お願い
「びっくりしてると思うけど、とりあえず話を聞いてください」
「お願い!」
俺たちはまず話を聞いてもらうために頭を下げた。
誠意を見せないとな。
初対面な上に化け物なんだ。できる限り相手が安心できるように、こっちは下手に接する。
「……話は聞く」
「助かるよ」
「ありがとうね」
警戒は解いてないが、ひとまず話は聞いてくれるみたいだ。
実際はどう思っているか知らないけど、怖がられてはいないな。
この調子で話を進めたい。
「会ってすぐにこういうことを言うのもなんだが、一つお願いがあるんだ」
「一つだけだから」
「……それは、なに?」
一気に空気が変わった気がするな。相手の表情は変わってないが、声の雰囲気がピリッとしてる。
別に命を差し出せみたいな怖いことは言わないのに。
引っ張ると変な誤解が生まれそうだな。単刀直入でいくべきだな。
「俺たちを従魔にしてほしいんだ」
「はぁ?」
できるだけ軽い感じで言ったつもりだ。スマホの充電器を借りる時くらい軽い感じで言った。
軽すぎたか?
それとも従魔のことを知らないとか?
フィオは知っていたが、実は一般的なことじゃないのか?
そうなると少し厄介だな。
「私たちって、こう見えて魔物なの」
「たぶんな」
「それは見ればわかる」
そうだよな。白黒の二人組だもんな。
しかし、確認はしておかないとな。お互いに。
「一応言っといた方が良いと思ってな」
「それで?」
従魔について聞き返してこないってことは知ってるのか。
なら、さっきの『はぁ?』は咄嗟のことで理解できなかっただけか。
言い方が軽すぎたんだな。たぶん。
ちゃんと説明しないと話が拗れそうだ。
「それでね。二人で相談して人間に殺されたくないから、従魔になろうって決めたの」
「そこで、さっきのお願いだ」
「どうかな?」
概ねフィオの言ったことが全てだ。
魔物は人間にとって脅威だと以前フィオから聞いた。なら、当然俺たちは駆除対象だと思う。
冗談じゃない。生まれてすぐにお尋ね者は嫌だ。
お尋ね者になるくらいなら、人間の管理下に入った方がマシだ。
そのために従魔になる。
それが俺たちの選択だ。フィオの友好的でいたいという願いと俺の危険は避けたいという願望の折衷案。
もちろん、断られる確率の方が高いだろう。いきなり得体のしれない魔物が仲間に入れてくれって言ってるんだからな。
断られたら逃げることになるだろうな。敵対はできない。それがフィオの要望だからな。
そうなったら、他の――。
「いいわよ」
「……」
「……」
……こんなもんなのか?
もうちょっと悩むもんじゃないのか?
犬や猫を飼う時だって、もっと考えるもんだ。
それなのに、即答ではないにしてもこの早さ。
これが普通ならカルチャーショックだ。
と思ったけど、どうやら違うらしい。
フィオの顔が物語っている。口が半開きでポカンとしてる。
フィオもこの早さには驚きを隠せてない。もちろん、俺も。
「……」
「……」
「なに?」
いや、なにって。
この人にとってはこれが普通なのか?
だとしたら、俺たち初遭遇にして凄いの引いたな。
「決断が早いなと思ってさ……」
「こっちからお願いしておいてなんだけど、軽率じゃない? もうちょっと考えてもいいんだよ?」
ほらもう、フィオお姉さん心配しちゃってるよ。
初遭遇時のテンションはどこ行ったよ。今どんな心境なのか全文顔に書いてあるぞ。
こっちから変なお願いしておいて、この有り様ってそうそうないと思う。
「別に構わないわ」
「そうなの?」
言い切るねぇ。
というか、聞き返すな。
せっかく従魔にしてもいいって言ってるのに、『やめてもいいんだよ?』みたいな言い方で確認を取るな。
一応今のところ上手い具合に話は進んでるんだ。こっちの頭はついて行けてないけども。
しかし、理由は聞きたいな。
「因みにどういった理由で?」
「ここまでの会話が成立させられるだけの知能がある魔物は貴重だし、今まで人が入れなかった館から出てきた魔物には興味があるわ。それになにより、話を聞かなければならないことが多い。そして、最後に貴方たちと関わる危険性はあるけど、立場的に無視もできない。……こんなところね」
「なるほど」
なるほどって言ったけど、よくわかってないです。
なんていうか聞き取れたし意味も理解はしたが、一気に言うから頭が追いついてない感じ。
お察しの通りフィオはまたポカンとしてる。
お互いに圧倒された。
もっと質疑応答が続くと思っていたのに、いきなり終わった。
実は従魔の扱いって、もっと軽い感じなのか?
いや、危険性がどうとか言ってたしな。
わけがわからない。
「それに貴方たちの提案を拒否して、逃げることは不可能と判断したってのもあるわね」
「別になにもしないけど、そっか」
「なんか頭良さそうだな」
インパクトが凄まじい人間に当たった。
俺たちは死んでるとか人じゃないとか気にしてたけど、生きてる人間も大概だ。
敵対しないで本当によかった。
流石にここまで癖の強い人間は多数派じゃないだろうが、それでも似たようなやつらに狙われ続けるのは御免だ。
あと如何にフィオが穏やかなのか思い知らされる。ありがたいことだ。
「とにかく、これからよろしく」
「よろしくね」
「こちらこそ、よろしくな」
そして、これからはこの即断即決の人間が俺たちのご主人様ってことになる。
やっていけるかな……。
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