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国勢

 俺たちはテオリオくんの後に続いて議事堂を後にした。そして、今は大通りを通って魔術組合に向かっている。


「なぁ、お嬢。ちょっと前から気になってたんだけどさ」

「なに?」


 そこで俺はいつも通り暇になったので、ちょっとしたおしゃべりをすることにした。


 というのも、このサリーマギ共和国に来てから少し気になっていたことがあるのだ。


 もちろん、まだ過ごして間もないので、サリーマギ共和国についてなにも知らないのは当然だ。しかし、そのことを差し引いてもなにか変なのだ。


 なので、その違和感をお嬢に尋ねることにした。


「この国なんかピリピリしてないか?」

「ぴりぴり?」


 そう、ピリピリしているのだ。


 当然これは俺の直感なので外れている可能性も大いにある。しかし、住人が俺を見て好意的な態度をとる時と比べて差が激しいのだ。通常時とは明らかに。


 何気なく過ごしている住人も別に不自然なところはない。だが、俺を見つけて嬉しそうにしている姿は大袈裟なように見えてしまう。とはいえ、その姿が噓にも見えない。神獣を見れたことに心底嬉しそうにしているのだ。今にして思えば、朝ゲブート隧道で会った兵士さんもその感じはあった。どこか大袈裟なのだ。


 なのに街中で見かける人間は取り繕っているように見える。不自然を気取られないように自然体を装っているように見えてしまう。そして、俺を見つけた時はボロが出てしまい自然体が不自然に感じてしまう。


「なんかこう、神経質っぽいっていうか」

「殺気立っている」

「そうそれ。流石は住民」


 テオリオくんはすぐに俺の言いたいことを理解してくれたらしい。まさにそんな感じがする。俺は殺気というものがどういったものか知らないが、例えるならその表現が一番合っていると思う。


 この取り繕っている空気は奇襲を成功させるためと言われ方がまだ納得できそうだ。それくらいの神経質さを感じる。


 しかし、テオリオくんは気にした様子もない。わざわざこちらを見て説明することもなくすたすたと歩を進める。


「いつものことなので仕方ないと思ってください」

「というと?」

「この国は疲弊しきっているんです」

「疲弊って?」


 いきなり話が飛躍したぞ。


 この国は疲弊しているってどういうことだ? 俺はずっと住人の話をしてたつもりなんだけどな。国の話はしてない。


 それはお嬢も気になったらしく、お嬢もテオリオくんにどういうことか問い詰める。


「この国の状況がそうだって言いたいの?」

「ええ」

「どうして?」

「議事堂の人たちも国民もお互いに信用できない状況が長く続き過ぎたんです」

「ほう」

「議員は汚職だらけですし国民も脱税やら議員の粗探しで頭がいっぱいなんです。お互いがお互いを馬鹿だと思っているんですよ」

「そんなことってある得るのか?」


 何だその国。世紀末っぽさが隠しきれてないぞ。いきなり今いる国がそんな国だと説明されてもいまいち実感できない。どこか遠い国の話をされているような気分だ。


 しかし、テオリオくんは俺の考えに呆れを感じているらしい。軽いため息を零してから事実を突きつけてきた。


「ある得るんです。その結果がこれです。最近では自分たちの方が上手く国を運営できるなんて言う人も出てきたそうです」

「革命的な?」

「そうなるんですかね」


 昨日ここに着いたばかりの俺では、せいぜい違和感に気づくので精一杯だった。しかし、ここの住人のテオリオくんとしてはごく当たり前のことだったらしい。


 気になったことはこれで解決したわけだが、なんとも世知辛い答えが返ってきたものだ。


 一見普通の国に見えるここも一歩踏み込めば普通じゃなくなる。まぁ、どこもそんなものといえば、そうなのだろうがね。


「凱旋もそのせいなのかな?」

「凱旋? ああ、鎮圧隊の帰還ですか」

「鎮圧隊だったんだ」

「はい。地方の過激集団を鎮圧しに行ったとか」

「それで今日帰って来たのか」

「たぶん」


 どうやらアデリナさんは鎮圧隊だったらしい。そして、どこかの過激集団と一戦交えて帰ってきたようだ。


 もしかすると、あの行進は他の過激集団に対する威嚇の意味もあったのかもしれないな。いつでも対処可能といったアピールの意味を込めて。


 そう考えると、あの堂々とした行進もそれなりの意味はあった。実際、俺たちも圧倒されていたからな。


「忙しそうな国だな」

「そうね」

「まぁ、でも関係ないね」

「そうですね」


 こうやって一つ知れたのは良かった。それに勉強になったと思う。


 しかし、俺たちには全く関係ない。ヒリングサッツ教国も大変そうだったが、サリーマギ共和国も負けず劣らず大変そうだ。どうにかなるといいな。


 もう少ししたら、俺たちはスターテア王国に行く。そしたらサリーマギ共和国とはお隣さんになる。なら、陰ながら祈っておくとしよう。


「自分たちで蒔いた種です」

「テオリオくん悟ってるな」

「凄いね」

「事実ですから」


 テオリオくんとしてもこの状況には諦めがついているらしい。かなり返事が軽い。それにもう悟ってる感じがする。これが良いのか悪いのかわからないが、テオリオくんの精神が安定するなら良しとしよう。


 この国がどうなるにしてもテオリオくんの未来は明るくあってほしいものだ。


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