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なにこれ

 フィオが石畳みを踏み割ることもなく大通りに辿り着くと、そこでは兵士たちが列をなして大通りを闊歩していた。


「なにかの行進?」

「っぽいな」


 兵士たちは皆足並みを合わせて少しの乱れも見せない。また足音も一つの楽団のように統一された音を奏でていた。そして、大通り沿いでそれを眺める人々はちらほらと兵士たちに手を振っている。


「凱旋のようにも見えますね」

「凱旋なのか?」

「いえまあ、戦った後のようにも見えますからね」

「確かに汚れてるな」


 流石のベクトルも確信を持てないらしく言葉を濁した。だが、それも仕方ない。兵士たちはどこかでひと仕事終えてきたことを思わせるような汚れ方をしていた。しかし、それが凱旋かどうかまでは流石に判断がつかない。いくらなんでも情報が少なすぎる。


 とはいえ、あの汚れ方には少し見覚えがある。おそらく血だろう。旅の道中で野盗や魔物を仕留めた後はベクトルもフィオも大体あんな汚れ方をしている。返り血を拭いても黒ずんだ汚れはやはり多少は残ってしまう。どの兵士も肌は清潔に保っているようだが、鎧の傷に黒ずみが見える。


 となると凱旋かどうかはわからないが、荒事を終えてきたという推測は間違ってないだろう。

 

「迫力あるな」

「そうだね」


 兵士たちは顔つきも精悍で様になっている。よく見ると男女比が半々に見えるが、不自然さは一切感じられない。そうあることが一番正しいと言わんばかりの在りようだ。


 それに一番先頭を進む兵士は女性だ。赤みがかった長髪を頭の後ろで結び、所謂ポニーテールという髪型をしている。やはり先頭を任されるだけあって、凛々しく真っ直ぐ先を見つめて様になっている。もしかしたら隊長的な偉い立場の兵士なのかもしれない。そう思うくらいには立派に見える。


 そうして行進を見学していると、ふと先頭を進む女性兵士がこちらを見た。


「あ、こっち見」


 すると突然雷が落ちたかのような破裂音と共に俺の視界は白く染まった。


 あまりの出来事に戸惑っていると大通りの方が騒がしいことに気づく。どうやら視界は白く染まってしまったが、聴覚は無事らしい。

 

「なんだ貴様っ!」


 誰かが大きな声でそう叫んだ。しかし、それに応える者はいなかった。そして、間髪入れずに誰かがこちらに向かってくる。鎧の音でなんとなくわかった。


 どうやら先程の質問は俺に向けられたものらしい。となるとこっちがこう言いたくもなる。


『なにしやがんだ!』と。


 しかし、視界が元に戻ると目の前には警戒心を全開にした女性兵士がいた。この女性兵士は列の先頭にいた兵士だ。つまりは何かしら役職持ちってことがうかがえる。そうなると迂闊に手を出すべきではないかもしれない。

 

「……」

「……」

「……」


 実際、まだ誰も手を出していない。ベクトルはお嬢の前に立ち、剣に手をかけている段階で止まっている。お嬢はとくに何かしているようには見えないが、ちゃっかり魔術の発動準備でもしてるんだろう。


 フィオにいたってはよくわからない。まったくの無表情なのだ。警戒や怒りといった感情すら見受けられない。先程までのニコニコ顔からのこれなので、あまり良い気分ではないことはなんとなく理解はできる。だが、やはりよくわからない。


 しかし、これが街中でよかった。そうでなければ誰かしら速攻で女性兵士を始末しに行っていたに違いない。一応俺はまだどういう手段で攻撃されたのか、いまいち理解していない。なので、多少は警戒したかもしれないが、最終的にはフィオが突撃して殺していただろうからな。


「街中に化物がいるとは何事だ!」


 畜生、案外あともなことを言いやがる。その点に関しては大きく反論できないからな。正式な手段で街に入ったし、人間たちから好意的な視線を向けられているとはいえ、街中に化物がいたらそうも言いたくなる。


「……大丈夫よね」

「まぁ、大丈夫だけどビビるわ」


 お嬢も俺が無事なのはわかってはいたらしい。が、流石に確認をいれる。


 それに対して俺も正直に答える。正直、心底ビビって全く反応が追いついていなかった。あんな強烈なビックリ系は反則だと思います。


「次は仕留める!」

「ちょっとちょっとちょっと!」


 そう言って女性兵士は手中に光の剣を出現させると、こちらに向かって投げつけようとした。しかし、それは後ろから駆けてくる男性の声によって止められた。


「なんだ! パルプ!」

「そちらはおそらく神獣様です!」

「聞いてないぞ!」

「でしょうね! 我々も昨日その報告を受けましたから!」

「なら仕方あるまい!」

「仕方あるまい、じゃないですよ! なにいきなり手を出してるんですか?!」


 急に漫才が始まったぞ……。


 パルプという男性がツッコミで女性兵士がボケなのだろう。ボケにしては過激だし、客である俺は殺されそうになってたけども。


「私は国民の安全を優先した」

「それはわかりますが……」

「なら仕方あるまい」

「ロベルト様になんと報告すれば……」


 そう言うとパルプさんは立ったまま頭を抱えてしまった。対する女性兵士は攻撃する様子こそなくなったが、あまり反省している様子はない。


 というか、堂々と胸を張り開き直っているふしすらある。さては、こいつ凛々しい馬鹿だな。


「……なにこれ」

「……さあ」


 流石のお嬢もこの状況では頭が回らないらしい。ポカンとしている。ベクトルもフィオも似たようなものだ。もちろん、俺も。


 誰か説明してくれ。


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