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もう一度

「いいもの見たな」

「そうだね」


 俺とフィオはレックスとルーフェちゃんの後ろ姿を見つめながらそう言った。


 ひとまずお嬢の気遣いで、完全に黙りこくってしまったレックスとルーフェちゃんは退散した。


 俺とフィオとしてはもう少し話を続けたかった。というのも、しばらく暗めの話が続いていたので、ああいう甘めの話は気分転換にぴったりなのだ。


 しかし、お嬢としてはレックスとルーフェちゃんの気まずい姿を見てられなかったらしい。レックスが喋らなくなった時点で助けに入った。そして、テオリオくんに先を促しレックスたちとは早々と別れる運びになった。


「向こうからしたらいい迷惑よ」

「そこまでじゃないだろ」

「そうだよ。ちょっとした雑談だよ」


 その通りだ。ちょっとした雑談にすぎない。


 お嬢はそう言うが別に俺たちは核心的なことは質問していないし、二人を急かすようなことは言っていない。デートと言っただけだ。


 しかし、それでもお嬢は呆れた顔でたしなめる。


「レックスはいいとしても、ルーフェちゃんはもう赤い彫像みたいになってたわ。やり過ぎよ」

「まぁ、確かになってたね」

「それにあれじゃあ息抜きになんてならない。あのまま二人とも黙りこくったまま帰ることを想像してみなさい。きっとエンリちゃんあたりが激怒するでしょうね」

「……それは困るな」


 エンリちゃんが怒鳴りこんで来たら確かに困る。一度激怒したらしばらく燃え続けるからな。今は別行動だが次会った時がうるさそうだ。エンリちゃんと合流する前にレックスとルーフェちゃんが落ち着くことを願う。


 まぁ、確かに良くなかったかもな。お嬢の言い分も当然ながら正しい。また、一時のためにレックスとルーフェちゃんの心を消費するようなことをしてしまった。そう考えると悪いことをした。


「次からは気をつける」

「ほどほどにするね」

「そうしてちょうだい」


 次会った時は気をつけて話をふることにしよう。できるかはともかくとして、二人がいい感じになるような振り方をしよう。できないと判断したら即撤退。余計なことはしないでおく。そっと青春を見守ろう。


 そんなことを考えているとテオリオくんがこちらをちらちらと伺っていた。


「うん? テオリオくんどうした?」

「いえ、先程の方たちはどなただったのかなと」


 ああ、テオリオくんはレックスたちを知らなかったな。なら、気になるよな。


 少しは話してあげるべきだった。


「ああ、この国に来るまで一緒に旅してた奴らだ」

「護衛の依頼主でもあるね」

「そうでしたか」

「今はもう別行動だからついつい話こんじまった」

「仲間はずれにしちゃってごめんね」

「大丈夫です」


 テオリオくんからしてみれば、いきなり連れが知らない人間と話し始めて、さぞ困っただろう。それにフィオの言った通りで仲間はずれにしてしまった。なにか話題を振ってあげれば、会話の輪に入れたかもしれない。


 しかも知らない男女の恋話を聞かされたあげく、俺とフィオに対するお嬢の説教も聞かせてしまった。流石に申し訳なかったな。


 次からはこういうことも含めて気をつけよう。


「もう組合の前まで来ましたが、皆さんはどうしますか?」


 ああ、もうここまで来ちまったか。すぐそこにボロい塔が見える。


「なんとなくついて来てたけど、ここまで来ちまったな」

「することなかったしね」

「あまり邪魔してもね」

「そうですね」


 これ以上テオリオくんについていく必要はない。そもそも案内は議事堂の外までと言われていた。それなのに魔術組合までずるずるついてきてしまった。流石に魔術組合の中までついて行く理由はない。


 それにテオリオくんは魔術組合にただ帰ってきたのではない。仕事の続きをしに帰って来たのだ。ならば、邪魔するわけにはいかない。


「じゃあ、ここでお別れだな」

「またね」

「はい。お疲れ様です」


 そう言って、テオリオくんは俺たちと別れて魔術組合へ入って行った。


 そうなると俺たちは暇になる。なにせ今まで大した理由もなくテオリオくんの後ろをついて歩いていたくらいだ。やることなどあるはずもない。


 とはいえ、ずっと道の真ん中に突っ立てるいるわけにもいかない。


「どうするよ、お嬢」

「流石にもう宿へ戻るわ」

「結構うろうろしたしね」


 まぁ、まだ日が暮れるような時間ではないが、結構時間がたったのも事実だ。ここで宿に戻るのも悪くない。


「この時間ならまだ宿も埋まってないでしょうしね」

「そうか、部屋も取り直しか」

「なら急いた方がいいね」

「朝の宿は高級宿だし従魔も利用可能な部屋なんて早々埋まらないから、大丈夫でしょうけどね」

「念の為だよ」


 そういえば、朝の宿はチェックアウトしていた。もうスターテア王国に行く気満々だったから当たり前なんだが、今思えばもったいなかったかもしれない。しかし、今更そんなことを言っても仕方ない。ここはさっさと朝の宿に戻ることにしよう。


 ということで、俺たちは朝まで利用していた宿に戻ることにした。場所はうろ覚えだったのだが、案の定ベクトルはしっかり覚えていたので迷うことなく辿り着けた。それにお嬢の言う通りで同じ部屋も空いていた。なので問題なく泊まることはできた。


 しかし、朝出て行った客がその日のうちにもう一度泊まりにくることは、宿の人間も想像していなかったらしい。滅茶苦茶不思議そうな顔をされた。


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