休憩
嫌だ、と伝えたつもりだったが俺の願いは聞き届けられなかった。
普通に論破された。
『やるしかないよ』と言う一言で。
まぁ、わかってはいた。やるしかないのは。
しかし、あそこまでやる必要はあったのか今でも疑問に思う。
最初の五体のゾンビを仕留めたあとは、黙々とゾンビの処理をさせられた。
十体を超えたあたりからは数えるのが面倒になってやめたが。
なにが大変って毎回ゾンビの殺し方を変えろと言われたことだ。
それで、いろいろと俺に戦闘の幅を持たせたかったらしい。基礎とかは人じゃないから、あんまり気にしなくていいそうだ。
だから、指示通りに毎回殺し方を変えてみた。
首をはねるように削りとったり、体当たりしてみたり、不定形の体を活かしてゾンビの死角から攻撃してみたりした。
本当にいろいろと試した。
とはいえ、終盤に差し掛かってからはネタ切れだった。
そんなにやることない。こっちは浮いて動くか削るしかできない。
途中で腕を枝分かれさせて腕の本数を増やす方法も思いついたが、手数が増えるだけで今までとそう大差ない結果に終わった。
その代わり、戦闘には慣れた。
もちろん、肉や骨を削る時の気持ち悪さやゾンビの不気味さは慣れてないが、戦闘に対する抵抗はなくなった。
何事も慣れは大事だ。
それにしても、さっきから気になることがある。
「ゾンビが多すぎる気がするんだけど」
「それだけ沢山の人を雇ってたってことじゃない?」
俺はゾンビを縦に真っ二つにしながら感心した。
この館の主は本当に相当な金持ちらしい。羨ましいね。
「そういうものか?」
「多分ね」
一応確認してみたが、フィオも確信をもって言ったわけじゃないらしい。
しかし、このまま何体のゾンビを処理すりゃいいんだ……。
館のゾンビを全滅させるまでは流石にキツい。
「じゃあ、このあたりで一回休憩させてくれ」
「……そうだね。結構倒したし大丈夫かな。けど、どこでするの?」
変な間があったからビビった。足りないって言われるかと思った。
慣れはしたが、繰り返し作業は精神的に堪える。流石に休みたい。
しかし、休憩の場所ねぇ……。
廊下だとゾンビが来るからなし。
そうなると残る場所は一つしかない。
「突き当りの部屋でいいんじゃないか?」
「まぁ、そこしかないね」
フィオも納得してくれたので、俺たちは突き当りの部屋に入ることにした。
当然のように鍵がかかっていたが、俺が鍵穴を削って無理矢理入った。
「別の部屋が当たりだったか……」
「干乾びた死体と休憩は初めてかな」
せっかく見つけた休憩室でこれだ。
部屋の奥でミイラが椅子に座ってる。
まだ最初の部屋の方がマシに思えてくる。
「部屋変えるか?」
「私は別に大丈夫だよ」
「……なら、いいか」
他に部屋は見当たらなかったから仕方ない。
今から他の部屋を探しに行って、またゾンビ処理は面倒だし。
それなら、動かないミイラなんて可愛いもんだ。
展示物だと思えばいい。
「じゃあ、気分転換に部屋の物色でもしよっか」
「なにがじゃあかは知らないが賛成」
この部屋はミイラこそ欠点だが、本棚やら大きな机やらの結構家具が置かれている。
暇つぶしには丁度いい。
「まずは死体周りからかな」
「そこの本棚はいいのか?」
なにか調べるなら本がいいと思うんだけど。
「私は本が苦手なの」
「好みの問題なら仕方ないか」
所詮暇つぶしだしな。嫌々本なんか読んでも仕方ない。
それになにより、既にフィオは本棚には目もくれずミイラに一直線だ。
興味津々だな。
そうして、フィオが一番に目をつけたのはミイラの衣服だった。
「死体が着てるローブは結構良さそうだよ」
「値打ちものか?」
確かに綺麗なローブだと思う。
「詳しくはわからないけど凄いツルツル」
「本当に詳しくわかってないのな……」
そのローブは白地に金の刺繍が入った綺麗なローブだった。無駄な装飾はなく唯一特徴をあげるとするなら、顔をすっぽり隠せるようなフードが付いている。
こういう言い方はよくないかもしれないが、綺麗なパーカーみたいだ。
「確かに綺麗なローブだな」
「着てみたら?」
「いや、無理だろ」
着た瞬間にボロボロになる。
布は大丈夫ってことはない。ゾンビの衣服もしっかりボロボロに削ってたし。
「でも、ポルターは今全裸だよ?」
「体がないのに全裸って言うなよ……」
全裸とか言われると急に気になってくる。
隠すべき場所がないとしても。
「でも、なにも着てないし」
何回も言うな。
「そもそも俺が触ったらボロボロになるって」
「ものは試しにさ」
「……わかった」
なにがそこまでフィオを掻き立てるかは知らないが、暇つぶしだしな。
フィオは雑に死体からローブを引き剥がしてローブを持ち上げる。それから俺はローブの隙間から中に入って着てみた。
転がり落ちたミイラにはアーメンとか南無阿弥陀仏とか一応しておいた。
すると意外なことが起きた。
「……破れないな」
「……大丈夫そうだね」
ローブはボロボロになることはなく、普通に着ることができたのだ。
普段は使わないから腕を出してないが、袖に腕を通してみるとしっくりきた。
頭なんて意識してなかったがフードの部分に体を伸ばしてみると視界も生前の感じと似ていて良い感じだ。
これは掘り出し物だな。
「不思議だな……」
「凄いツルツルだから削れないのかな?」
どれだけツルツルなんだよ。摩擦係数ないのか?
……しかしだ。
「だとしたら、もう手放せない」
「唯一の衣服だもんね」
「ああ、そうだ。全裸は卒業だ」
安心感が凄い。
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