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なにも変わらない

 その後、俺たちは教皇様と別れて解散した。レックスは教皇様からの言葉の意味を考えているのか別れるその時までずっと真面目な顔をしていた。何というか、俺はそれを見て不器用な男は大変そうだなと思ったよ。


 対する俺たちは気楽でいいものだ。依頼も達成して報酬も無事に貰うことができた。まぁ、馬と馬車は今用意している最中らしいので、すぐに試乗というわけにはいかなかったが別に構わない。急いでいるわけじゃないからな。ということで、今日は各自休息することになった。お嬢とベクトルは自分たちの部屋で過ごし、俺とフィオも厩舎でゆっくり過ごすことに。


 そして、時刻は夜。


「いろいろあったね」

「そうだな」


 本当にいろいろあった。教皇様に放たれた刺客の撃退。サンセンタを苦しめていたヒュドラの討伐。そして、最後に教皇様のお悩み相談。


 サンセンタにはちょっとした休憩で立ち寄ったつもりだったが、結果はこの通り。最初から最後まで大忙しだった。


「それにやっぱり昔のことの話をされるね」

「そりゃするだろう」


 つい最近も言ったが場所が場所だから仕方ない。それにトップも悩むくらい重要なことなんだ。逆にこれくらいで済んでいることに感謝すべきなのかもしれない。この国の関係者なら俺たちの話は聞きたくて仕方ないだろうからな。過去の偉人に異世界人なんて注目の的だ。まぁ、両方もう人じゃねえけど。


「教皇様もあれで抑えていたのかもしれないからな」

「そっか。それもそうだね」


 聞きたいことや言いたいことが本当はもっとあってもおかしくない。それなのにこちらに気を使ってあまり踏み込んで来ることはなかった。そういう意味ではお悩み相談も教皇様の考えのもとでやったのかもしれないな。


「そういえば、私たちがサンセンタでやったことって殆どお話だけだよね」

「そうだな。殆どお悩み相談だな」

「本当にお悩み相談だったねぇ。……私もお昼はあんなこと言ったけど、私だって教えてほしいよ」

「そうだよな。結局そのままでいいんじゃないかとしか言ってないしな」

「答えになってないよね」


 それには流石にお互い苦笑いするしかない。教皇様にはいろいろと言ったが俺たちだって答えはわからない。教皇様の悩みは要は生き方とかそういう話だ。そんなことは俺たちだって教えてほしい。


「ポルターだってカオルの話をされても困るでしょう?」

「まあな。幸いそのカオルって人と比べられるようなことはないからまだマシだけどな」

「比べても仕方ないもん」


 そう言ってくれるのはとてもありがたいことだ。こればかりはついつい自分でも考えてしまうことだし気にしてしまうものだからな。俺はないけど。


「それでも比べて見る人間はいる。『あの人はああだった』とか『あの人はああしてくれた』とか言うやつ」

「まぁ、そうだね」


 フィオも思い当たる節があるらしい。なんとも言えない顔してらっしゃる。


 まぁ、俺たちの周りにそんなことを言うやつは今のところいない。運が良い。


「初代英雄の話を別に避けたいとは思わないが、真面目な話は疲れるからな」

「いっそのこと文句の一つでもぶつけてみたら?」

「今更意味ないだろ」


 全部終わった後に言うわけないだろ。情緒不安定か。


「そっちこそお小言の一つでも言ってやればいい」

「なんて?」

「同じ話ばっかりしつこいって」

「それはポルターの意見でしょう?」

「そんなことはない」

「どうだか」


 多少俺の考えが混ざっていることは否めないが、フィオだって同じことを考えていたはずだ。たまに顔に出てた。真面目な話題だから最後までしっかり受け答えしていたがいつもなら聞いてなかったに違いない。


「でも、これくらいの方がいいのかもね」

「なにがだ?」

「気持ちの持ちようっていうのかな」

「なるほどな」


 確かにこれくらいの距離感の方が楽でいいものだ。特に当事者である俺たちにとっては。気負いすぎてもいないこの雰囲気が丁度いいんだろう。ちゃんと考える時もあるしな。


「考えすぎると良くないのは今日見たばっかりだしね」

「確かにな」

「今まで通りで良さそうだね」

「ああ」

「結局変わらないね」


 そう言って月の光に照らされるフィオはいつも通り笑っていた。またそれを見ていた俺もいつもと違った様子はなかったに違ったない。


 全くもっていつもと同じ賑やかな夜だった。


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