擦り付け合い
「しかも、なぜか骨の周りにゾンビが倒れてるし」
「結構な数だね」
真紅の人骨の周りには大量のゾンビが倒れていた。しかも、それは真紅の人骨を取り囲むような配置だった。
あきらかにあそこでなにか起きたことはわかる。
真紅の人骨がこの光景を作った犯人なんだろう。
しかし、そのなにかがわからない。
ただ真紅の人骨の存在がその場の不気味さを際立たせていた。
「最悪の光景だな」
「けど、ゾンビは動きそうにないね」
確かにゾンビは動きそうにない。骨を目立たせるためのインテリアみたいになってるな。
よく見たらさっきまでのゾンビと違って薄汚い。少し腐敗が進んでる上にカサカサしていて乾いてる感じだ。中にはミイラのようになっているゾンビもいる。
「死んでるのか?」
「少し言い方が間違ってるけど、そうみたい」
壊れてるもしくは戻ってるって感じか。
そうなると、あの骨が大量のゾンビを処理したことになる。
難しいことじゃないだろうが、やっぱり異様だ。
あそこに大量のゾンビが倒れているってことは、全てあそこで処理したことになる。
あの骨の目的がゾンビ処理ならゾンビを探しに徘徊でもしてるはずだ。しかし、実際はエントランスホールの出口の前に立ち止まっている。
だとすると、ゾンビ処理が目的じゃない。
あそこにいることが目的なんだ。
そして、結果としてゾンビを処理した。出口もしくは骨に近づいて来たゾンビを処理したってことか。
「あの骨は門番なのかもな」
「内側に門番はおかしいと思うけど」
仰る通りだ。
普通は外にいて内を守るイメージだよな。
俺もだ。
「でも、俺たちは外に出ようとしてるだろう?」
「それは、そうだけど」
「なら、門番と思った方がしっくりくる」
「うーん、確かに」
根拠はゾンビだけだ。
ほとんどカンみたいなものだ。
それでも、今の状況はこの推測がしっくりくる。
「まぁ、あの骨の役割をこれ以上考えても仕方ない」
「確かにそうだね」
別に俺の推測なんて外れても大丈夫だ。
なんの問題もない。
遊びみたいなもんだ。
「きっと素通りは無理だろうしね」
「襲い掛かってくるお決まりのパターンだ」
ゾンビがそうなってるからな。
今は結構な距離をあけて見ているから大丈夫だが、一定の距離を越えると襲い掛かってくるんだろう。
「実はただの置物だったりして」
「話のオチとしては弱いな」
流石にない。
あんな怪しい人骨がただの置物でしたはスベってる。
まだ実は弱かったの方が面白い。
俺の好みの問題だけど。
「なにそれ?」
君にはわからんかね。
わからんだろうね。
なに言ってんだこいつみたいな顔をしている君には。
「それだったら転がってるゾンビが動き出す方が、まだ意外性もあって衝撃的で面白いな」
「それは汚れそうだから嫌だなぁ……」
そうなるとかなり汚れるだろうな。フィオはゾンビ処理をしている時も、地味に汚れないように気をつけてたしな。俺にはそう見えた。
それにフィオは白だから汚れが余計に目立つ。
全く目出度くない紅白柄の出来上がりだ。
「……」
「……」
まぁ、そろそろ限界か。
さっきからお互いに意味のない話を続けていたわけだが。
無駄話の話題が尽きてしまった。
この話をする時が来てしまったか。
「それで、どっちが行く?」
「ポルターが行けば?」
早い。今までの返事の中で一番早いぞ。
それだけフィオの気持ちが伝わって来る。
そうだよな。あんな露骨にヤバい骨と戦いたくないよな。
わかるぞ。でもな……。
それは俺もだ。すげぇ嫌だ。
だから、フィオがやってくれ。
「素人にあんな厳つい骨はキツいって」
「経験者でも初見は危ないんだよ?」
なるほどな。
そりゃ、そうだよな。
プロなら対戦相手はよく調べるもんだ。突発的に発生した喧嘩じゃないもんな。
しかし、そう言われるとこう返すしかなくなるんだ。
「なら、素人はもっと危ないだろ」
「ポルター死なないし」
出たよ、謎のポルター死なない説。
全く根拠がないのに乱用される定説。死んだら恨んで枕元に出てやろうか。
というか、俺には失いたくない物ができた。
「仮に俺が死なないとしても、お気にのローブが破れるだろ」
「私ってローブ以下なの?」
「フィオも死なないから大丈夫だ」
恋人みたいなこと言いやがって。
そうだよ。ローブ以下だよ。だって、フィオも死なないかもしれないからな。
死なない説はそっちが先に言い出したことだからな。
俺が死なないなら、フィオも死なない説は成立する。そもそも根拠がないからな。言いたい放題だ。
「ポルターの方が絶対に死なないと思う」
「まだわからんだろ」
しつこいな。お互いに。
微妙にどっちがより死にそうにないかっていう話題に脱線してるし。
どっちも決め手に欠けてるな。
なら、ここは素直にいくか。
「頼むよ」
ローブの裾をすり合わせてない頭を下げる。
俺の数少ない長所の素直さを全面に押し出す。
怖いからな。改めて思うが素人がやる相手じゃないと思う。
先輩お願いします。
「…………なにか埋め合わせしてね」
「ああ、わかった」
なんでもする。危ないこと以外。
フィオの顔がほぼ無表情だ。俺はなにをさせられるのか。
ただはっきりわかることは、あの骨と戦うよりは絶対にマシということだ。
「じゃあ、兎に角近づいてみるよ」
「気をつけてな」
フィオは大きな溜め息をついてから真紅の人骨の方へ歩いて行った。
そうして、フィオが倒れているゾンビを踏み越えて真紅の人骨に近づいてみると、案の定、俺たちの予想通りに真紅の人骨は躊躇なくフィオを斬りつけた。
「……怖っ」
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