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探検

「なかなか広いな」


 勝手に議事堂を見て回ることにした俺たちであったが、議事堂にこれといったものはなかった。


 当然といえば当然なのだが、心のどこかで芸術的な彫像のような物があるのではないかと思っていた。だが、それらしい物は一切見当たらない。


 なので、俺たちはとりあえずなにか見つけるまで黙々と廊下を進み続けた。


 乳白色の議事堂の壁は外の光に照らされて温かみを感じさせる。しかし、ずっと見ていると眠たくなってくる。眠る必要のない俺を眠たくさせるとは脅威的な退屈さだよ。


 そんなことを考えていると、お嬢が俺のぼやきを聞いて何を今更といった顔でこちらを見てきた。


「広いって……当たり前でしょう。ここはこの国の最高機関なのよ」

「そうなのか」

「政の中心地ですからね」

「そりゃデカいな」


 へえ、最高機関なのか。それは知らなかった。なら、広いのも当たり前か。


 まぁ、具体的にどういう所かは知らないし興味もそこまでないので、いまいち想像できないがすごい所なんだろうな。


 というか、そんな顔しなくてもいいだろ。お嬢だって朝まで議事堂のことなんて気にもしてなかったんだから。


 そうして俺がくだらないことを気にしていると先行していたフィオがなにか見つけたらしい。こちらに振り返って手を振っている。


「なんか大きめの扉を発見!」


 それは気になる。


 今までは個室の扉がずっと続いているだけで、なんの面白みもなかった。しかし、ここに来て大きめな扉というのは大いに興味を惹かれる。


 これはテンション上がるぞ!


「フィオ隊員、突撃せよ!」

「りょーかーい!」

「壊さないでよ」


 俺の声を受けてフィオもその気になったのか、軽い足取りでその扉へ駆けて行った。それを見てお嬢は念の為に注意の声掛けをした。


 気持ちはわかるがフィオだってそこまで馬鹿じゃない。勢いあまって扉を破壊もしくはドアノブを握り潰すなんてことはしない。


 それはフィオも同じようで、しっかりと扉の前で立ち止まりお嬢にムッとした顔をむける。お嬢はそれに対して悪かったと肩をすくめて返していた。


 そうしてフィオは少し不貞腐れたまま扉に手をかけた。


「まったく、そんなのわかってるよ……お?」

「どうした?」

「当たりかもっ」

「当たり?」


 一足先に扉の中を見たフィオはそう言ってこちらに来るように手招きをする。


 それを見た俺たちは、とにかくフィオに従って扉に近づくことに。


 一体なにがあったのか知らないが随分急かすものだ。流石にさっきまでと同じような個室ってことはないだろうが、そこまでテンションを上げる部屋ってのもなかなか想像できない。


 ということで、俺たちはフィオに促されるまま部屋を覗いてみることにした。


「確かに当たりね」

「そうですね」

「本だらけだな」


 扉の中は本がびっちりと詰まった書架で埋め尽くされていた。また、それだけではなく部屋の広さも圧倒的だった。天井も思っていたよりも高く十メートルはありそうだ。魔術組合で見た書架を遥かに凌駕している。魔術組合を市立図書館に例えるならこちらは国立図書館といったところか。それくらいの差はある。


 それによく見ると本以外に壺のような物や綺羅びやかな装飾品もちらほら見受けられる。なにやら倉庫のように見えてきた。


「資料庫みたいですね」

「資料庫?」

「物置ってわけでもなさそうですからね」

「なるほど」


 確かにベクトルのいう通りかもしれない。物置にしては綺麗な方だし、埃がないので定期的な掃除がおこなわれているようだ。またちょっとした椅子と机がある。少しここの物に目を通すくらいのことは出来そうだ。


「見てく?」

「もちろん」


 せっかくこんな見応えのある部屋を見つけたのにスルーするのはあり得ない。


 お嬢はフィオの問いかけに食い気味で答えると、そそくさと資料庫に入って行った。それを受けてベクトルも後に続き部屋に入って行く。そうなると俺たちもさっさと部屋に入るべきだろう。見つかると面倒そうだからな。


 しかし、これは大きな功績だ。


「見事な功績だ。フィオ隊員」

「ありがとうございます!」

「しかし、君は本が読めるのかね?」

「読めません! 眠くなります!」

「私もまだ文字が読めん!」

「知っております!」

「大変結構!」


 そう! 俺とフィオは本を読む習慣がない!


 なので、この資料庫に大きな興味は惹かれない。しかし! お嬢が楽しめるなら悪くはないだろう! なにせ見て回ることを言い出したのはお嬢だからな!


「小芝居はいいから静かにして」

「「はーい」」


 お嬢はもう集中モードに入ったらしい。さっそく怒られた。


 まぁ、お嬢が楽しみたいというのなら、俺たちは静かにするしかない。それに俺たちだって別にまったく本に興味がないわけではない。見ていればそれなりに時間は潰せるだろう。

 

「気になった本があれば言ってください。僕が取るので」

「助かる」

「ありがとね」


 それを察したベクトルは少し控えめな声で俺とフィオにそう言う。


 やはりできる男は違うな。気遣いまでばっちりだよ。お嬢を一人にするという配慮と俺が本に触れられないというところを一気に解決した。フィオは別に配慮する必要はないが、この広い資料庫で逸れないようにするためにも声かけは必要だ。


 これだけならベクトルはただの良い男なんだが、お嬢に対する熱量が変態的だからな。困ったものだ。


 まぁ、今は別にいいか。それよりも本を見ることにしよう。


 そうして、俺たちはこの資料庫で本を見て過ごすのだった。


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