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訪問

 窓から差し込む朝日が美しい。


 俺はそんなことを考えながら朝のひと時を過ごしていた。


 今俺たちは宿の部屋でのんびり寛いで時間を潰している。昨日はあちこち歩き回ったりしたので流石にもう見に行くところもない。なので、ひとまずのんびりすることにしたのだ。そして、今は各々自由な時間を過ごしている。


 フィオは昨日と同じくソファに寝そべってリラックスしている。どうやらあのソファが気に入ったようだ。しかし、リラックスしすぎて死体感が増している。あれ以上酷くなるようなら、一言注意することにしよう。


 一方、お嬢はベクトルと一緒に持ち物の確認をしている。お嬢はテーブルに食べ物や飲み物を並べてどれくらいあるのか、どれくらい保つのか入念に確認している。干し肉を叩いてみたり、匂いを嗅いでみたりして状態の確認をしているらしい。飲み物に関しては、先ほど適当に振って残りの量を確認をしていた。中身は薄めの酒らしい。生水よりは日持ちするとかで念の為常備しているとか。とはいえ、飲んでいるところを見たことはない。お嬢は魔術で飲水も確保できるので、酒は本当に何かあった時用の物なのだろう。


 そして、ベクトルはお嬢の向い側で貨幣の確認をしている。昨日の夜、今まで後回しにしていた貨幣の両替を宿の店主と済ませていた。なので、今は所持金の確認をしているようだ。財布袋を縦に振ってガチャガチャと音を鳴らしている。そうして、音と重さで確認をしているらしい。国によって貨幣は当然異なるので、普段は一枚一枚確認しているが種類が揃っているならそれでわかるらしい。まったく器用な男だ。


 最後に俺はというと、特になにもしていない。強いて言うなら日向ぼっこをしている。そして、皆の様子をのんびり眺めているのだ。


 実に穏やかで素晴らしい朝だ。


 しかし、そろそろフィオを注意しにいくかな。目と口が半開きになっている。それは流石にリラックスしすぎだ。あれでは二度目の死を迎えているように見える。


 そんなことを考えていると突然ノックの音が聞こえてきた。


「誰か来た?」

「宿に?」


 ルームサービスなんてものはなかったはずだから、宿に誰か訪ねてくるというのは意外だな。


「ないことではないわ」

「ええ……どなたですか?」


 そう言って、ベクトルが扉越しに何者か尋ねた。すると相手はすぐに返事をしてくれる。


「パルプ・ヴァームです。昨日の秘書と言えば、わかりますか?」

「あぁ」

「ベクトル」

「はい。では、どうぞ」

「ありがとうございます」


 どうやら相手はパルプさんだったようだ。そうとわかれば部屋に入ってもらうべきだ。お嬢もベクトルに声をかけて扉を開けるように促した。そして、ベクトルが丁寧に扉を開けると、パルプさんは部屋に入ってそれぞれに朝の挨拶をしていった。


 昨日と違ってパルプさんに活き活きとした雰囲気を感じる。おそらくまだアデリナさんに困らされていないのだろう。よかったな。


「それで、どうしたんですか?」


 お嬢はベクトルが戻って来たことを確認してから、パルプさんに早速要件を尋ねる。


「通行の許可がおりたので、いち早くお知らせしようと」

「まだ朝なのに早いな」

「急がせましたので」


 おお、もう許可がおりたのか。


 ということは、今日中にゲブート隧道を通ってスターテア王国に辿り着けそうだな。もう少し時間がかかると思っていたが、ロベルトさんとパルプさんが頑張ってくれたらしい。


「それは良かったけど、スターテア王国もよく対応してくれたね。相当スターテア王国にも急がせたんでしょう? 大丈夫?」


 そう言って、フィオがパルプさんに声をかけた。


 まぁ、いくらロベルトさんとパルプさんが頑張ってくれたとしても、スターテア王国側にも事情はあるだろうからな。そのあたりは大丈夫だったのだろうか。


「そうですね。確かに急がせはしましたが、向こうとしてはもっと早くしてくれと急かされました」

「急かす?」


 パルプさんは苦笑いを浮かべながらも問題ないと言う。


 しかし、よくわからないな。スターテア王国側が急がされたことに対して苦情を言うならともかく、逆にサリーマギ共和国側に早くしてくれと苦情を言うのはおかしな気がする。


 それはフィオも思ったらしくパルプさんにどういうことか尋ねた。


 それに対して、パルプさんは困った顔で答える。


「スターテア王国としては少しでも早く神獣様御一行をお迎えしたいらしく……」

「そういうことか」

「変なところだね」

「そういう国ですから」


 そんな理由で苦情を言われたのか。ロベルトさんとパルプさんも大変だな。


 しかし、パルプさんは仕方なさそうな顔をしているので、そこまで非常識なことではないらしい。本当にそういうお国柄なんだろう。


「私たちはそういう変な国に行くためにここまで来たんでしょうが。パルプさん、お待たせしました」

「問題ありませんか?」

「はい。荷物は元々まとめていたので」

「そうですか。では、少しだけ手続きがあるので議事堂へ」

「わかりました」


 そう言って、お嬢は席を立った。そして、それに続いてベクトルも自分の分の荷物を持ち席を立つ。それを確認したパルプさんは議事堂に俺たちを案内するために先行して部屋を出た。


「ようやくだな」

「今度こそだね」


 今度こそ俺たちはスターテア王国に向う、そう考えると待った分気持ちは高ぶる。フィオもそれは俺と同じようで、大きな荷物を背負い楽しげに俺の言葉に答えた。


 そうして、俺とフィオも三人の後に続いた。


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