予想外
俺たちは鍵のかかっていた扉を無理矢理開けた。
そして、エントランスホールの扉から外に出ると、そこにはなんとも言えない微妙な景色が広がっていた。
「館にぴったりな辛気臭い庭だな」
「そうだね」
扉の先には庭の跡地があった。
庭の跡地は土が剥き出しで酷い状態だった。誰も手入れなどしていないことは明白だ。しかし、放置していたなら生い茂るはずの雑草の類いは一切ない。その様子が庭の跡地を不穏な空気で満たしていた。
「無駄に広いし」
「館の大きさ的には丁度よさそうだけどね」
振り返ってみて俺は初めて館の全容を見た。
デカい。あとちょっと高い。
館は縦にも横にもそこそこある。屋根は黒く壁は真っ白というよりかはオフホワイトって感じだ。
こんなところにいたのか。よく出てこられたもんだ。
しかし、視線を正面に戻すと、ただただ広い荒れた庭。
確かにフィオの言う通りで、館に対して丁度いい広さの庭かもな。
「にしても、初めての外がこれって最悪だな」
「確かにね。どうせなら綺麗なところが良かった」
太陽の光に照らされて輝く芝生が見たかった。大きな木の葉で視界を埋め尽くしていてもよかった。
なんていうか。癒し。そう、癒しがほしかった。
「天気も曇ってるし」
「流石に天気は仕方ないよ」
フィオはそう言うが苦笑いだ。きっと晴れた空が見たかったはずだ。少なくとも、曇よりはずっと良い。
そりゃそうだ。鈍色の空に茶色の大地が広がってんだ。
世紀末じゃあるまいし。核戦争でもしたのかって感じだ。してないだろうけど。
「……まぁ、とりあえず敷地から出る方法を探すか」
「正面の方か裏の方かな」
正面玄関か裏門的なことかな。
裏門はどこにあるかわからないなぁ。館をぐるっと回ればあるかもしれないが、正直探すのは面倒だ。
それなら真っ直ぐ行った方が楽そうだな。
「まずは正面の方から行ってみるか」
「うん」
そうして俺たちは荒れた庭を突っ切って正面に進んで行くことにした。
荒れた庭は枯れた低木やよくわからない石像があり、以前の美しかった頃の面影を残していた。
「この感じだと、館の主はフィオの言ってた領主ってことになるのか?」
「かなぁ?」
この庭がもし綺麗だったら世界遺産レベルだと思う。
歴史的な名所って言葉がしっくりくる規模の大きさだ。
「でも、こんなところに来た覚えもないから、やっぱりわからないなぁ」
「俺もわからん」
こっちの住人のフィオが見たことない景色なら、はっきり言ってお手上げだ。
写真とかがあれば館の見た目から場所や地名くらいはわかりそうだが、ないんだろうな。館でも見なかったし。
「もっと外のことが知りたいな」
「そうだね。ここも正確には館の庭だしね」
確かにまだ敷地内だ。外とは言い切れない。
ここで今の状況がわかりそうな物はもうないか。
「あれは、門かな?」
「それっぽいな」
ただ喋りながら庭を進んでいると、ようやく門らしきものが見えてきた。
これで本当の意味で外に出れると思っていた俺たちだったが。
そこで俺たちは思いもよらぬものと遭遇した。
それは荒れた庭の先にあった鉄格子の門のことではなく、初めての生きた人間との遭遇だった。
「……」
「実際に人と会った時のことはまだ話してなかったね」
「そうだな……」
こんなところで遭遇するとは思ってなかった。
別に遭遇するタイミングを予想してたわけじゃないが、漠然ともっと後だと思っていた。
「……」
「……」
「……」
お互いに驚きすぎて鉄格子を挟んで固まってる。
とりあえず、落ち着かないとな。
まず、初めて会った人間は茶色の波打つ髪を肩まで伸ばした目つきの鋭い女性だった。歳はおそらく見た目からして成人したばかりに見えるが、目つきから伺えるように幼さは感じられない。むしろ、身に纏う薄汚れた深い灰色のローブから荒事を得意とした雰囲気を感じる。最後に、右手の杖らしきものは物々しい見た目をしている。素材は金属製で人を殴り殺すには十分な大きさがある。それは杖なのか? 鈍器じゃないのか?
初めての人間にしてはインパクトが強い。さっき戦った人骨よりも強そうに見える。
あとフィオが相手の胸と自分の胸をしきりに比べてる。
ああ、デカいよ。あちらさんは。
けどな、世が世ならセクハラだからやめなさい。世界線を飛び越えて訴えられるぞ。
幸いというかなんというか、フィオの表情からして嫉妬とかではなく羨望や感動の色が強い。しかし、こっちをちらちら見て共感を求めるな。
マジで、やめろ。
隣りにいる俺の品性まで疑われる。本当にやめてくれ。第一印象がスカイダイビングしてる。
「えっと、だな……」
「ちょっと、そこのお嬢さん。どうもはじめまして」
流石ポジティブ担当。
躊躇なくいく。噂に聞くスカウトマンってこんな感じなのか?
俺も勢いだけは見習うべきだと思う。けど、あの食いつき方はあとで注意しようと思う。
「そうだな、挨拶は大事だな。ということで、はじめまして」
「…………どうも」
かなり警戒されている気がするな。当たり前だ。
俺は初めての生きてる人間に緊張した雰囲気を出してるし、フィオは年下の美人を見つけてウキウキしてる。
そりゃ、警戒もする。
ここはフィオのポジティブさを見習って、怖がられてないことを喜ぶべきだな。
うん、そう思うしかない。
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