表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/209

対処

「とは言っても、一撃なんだけどね」


 そう言ってフィオはゾンビの頭を殴り飛ばした。


 流石に殴り飛ばしたことに本人も少し驚いているようだ。


 フィオもまだ自分の怪力具合に慣れてないんだろう。腕の感覚を確かめるように何度も腕を振っている。


 とはいえ、すぐに慣れるんだろうな。


 今はもう気にすることをやめて、ゾンビが着ていた服で拳についた血肉を拭いている。汚い。


「一瞬だったな」

「普通のゾンビは大したことないからね」

「俺はその普通のゾンビを知らないんだよ」


 ゾンビは普通一種類じゃないのか?


 しかも、しれっと普通じゃないゾンビもいるみたいな言い方したな。


 いるんだろうなぁ。


 実物を見るまでは聞かないようにしよう。怖いから。


「生前の世界で見たことないの?」

「そもそも魔物がいなかったからな」


 猛獣とかはいたが魔物なんていなかった。見かけても狸とか猪とか蛇が精々だ。熊はカウントしない。怖すぎてよくわからん。


 もちろん海外に行けばライオンとかトラとかカバとか危ない動物はいるんだろうけど。動物園でしか見たことがない。


 流石に宇宙人とか妖怪とかは言及しない。きりがなくなる。


「平和そうだね」

「……なんとも言えないな」


 本当になんとも言えない。すぐに物騒な兵器を作っては戦争しでかすのが人だからな。


 一番の猛獣と言えなくもない。知らんけど。


「そうなんだ」


 フィオも俺の言い方になにかを感じたのか、少し困った顔をしてから話を切り上げた。


 お察ししますよ。


 そうして、フィオは頭がなくなって動かなくなったゾンビを廊下の隅に片付けた。


 それから、こちらを見てよくわからないことを言う。


「じゃあ、次にゾンビを見つけたらポルターがやってね」

「はぁ?」


 そんな次のお会計はよろしくねみたいなノリで言われても困る。


 どうして、そうなったんだ。


「こっちは魔物が沢山いるし、従魔になるなら戦闘の練習はしとかないと」

「確かに……」


 そうだったな……。従魔になるんだったな……。


 そういわれると確かに練習は必要だよな。いつかゾンビ以上の化け物と戦うことになるかもしれない。


 でも、できることなら戦いたくはないんだけどな。


 お喋りな九官鳥みたいな存在じゃ駄目なんだろうか?


 おはようの挨拶からお休みの挨拶までなら完璧にこなせる。ちょっとした冗談も言える。


 お喋りな九官鳥よりは遥かにハイスペックだと思う。


「役に立てないと拾ってもらえないし」

「……その通りだ」


 俺はお喋りな九官鳥じゃないから役に立たないとな。


 九官鳥みたいに愛嬌もない黒い霧はキリキリ働かないと、拾ってすらもらえないってことか。


 どの世界も世知辛いな。


「じゃあ、決まりね」

「嫌だけど、やるならさっさと終わらせたい」


 まぁ、ゾンビを見たのもさっきが初めてだし。


 そんなすぐに次のゾンビが出てくるわけない。


 今頃、次のゾンビは休憩室でゆっくりお茶でもしてるはずだ。ずっと休憩室で休んでろ。


「良かったね。次のゾンビがもういたよ」

「フラグ回収が早い……」


 休憩室で休んでろよ……。コールボタン押してないぞ。


 なんで急にゾンビがぞろぞろ出てくるんだよ。


 俺が目覚めた時はゾンビの気配すらなかったのに。


 いや、部屋に一人っきりだったし、そもそも気配なんて感じたことないけどさぁ。


 ……もしかして、フィオが棺の蓋を蹴り開けたり、俺が扉を削り開けた時の音に寄ってきてるのか?


 だとしたら、自業自得だな……。


「やっぱり広いだけあって、執事ゾンビの次は綺麗なメイドさんゾンビだね」


 余裕だな。フィオは。


 俺にもそんな余裕がほしいよ。能天気にも見えるけど。


 でもまぁ、確かにロングスカートで白と黒を基調とした綺麗な衣装だ。けど、ゾンビだから衣装の綺麗さとかは台無しだ。


 普通に怖い。変な呻き声とかはないけど、虚ろな瞳でこちらを真っ直ぐ見てくる。不気味だ。


「ていうか、ゾンビの衣装を気にしてる余裕があっていいのか?」

「大丈夫だよ。所詮ゾンビだし、たぶんポルターは死なないし」


 たぶん死なないって結構危ない考え方だと思うんですけど。


 死んだらどうするつもりだ。いや、どうしようもないけどさ。


 でも、フィオの言う通りで本当に死ぬとは思えない。根拠はないが死ぬ気がしない。


 それは自信というよりは確信に近い奇妙な感覚だ。


 ゾンビに対する恐怖はあっても、危機感が全くない。


 とはいえ……。


「死なないからって、積極的にはなれないんだよ」

「でも、練習しないと」

「わかってるって」


 わかってる。


 わかってるから、俺をゾンビの方に近づけようとしないでくれ。フィオがぱたぱた扇ぐ。それで結構な風がくる。


 流石にこれ以上は先延ばしにはできない。


 俺は二本の腕をイメージして体を伸ばす。そして、性能に変わりはないか確認するように、腕を軽く振り床を撫でる。


 すると相変わらず床は削れた。問題ない。


 これで他のゾンビも集まって来るかもしれないが、今更気にしても仕方ない。


 目の前のメイドゾンビも、ゆっくりとこちらに近づいて来ている。


 後ろのフィオもいざとなったら助けてはくれるはずだ。


 あとは俺が人の形をした魔物を倒すだけ。


 気にすると駄目だ。無視するべきだ。


 気にしても意味がない。


 それに今考えることじゃない。


 ゾンビを殺した後でもいい。


 でも、やっぱり気になってしまう。


 人の形をしたそれを仕留める行為に、全くといっていいほど忌避感がないことに。


感想か高評価お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ