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実戦

 なにを考えるにしても、目の前のゾンビを優先するべきだな。


 俺の心境は後回しだ。


「殺すうえでなにか助言とかある?」

「ないかな」


 返事が早い。


 ちょっとくらい考えてくれてもいいだろうに。


 それとも、考えた末に助言はないってパターンなのか?


 だとしたら、本当にないんだろうな。


「……マジか」

「だって、ポルターは人と違いすぎるから助言のしようがないもん」

「随分はっきり言うな」


 ちょっと前まで、それで悩みそうになってたのに。雑に触れられた。


 センシティブな部分なんですけど?


 オブラート買ってこい。


「私も似たようなものだし」

「お互い様か……」


 それもそうか。


 別に俺一人だけが不幸だとは思ってないが、フィオも目の前のゾンビに思うところがあるってことかな。


 同じ死体だもんな。


 俺もそうだ。


 だとしても、オブラートは買ってこい。なんなら、予備も買っとけ。


 それとこれとは話が別だからな。


「そうだよ。それにゾンビは動きが遅いから、こうして話していても大丈夫」

「なるほど」


 確かにさっきからゾンビは鈍い。スローモーション的な遅さじゃなくて、赤ちゃんのよちよち歩きに近い。もちろん赤ちゃんみたいに可愛くはないけども。


 なんと言うか、人形みたいだ。


 動き方が不自然なロボットを見てる気分になってきた。


 まぁ、殺すけど。


「ゾンビに捕まったら面倒だけど、ポルターは捕まる体もないしね」

「捕まったら食われるのか?」


 ゾンビは人食ってこそゾンビってイメージがある。ゾンビに偏見を持ってても訴えられることはないだろう。ゾンビに訴えられたら二重の意味でビビる。


 あとは力が強くて簡単に逃げ出せないとかもあるんだろうな。それからゾンビに埋もれてむしゃむしゃされるイメージだ。


「食われるっていうか、噛み千切られる」

「グロい……」


 こっちのゾンビは食ってすらいないのか。殺すならせめて食ってあげろよ。


 確かに消化器官も死んでるから食っても吸収しないか。


 噛みついて千切るまでが攻撃手段って感じだろう。


 気持ち悪い。


「でも、ポルターは噛み千切られる前に、ゾンビの口をボロボロにできるし」

「そうだろうけど」


 そうだろうけど、その言い方はなんか嫌だな。


 想像したらハチャメチャにグロい。見てる方もやる方も恐ろしくて仕方ない。


 それにいろんな物が飛び散るぞ。


 さては、オブラート買い忘れたな?


「なら、なにも問題ないよ」


 ないこともないけどな。


「つまりは好きにしてみろって感じか?」

「そんな感じ」


 好きにしていいなら、無視したい。


 しかし、それはできない。


 なら、攻撃するしかないよな。


 どこを攻撃したらいいだろうか。


 ゾンビは今もゆっくりとこちらに近づいて来ている。焦るような速さじゃないが、確かに近づいている。


 先程のフィオを見習って頭にしてみるか。弱点だしな。


「じゃあ」


 俺はグーパンチのイメージをしてニュッと体の一部を伸ばした。すると伸ばした腕は一直線でゾンビの頭へ向かった。そして、俺の腕はゾンビの頭を削る不快な抵抗を感じつつ頭を一撃で削りとった。


 頭を削り取られたゾンビは一瞬だけ体を硬直させてから床に崩れ落ちた。それはゾンビの死をはっきりと示すものだった。


 キモっ! グロい!


 全身がぞわぞわした! 体ないけど!


 あと腕が凄く汚い。


 形容したくない物が腕に染み込んでる。


 どうにか綺麗にしたいけど拭けないしな。


 犬みたいに回したら汚れも飛ぶかな?


 そこで俺は汚れてる腕を壁に近づけてドリルを空回りさせるように回した。すると、なんということでしょう。腕が驚くほど綺麗になりました。


 その代わりに壁が汚れたけどな。


「かなり気持ち悪いけど大丈夫そうだ」

「よく出来ました」

「そりゃどうも」


 なんとかはなった。


 フィオも軽く手を叩きながら頷いている。合格点はもらえたってことかな。


 まぁ、まだまだ戦闘のプロには遠く及ばないだろうが、従魔として役に立つことは証明できる気がする。


「それよりさ」

「改めてこの体はなんだと思う?」

「私もわかんない……」


 扉や床を削る時よりもゾンビの時は遥かに滑らかに削れた。


 そりゃ、人の肉の方が扉や床より柔らかいけど、あきらかに速さが違った。


 本来の使い方をしたかのように滑らかに動いた。それに練習を重ねる必要性を感じなかった。


 当然のように動いた。


 戦闘前の違和感を思い出す。全く感じなかった忌避感のことだ。


 なにかこの体の秘密に関わる重要な鍵なんだろうな。


「とりあえず、問題はなかったけどもっと練習しないとね」


 ん?


「今ので、なにに変えてもほしいってことにはならないし」


 練習?


「最低でもあと五体は倒してポルターの動きを見極めないと」


 あの気持ち悪いことを五回も?


「別に五体じゃなくてもいいけどね」

「もういいだろ?」


 本当にもういいだろ?


「いやいや、素人をそれなりにするんだから沢山練習しないと」

「……わかった。五体はやる」


 プロの言うことには従うべきだ。我慢だ。


 仕方ないことだ。


「その五体が終わったら、動きの見直しと簡単な立ち回りを覚えるためにもっとやらないとね」


 は?


「それに終わりはあるのか?」

「ポルター次第かな」


 一番聞きたくない言葉だ。


 あってないような終わりは一番キツい。


 初戦闘後の感傷的な気分を返してくれ。


「頑張ろうね」

「……嫌だ」


 優しい微笑みのフィオに俺は切実な願いを込めてそう言った。


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