よろしく
「それで貴方たちは何者なの?」
切り替えが早いなぁ。
さっきまでお互いに探り探りだったのに。
いや、もちろん警戒はまだされているけど、あきらかに遠慮がなくなった気がする。
「たぶんだが、魔物だと思う」
「それは聞いた」
そうなんだけどさ。
それ以外の答えがないんだよ。
どうしたもんか。
「えっとね」
「実は俺たちもよくわかってないんだ」
「どういうこと?」
まぁ、そうなるよな。
俺たちがわかってないってことは、俺たちのご主人様は更にわかってないだろうからな。
そうなると俺たちもしっかり整理しつつ説明しないと。
「まず、俺は起きたらいきなりこの体で館の中にいたんだ」
「この体?」
そこに引っかかるか。
起きたら館の中の方に引っかかると思ってた。
「そうだ。前の体は普通の人間の体だ」
「よくわからないけど、続けて」
「ああ。俺もよくわからなかったから、とにかく周りを調べてみることにしたんだ」
動きの練習は割愛する。
話すほどのことじゃないし別に面白みもない。
「けど、俺が目覚めた部屋はこれといってなにもなかった。だから、俺はその部屋から出ることにしたんだ」
「……」
「そして、移動した部屋でフィオを発見した」
「発見されました」
「……どういうこと?」
ここは俺も不思議に思うところだと思う。
遭遇とか出会ったとかじゃなくて発見だからな。
フィオの元気良く俺に続いてるところが、より意味不明さに拍車をかける。
もっと神妙に話すような話題なのに楽しそうに言うからな。かくれんぼ気分か。
ポジティブ担当は絶好調だ。
「えっとだな、移動した部屋でフィオは棺みたいなのに入ってたんだ。そして、俺が棺から出した」
「そうそう」
「棺?」
今度はそこか。
正確には棺かどうかはわからないが、詳しく説明した方がいいんだろうな。
「普通の棺じゃなくて水晶みたいな素材だったな」
「触った感じも石みたいだったよ」
「そう……」
無茶苦茶考え込んでるな。
なにか思い当たることがあるのかもしれない。
まぁ、今は話を聞いただけだから、確信を持てないんだろう。
このまま話を続けた方がよさそうだ。
「そこで俺たちは自分たちが魔物だと確認し合ったんだ」
「見るからに魔物だしね」
「まぁ、そうね」
あの時はいろいろと戸惑うことが多くて大変だった。
俺の体もそうだがフィオの怪力もあったし、慣れるまでは少し手こずった。
今もまだ完全に慣れたとは言い難いけど。
「それからは従魔になろうって決めたり、館の中のゾンビを倒したりしながら出口を探してたの」
「そうして、二人でようやく館から脱出したところっわけだ」
「…………そう」
これで俺たちが知ってることはほとんど話した。
話してみて気づいたけど、情報スッカスカだな。
不思議なことは沢山あったが全部原因不明だし。
そりゃ、考え込むか。
「というか、まずはこの鉄格子開けようよ」
「ん? ああ、鉄格子越しに話すのも変か」
それもそうだな。
なんとなく気にしてなかったが、改めて指摘されると気になるな。
それだけ俺も余裕がなかったってことか。
今はもう従魔にしてもらえるって話はついたから、ある程度は落ち着いた。
「開けていいよね?」
「……ええ」
ご主人様の許可も貰ったので俺は鉄格子を削って開けることにした。
俺はいつも通り腕を伸ばして鉄格子を削ると、一瞬だけなにかが弾けるような感覚があった。だが、概ねいつも通り削ることができた。
あと俺の行為に驚いたのかご主人様は削った鉄格子を睨みつけている。しかし、それを無視してフィオは俺が開けた切り口から持ち前の怪力で鉄格子の穴を広げていく。
当然ご主人様も俺たちのことを普通じゃないとは思っていただろうが、いきなり鉄格子を破壊しだしたから驚いている。
鉄格子を睨みつけてた目が今度はこっちを見てる。
誰も入れなかった館とか言ってたから、それ込みでも驚いているのかもな。
「それはなに?」
「私たちの特技かな?」
「能力と言えるかもな」
足が速いとか握力が強いとか頭が良いってのも立派な能力だしな。
特別な言い方はない。
これで俺たちは能力の紹介もできて、鉄格子も破壊できたから一石二鳥だ。
ご主人様はいよいよ俺たちのことがよくわからなくなってきて、眉間に皺ができてるが気にしない。
辛抱強く最後まで面倒見てくれ。
「とにかく、やっと正真正銘の脱出だな」
「中にどれくらいいたかはわからないけど、長かったね」
「そうだな」
本当に長かった気がする。
こんな脱出ゲームがあったら苦情殺到だろうな。
脱出できたからまだいいけど。
「話は逸れたが、俺たちのことはわかったか?」
「いいえ、全く」
「だろうな」
自分で聞いておいてなんだが、そんな気はしてた。
まぁ、先は長いだろうからお互いゆっくり知っていけばいい。
「因みに私の名前はさっきちらっと出たけどフィオで、こっちがポルター・ガイストね」
「名字があるのは欲張っただけだから気にしないでくれ」
……またやってしまった。確かフィオの時もしたな。
名乗る前に話を進める悪い癖。
フィオが名乗るまで気づかなかった。
これは後で注意されるな。自己紹介が遅れたことと大事な交渉を鉄格子を挟んでしたことを。
さっきちらっとフィオに見られたし。
今はとりあえず話を進めよう。ご主人様にはバレてない。
「それでそちらは?」
「冒険者で魔術師のディジーよ」
魔術師だってさ。それに冒険者ときた。
凄いファンタジーしてきた。
なんかこうワクワクしてくる。
しかし、そうなるとご主人様が手に持ってる鈍器は杖的なやつなんだろうな。どう見ても鈍器にしか見えないけど。
「改めて、よろしくな」
「こちらこそ、改めてよろしく」
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