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進展

 それから俺たちは部屋を物色しつつ休憩を続けた。


 しかし、これといった発見はなく部屋を荒らしただけに終わった。


 それはもう泥棒でも入ったのかて感じに荒らした。別に悪意をもって荒らしたわけじゃない。結果的にそうなっただけだ。俺は家具をボロボロにして、フィオは興味がなくなった物を投げ捨てただけだ。


 そんなちらかし放題の部屋にいつまでも留まるつもりはなかったので、俺たちは休憩を終えて部屋を出ることにした。


 そこからは休憩前と同じでゾンビ処理だ。


 彼方此方に移動してなにかないかと探検もしていた。


 ただし、一つ休憩前と違うのはフィオが参戦してくれるようになったことだ。理由としては自分も怪力に慣れるためだそうだ。


 そのおかげで、ゾンビ処理のスピードもかなり上がった。例えるなら、武将が戦場で敵を薙ぎ払いながら駆け抜けるゲームばりに速くなった。


 超楽だった。


 フィオが高速で動くと突風が発生するから、俺はそれに乗って移動すればかなり速く動けた。新たな発見といえば発見といえる。


 その代わりにといってはなんだが、もう俺たちがどの方向に向かっていたかさっぱりわからなくなった。


 まぁ、元から迷子みたいなものだったからほとんど変わらないけどな。


 だから、いつも通りに雑談しつつ今も徘徊している。


「しかし、このローブは本当に当たりだったな」

「そうだね。他は書類ばっかりだったし」


 このローブはかなり性能がいい。テフロン加工されたフライパンみたいに汚れを弾いてくれる。ゾンビの血肉もへっちゃらだ。


 正直、俺はローブを手に入れてから他の物には興味はなかった。


 フィオは今になって気になるものがあったらしいが。


 本とか書類みたいな文字ばかりのものは無視してたからな。


「ちょっとくらいなにか読んで、調べた方が良かったんじゃないか?」

「もちろん軽く目は通したけど、魔術師じゃないから全くわからないの」


 無視してたけど興味はあったのか。


 しかし、軽く目を通しただけじゃ理解できなかったと。


「学んでないからわからない感じか」

「ごめんね」


 ん?


 なんで謝ってるんだ?


 わからないなら仕方ないだろうに。


「別に謝ることじゃないだろ。俺に関してはなにもかも、全部わからないからな」

「そっか」


 俺だっていきなりなにかの専門書を渡されても読まないし、もし読んでも理解できない。


「まさか、今になって読んでおけば良かったとでも思ってるのか?」

「……うん」


 別にそんなこと気にしなくても。


「それで申し訳なく思ってると?」

「そう」


 律儀だなぁ。


 流石に気にしすぎだ。


 きっとあの時なにか読んでいても、結局なにもわからないままだったはずだ。


 今となにも変わらない。フィオもそれはわかってるはずだ。


 にもかかわらず、この落ち込みようはおかしい。


 館に篭もりっきりで情緒が不安定になってるのか?


 見るからにアウトドア派っほいしな。


 どっちか一人は明るくなってもらわないと困る。


「それになにより、このローブが手に入ったのはフィオのおかげだからな」

「そうかな?」


 フィオがミイラから剥ぎ取ったから、こうして俺が着られてるんだ。ミイラには悪いけどな。


「そうだよ。着心地も良いし、見た目もただの黒い霧からローブを着た悪霊になって、なんだか格が上がった気がする」

「そっか」


 人っぽさの格も上がった感じがする。


 根拠はないけどな。


「それにローブは袖があるから、腕を意識しやすくて良い感じだ。ゾンビの処理も若干楽になった」

「なら、良かったよ」


 表情がマシになったな。


 ポジティブ担当はそうあってほしい。俺が勝手に決めただけなんだけどな。


 こんな辛気臭い館では明るいに越したことはない。暗い雰囲気だと気が滅入るからな。


 なんとかして早く脱出したい。



 ◆◆◆



 そう思いながら俺たちは出口を探し続けた。


 もちろん暗い雰囲気にならないように気をつけながら移動していた。


 すると長くて暗い廊下からエントランスホールのような広い空間に出た。


 エントランスホールは今までの薄気味悪い廊下とは違って、窓から日光と思われる光が差し込んでいて清らかな空間に思えた。


 そして、奥には凝った装飾の扉があった。


 その扉はただひっそりとそこ存在するだけだが、ここから出る数少ない方法の一つだと雄弁に示していた。


「あれはもしや」

「出口かもね」


 扉を見つけただけで、ここまで俺たちの声が明るくなるとは。


 思っていた以上に切羽詰まっていたんだな。


「本当に出口まで遠かったな」

「だね」


 感動的な一時だ。


 しばらくここでお互いに苦労話をしつつ休憩していたい気分だ。


 しかし、そういう雰囲気をぶち壊すものが一つある。


 本当は見なかったことにしたいが、たぶん無理なんだろうなぁ。


「ヤバそうなのがいるな」

「あんなの見たことないよ」


 フィオが見たことないなら俺なんてさっぱりだ。


 なんとなくヤバいということしかわからない。


「怪しすぎるだろ」

「露骨すぎだよね」


 エントランスホールの中央には真紅の人骨が同じく真紅の剣を片手に佇んでいた。


 その様は俺たちのことを待っていたかのようでもある。気のせいだと思うけどな。というか、気のせいだと思いたい。


 あんな危険極まりないものと待ち合わせはしてない。今すぐ帰ってくれ。


 今回ばかりはフィオも同じ気持ちのようだ。


 とても嫌そうな顔をしている。


 絶対になにか起きる。


 なにも起きない方が怪しい。


 俺は一縷の望みをこめて願う。


「動きませんように」

「絶対に動くと思うよ」


 そういうことを言うな。


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