかわかるのか?」
「いいえ、全くわからない」
「そうか……」
じゃあ、今のはただ名探偵っぽい仕草をしただけってことか。
まぁ、実際はそんなもんか。
きっとなにか気になったんだろうけど収穫はなかったわけだ。
「行きましょう」
「ああ、わかった」
そこから俺たちは意外とすんなり目的地まで辿り着いた。
道なんてほとんど覚えてなかったが、全く問題なかった。
なぜなら、少し進むとゾンビの成れの果てが転がっているからだ。それを辿って行けば自ずと目的地には着く。
ヘンゼルとグレーテルもびっくりなゾンビ屑を目印にしたってわけだ。最高だな。
因みに俺のローブを手に入れた部屋にも案内しようとしたが断られた。先にフィオの棺が見たいらしい。
そうして、俺たちはフィオの部屋に辿り着いた。別に玉ねぎ頭のフィオとお喋りする部屋じゃないが、仮に部屋の名前を決めてみた。
フィオの部屋に入ってみると、相変わらず棺と棺の蓋が転がっているだけで家具もそのままだ。
俺とフィオがちょっとした懐かしさを感じてる間に、ディジーはそそくさと棺に近づいて調べ始めた。
ディジーは棺に触れてしばらく考えごとをしていたが、今度は机に置いてあったものを読み始める。
忙しないな。もっと落ち着いても良いと思う。
しかし、状況はよくないらしい。
遂になにかわかるのかと楽観的に考えていた俺を置いていくように、ディジーの表情は険しいものへと変わっていった。書類を読み進めていくにつれてそれは顕著になり、声をかけることすらできない雰囲気になっていった。
しかし、状況は俺の予想を超えてきた。
「面倒くさ……」
面倒くさいらしい。
本音が余すことなく漏れてる。
たぶんセンシティブなことが書いてあるんだろう。しかし、そのセンシティブでショッキングな内容を上回る面倒くさいという感情。
もうここまで来るとワクワクしちゃうね。
「漏れてるぞ。本音が」
「そうね。ごめんなさい」
「それで、なにかわかった?」
声の張りのなさからして、あきらかにテンション下がってるな。
フィオも聞くこと聞いてさっさとディジーを開放してやりたいみたいだ。
「貴方たちの正体がわかった」
「ほう」
「まず、ポルターは全身がヤスリで無機物への魂の転写実験によってできたゴーレムらしいわ。その霧みたいな姿形については捕獲されないとかヤスリとしての機能を十分に発揮するためとか色々書いてある」
「マジか。設定もりもりだな」
ヤスリはなんとなくわかってたけど、このなりでゴーレムって。
霊的な魔物だと思ってたら、思いっ切り人工物じゃねえか。
それに魂の転写ってなんだ。人の脳みそコピペしてロボットに突っ込んでみましたってか?
無駄にハイスペックなことしやがって。
「しかも、ポルターは別の世界から無差別に死んだ人間の魂を引っ張ってきたって書いてある。そうなの?」
「そうなの。受け入れるまで苦労したもんだ」
「そう。ややこしい話だから逆に興味がなくなるわね」
「別にいいけど、本人の目の前でよく言えたな」
ちょっとは異世界とかに興味を持ってくれ。
俺のアイデンティティが揺らぐ。
「それで次はフィオね」
「うん」
サクサク進むなぁ。
切り替えも恐ろしく早い。
本当に面倒くさいんだな……。
「フィオは死体から造った人並みの知能を持ったゴーレムで、魂の保持実験が目的だったらしいわ。発想がありきたりね」
「最後の一言は余計だぞ」
「結構凄いゴーレムだと思うけど、私ってありきたりなんだね……」
ほら、落ち込んだぁ。
なんで最後に落ち込むこと言うかなぁ。興味ないとかありきたりとか。
「それはともかく、フィオって有名人だったのね」
「え? まあ、そうかな」
どういうことだ?
フィオもちょっと機嫌治ってるし。
「なになに? 気になるんだけど」
「フィオは武神っいう有名人だったらしいわ。私も詳しくは知らないけど、ゴーレムの素材に選ばれるだけの強さを持った武闘家って書いてある」
「物騒な人だったのかぁ」
急に少年漫画みたいだな。
もうファンタジーすぎて手からビームが出ても驚かない自信がある。
「でも、約三百年前の話らしいわ」
「三百年前?!」
「……そんなに」
前言撤回、驚いた。
リアル浦島太郎だ。
流石に本人も驚いて固まってるぞ。
「百年くらいだと思ってたのに……」
「その程度の驚きなのか?」
もっとショックを受けてるかと思ったけど、そうでもないみたいだな。
ポジティブ担当は肝が座ってる。
「だって、外の様子が変だったから」
「そう言われると、そうだけどさ」
「それに、死んでることに比べたら……ね?」
「……確かにな」
それと比べたらなんでも大したことないな。
俺もこれからはそう考えよう。
「平気そうで良かったわ」
「心配かけて、ごめんね」
仲が良さそうでなによりだ。
話はまだ終わってないし、聞きたいことがまだある。
変に空気が重くなると聞き辛い。
「てか、武神ってなにさ」
「そこまでは書いてなかったわね」
神を名乗るって、テンションの高さがうかがえる。
称号がデカい。
「確か昔どこかの大会で優勝したら、そう呼ばれるようになっちゃった」
「「へー」」
キングオブコント的なことか?
それで神を名乗るって相当だな。カルチャーショックだ。
しかし、もうなんでもありだな。
そりゃ、面倒くさいと思って当然だ。
設定がややこしい上にディジーは触れてこないが、話の流れ的にしれっと両方殺されてるし。
もうお腹いっぱいだ。
「あと貴方たちは設計上だと絶対に壊れないそうよ」
はい、追加注文入りましたー。
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